年金制度〈超〉入門 その3 ── 基礎年金の問題点を理解する


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年金制度〈超〉入門 その1」「その2」とシリーズでお伝えしている本記事。
前回の「その2」で年金制度が職業別に分かれている問題を取り上げました。

「その3」の今回は、年金制度の一元化に向けた「基礎年金」についてもう少し考えてみましょう。
 

基礎年金の仕組み。あなたはどの区分?

 
「基礎年金(新制度の国民年金)」には3つの区分が設けられています。
①第1号被保険者:自営業者等とその配偶者・学制・短時間労働者
②第2号被保険者:民間サラリーマン・公務員
③第3号被保険者:専業主婦(第2号被保険者の配偶者)等

第1号被保険者は、制度改正前の「国民年金」の受給者にあたります。
ところが、もともと財政基盤が脆弱なうえに、「国民年金」の財政は近年特に悪化しています。
つまり、国民年金制度そのものを支える保険料の納付率が大幅に下がっているのです。

この「空洞化」についてはさまざまな原因がありますが、非正規雇用労働者の増加、年金制度そのものに対する不信、市町村から社会保険庁への徴収義務の移管などがあると言われています。
 

納付率が低い若年層。その率は50%にも達するとも!

 
社会保険庁などの調査では、第1号被保険者の保険料納付率は、
平成4年度の85.7%をピークに、次第に低下し始め、平成15年度は63.4%、平成25年度は、60.9%にまで低下。これは、皆さんお察しの通り、納付されるべき保険料の約4割が納付されていないのです。
特に若年層の納付率は低く、50%にも達するとされます。
このままでは、今後相当数の無年金者、低額年金者が出るのはほぼ間違いのないところでしょう。

「基礎年金」は、全国民共通の基礎的な年金を一元化しようというシステムとして設けられました。しかし前回も触れたように、実際には、財政が悪化する「国民年金」を補填するために「共済年金」「厚生年金」から拠出するためのシステムということになっています。
つまり、「国民年金」保険料未払いが多くなると、「共済年金」「厚生年金」からの拠出金が増加してしまうのです。ここに基礎年金制度の矛盾点があります。

また、サラリーマン家庭の専業主婦(主夫)は、これまで扶養される立場でしたが、基礎年金の加入者となりました。ところが従来通り、保険料の負担はありません。
しかし、第1号被保険者の専業主婦(主夫)は第3号被保険者として基礎年金保険料を払っています。ここにも不公平が生じています。
 

さまざまな議論の中で行われた「基礎年金制度の改革」

 
この問題について、平成16年の年金改革で、安定的な年金制度の維持のため、基礎年金の国庫負担率がこれまでの3分の1から2分の1に引き上げられました。
ただし、国庫負担といっても結局は税金。
この措置をとっても、ただちに基礎年金の問題が解決するわけではありません。

そこで、さまざまな議論が行われているのですが、そのひとつが「税方式」です。
これはすなわち、基礎年金を全額国庫負担の税方式とし、強制的に保険料を徴収すれば、空洞化問題は解決する、という考え方。
任意の社会保険方式では、未納者・未加入者の問題を抑えることができません。
さらに、社会保険方式では将来的に未払い者が貧困化し、生活保護を受けるようになれば、かえって社会の負担は増し、不公平な事態を招く、という側面もあります。
確かに、一定の居住条件を満たす人すべての受給資格を与えれば、「基礎年金」として役目を果たすことができるでしょう。

公的年金の全体像の設計については、以下のようにいろいろな考え方があります。
基礎年金部分(1階部分)を税方式で行い、2階部分は現行方式を維持する。
基礎年金部分を税方式で行い、2階部分は賦課方式から積立方式へと移行する。
基礎年金部分を税方式で行い、2階部分は民営化する。……などです。

そして、税方式にするのであれば、消費税を基礎年金の目的税化するべきだ、という意見があり、年金分を新たに増税すると、4.5%の引き上げとなるとされています。

──しかし、直近の動きとして、景気や選挙との兼ね合いなどをにらみ、10%への引き上げは延期されるなど、様々な社会的要因と結びつく年金制度の抜本的な改革。
その改革の道筋は、まだまだ遠い……と考えざるをえません。
 
 

≪記事作成ライター:帰路游可比古[きろ・ゆかひこ]≫
福岡県生まれ。フリーランス編集者・ライター。専門は文字文化だが、現代美術や音楽にも関心が強い。30年ぶりにピアノの稽古を始めた。生きているうちにバッハの「シンフォニア」を弾けるようになりたい。


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