「専業主婦の労働対価は“ゼロ”」。男性に多いこの回答、どう考えますか?


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前回、世界と日本における「女性の活躍」の実情の相違をご紹介しましたが、ある調査によると「専業主婦の労働対価をいくらと考えるか?」という設問に対し、男性側の最も多かった回答が「ゼロ」だったと報告されています。

この結果への思いは男女、年齢、立場によってそれぞれでしょう。
振り返れば、20世紀から21世紀への移行時期から「少子化」「晩婚化」「パラサイト・シングル(寄生独身者)、または「未婚者の増加」といった世帯数増の鈍化に伴う現象が取り沙汰されるようになり、それに伴って、「家長」「大黒柱」「大家族」といった言葉を耳にする機会も減り、家族の在り方が劇的に変化してきました。
こうした背景によって企業戦士のお父さん、家庭を守るお母さん、元気で出来のよい息子と娘で構成された、理想的な家族像を過去の偶像と感じている人も多いようです。そこで今回は、女性を取り巻く現況に触れながら、いつの世も議論かまびすしい「専業主婦の労働対価」を考察します。

 

男女の性差は、DNAのなせるわざ

 

「男にとって女は永遠のなぞ」「女にとって男は理解し難い生き物」といった性差を表す表現は普遍的なものであり、相手のことを心から理解したと思い(勘違いし)、大恋愛の末に結婚して二人であっても、徐々に生活の中で性差が浮き彫りになり、深い溝を感じるケースも多いようです。

そうした性差はDNAのなせるわざであり、作為や意思ではなんともしがたいものですが、人間は社会ニーズにそって性差を取り払う行動をとることができます。
身近な例として、小学生の入学祝いの定番であるランドセルも、ひと昔前までは「女の子 = 赤」「男の子 = 黒か青」といった色分けが定番でしたが、いまや女の子が茶色やブルーのランドセルを背負っていても不思議とは感じません。その背景には「女の子だから○○してはいけない」「男の子なんだから○○しなさい」という無意識な言動に、ジェンダーフリー※の意識が徐々に浸透してきた 背景があります。
同様に、かなり以前から男女別出席簿が多くの学校で廃止され、男女混合の五十音順で名前が呼ばれるようになっています。つまり、法律で善悪・白黒を定めるのではなく、子どもの頃からジェンダーフリーの意識を養えるよう、私たち大人は社会ニーズにそって様々な働きかけ(作為)を行ってきたのです。
※社会的・文化的な性差〈ジェンダー〉をなくす意味で用いられる和製英語
 

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男は砂かぶり。女性だけの土俵上では激しい批判合戦も

 

振り返ると、1985年に最初の男女雇用機会均等法が施行されてから三十年余が経ちましたが、80年後半から90年代にかけて採用広告に携わっていた筆者は、男女雇用機会均等法施行を境に校正者の修正に則って「営業マン」「ホテルマン」「助産婦」「看護婦」「スチュワーデス」を、「営業担当」「ホテリエ」「助産師」「看護師」「客室乗務員」に修正したことを、今なお鮮明に記憶しています。
時の流れとともに形式上のポリティカルコレクト※は定着し、男女の性差への観点は成熟したように感じられます。しかし、女性がしのぎを削る土俵の上では、ライフスタイルや価値観が異なる女性同士で激しい批判合戦が繰り広げられているのです。こうなればもう、男性は砂かぶりで見ているほかありません。
※差別・偏見を防ぐ目的の表現

 

資生堂ショックは「ショックでもなんでもない、当然のこと」

 

女性同士の闘いのひとつに、2015年にメディアをにぎわせた「資生堂ショック」をご存じでしょうか。
資生堂は日本企業の中でも、女性が働きやすい環境をいち早く整備してきた女性に優しい会社として知られます。ところが美容部員約1万人中、1100人が時短勤務(育児)シフトになったことで、「客でごった返す夕方に時短勤務者は帰宅。負担を強いられている若手やベテランに感謝の言葉もない」「育児者への優遇が業務に支障を生み、職場に摩擦が生じている」「仕事に責任をもてないのであれば、育児制度を廃止すべきだし、本人も離職すべき」「通常勤務の社員が負担を負うのはおかしい」と、現場から不満の声が噴出。こうした声を受けて、育児中の女性社員が帰宅することで繁忙期に対応できない➡通常勤務者のモラル低下➡売上減➡雇用減」の負のスパイラルを断つべく、資生堂は「育児中の女性にも遅番や土日勤務を求める」「フルタイム勤務者と同様のノルマを課す」「戦力として機能しないのであれば退職も考慮してもらう」といった大改革に乗り出したのです。
当然、こうした厳しい施策に批判の声が上がった一方、意外だったのは「資生堂ショック = 悪」のトーンではない、冷静な視点を保ったメディアのあり方と、女性自身の本音だったのです。それを裏づけるものとして、某ネットメディアが実施したアラサー女性を対象にしたアンケートでは、「資生堂ショックなんてショックでもなんでもない、当然のこと」「仕事のために結婚しない、キャリアのために子どもは生まない、そんな有職女性の生き方をもっと尊重すべき」といった様々な声が多数寄せられたのです。

 
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専業主婦の労働力は、男性にとって「評価に値しない」?

 

そして、冒頭にあげた「専業主婦の労働対価」にここでようやく到達しますが、「家庭を守り、夫や子どもを陰で支える」という日本社会の“美意識”であった専業主婦について、支えられる側の男性の20%近くが、専業主婦の労働力は「評価に値しない」と考えている驚きの結果が。
そして、この結果に主婦から怒りと落胆の声が寄せられているのです。

そこで、筆者の独断で、「平成28年度地域別最低賃金改定状況(厚労省)」をもとに専業主婦の労働対価を試算することに。労働対価を試算する際には当然ながら、下記のような異論・反論があることは承知のうえです。
「1日の家事労働の時間配分を“8時間”にするのは妥当?」
「寝る間も惜しんで家事をしているので8時間は少ない」
「労働対価なら休日があるべき。365日で試算するのはおかしい」
「子どもの有無、子どもの数、夫の家事参加具合によって違いがある」
「家事といっても料理・掃除の面でクオリティの差があるはず」
「一概に最低賃金で算出するのはおかしい」……

 

専業主婦の労働対価の最低保証額は、どれくらい?

 

実際にネット上を少しのぞいただけでも、家事労働対価に対するアンケート結果を公表した記事や、個人の意見がたくさんヒットします。それらを眺めると、専業主婦の労働対価に対する 考え方は「ゼロ」に始まり、「200万円程度」とする意見や、なかには「1200万円」と評価する声もあり、その考え方は千差万別。どの角度から、そして何を基準に家事対価を算出するかは、大変難しい問題のようです。
こうした点からも、試算をひとつの目安として考えていただきたく、著者の独断により試算したものであることを、重ねてお断りしておきます。  

 
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表は筆者の独断で、アットランダムに北海道から沖縄までを選択したものとなります。ご存じの通り、最低賃金額は地域によってはばらつきがあり、
●1時間の「最低賃金」は宮崎と沖縄の714円
●1時間の「最高賃金」は東京の932円。第2位は神奈川の930円 
よって、208万880円(最低額=沖縄・宮﨑)〜272万1440円(最高額=東京)の差異が生じますが、この試算を専業主婦の労働対価の最低保証額として考えることには無理があるでしょうか?

先にあげた通り、様々なご意見があることは承知していますが、とはいえ「専業主婦 = 無収入」が一般的な社会通念であることに変わりはありません。しかし、専業主婦の労働力を家庭外で発揮した場合、だいたいこれくらいの年収は確保できるのではないか……という目安にすることは問題ないでしょう。

──そうしたなか、2017年1月末に大手ウエディング会社が実施したアンケートによると、男性の約4人に1人(25%)、女性の半数以上が「専業主婦(主夫)になりたい」と思っていることが判明したそう。
さらには、「家事労働でお金を得たいと思いますか?」という設問に対しては、男性の約1.6倍となる58.2%の女性が「はい」と回答。さて、既婚者であるあなたが、同じ質問をされたらどのように回答しますか?

≪記事作成ライター:岩城枝美≫ 
東京在住。大手情報サービス企業を退社後フリーランスに。20年余にわたりあらゆるジャンルの取材・執筆、ディレクションに携わる。


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