そろそろECBも量的緩和の出口戦略の準備へ


欧州、特にユーロ圏経済は域内での経済格差があるものの、総じて回復基調、そしてデフレ懸念から脱出する方向にあるのではと思います。そしてその結果、ECB(欧州中央銀行)はそろそろ金融緩和の政策方針を変更する可能性が出てくるのではとの観測が強まっています。順を追って見て行きましょう。

ユーロ圏の経済成長とインフレ率を見てみましょう。直近の数字を見ましょう。ユーロ圏2016年第4四半期GDP(国内総生産)0.4%前期比、1.7%前年比となっている。一年前の2015年第4四半期GDP:0.3%前期比、1.6%前年比でした。
この数字を比較すると、景気の回復度は極めて低いと言えます。ユーロ圏の盟主であるドイツが景気を牽引しているのではとの印象です。
ロシアがウクライナのクリミア半島を併合してしまったことから、対ロシアへの経済制裁の影響で、景気後退が予想されていました。また自動車メーカー・フォルクスワーゲンの米国での排ガス規制を逃れるための不正なソフトウエアを搭載していたことで、自動車産業の下押しが懸念されていました。
しかしドイツの第4四半期はGDP:0.2%前期比、1.2%前年比と、1%以上の経済成長を維持しています。ユーロ圏で経済規模第4位のスペインの経済急回復も見逃せません。不動産バブルの崩壊と金融機関の不良債権問題から2013年GDP:-1.36%とマイナス成長となりました。しかし2016年第4四半期GDP:3.0%へと急回復を遂げています。
主要国であるフランス、イタリアはマイナス成長からは脱出しているものの、依然として景気の回復度は弱いと言えます。全体的には各国間にはまだらな経済成長模様ですが、改善方向と言う事実は見逃せません。

インフレ率を見ましょう。ユーロ圏の2月消費者物価指数は1.8%前年比となっています。そして独2月消費者物価指数2.2%前年比となっています。ECBのインフレ目標は2%ですので、既に目標に達していると言えます。
一年前の数字を見ると、ユーロ圏2月消費者物価指数-0.2%前年比、独2月消費者物価指数0.0%前年比と、デフレ状態となっていました。ECBは量的緩和強化で市場に資金供給を実施、そして政策金利をゼロ金利にすることで、懸命にデフレ状態から脱却する金融政策をとりました。結果その状態からは脱出してきているのではと思われます。
下記グラフ(出所:ECBホームページ)は2000年からのユーロ圏インフレ率(消費者物価指数)の推移を示しています。これを見ると2016年には急カーブの回復ぶりを示しています。

そして今年を迎えました。前回ECB定例理事会では、量的緩和の出口戦略を検討する段階に来ているのではと、市場関係者はざわつき始めました。そして昨日(3月9日)今年2回目の定例理事会が開催されました。
結果は、現状の金融政策継続を決定しました。政策金利については0.00%となっています。まだデフレ脱出からの過程の期間とドラギECB総裁は解釈しているようで、当面金利は据え置くのではとの見通しです。さらにあと半年以上は景気の進捗状態を見るのではないかと思います。
そして量的緩和の現状を見ましょう。毎月800億ユーロ購入と言う資産購入は今月末までは続ける見込みです。そして4月から12月末までは毎月600億ユーロの資産購入を続けるとしています。しかし出口戦略について、ドラギ総裁は記者会見の場で重要な発言をされました。
「成長とインフレを促進するため利用可能なあらゆる措置を利用するとの文言を「緊急性がもはや存在しない。」との理由で削除した。」と。このため、来年以降の資産購入額が減額となる可能性が出てくるのではと観測されます。そして今後インフレ率が更に上昇するとなると、政策金利も引き上げられる可能性があると思います。それは先程述べましたが、6か月後、つまり9月頃にも予想されます。

このような動きを反映したのか、長期金利が上昇しています。指標となる独連邦債10年利回り0.42%となっています。下記(出所:米Market Watch社)は独連邦債の過去1年間の利回りの推移を示しています。昨年7月から10月の期間にはマイナス圏に沈んでいました。英国のEU離脱(Brexit)のリスクを織り込む独連邦債の利回りとなっていました。安全資産としての債券に投資家の資金が向かったと言えます。
そのような状態から、経済の回復、インフレ率の回復から、今年に入ってからは、ECBが量的緩和からの出口戦略を検討することになるのではとの観測が強まりました。昨日のドラギ総裁の発言から、その観測が更に強まり、久しぶりの0.40%超えとなっています。
この先はどうなるか論述しましょう。やはり来週のオランダ総選挙、そして4月と5月に予定されているフランスの大統領選挙に欧州は注目が集まります。経済の回復度合いを示すリトマス紙と言うよりも、政治的リスクを恐れたリスク回避の逃避先としてドイツ連邦債は解釈されることになるのではと思います。ポピュリズムの色彩の強いユーロ圏諸国の色彩となると、独連邦債が買われ、利回り低下の動きとなるのでしょう。現在ではそのリスクがやや後退しているようです。
下記のグラフで緑のサポートラインを引きましたが、0.25%近辺を持ちこたえるかに注目したいところです。オランダ総選挙ではウィルダース党首率いる自由党が票数を伸ばすと予想されますが、政権を担うとは予想されません。但し自由党が伸びるとなるとフランス大統領選挙への影響は必至の状況となります。そして4月後半から5月上旬に予定される仏大統領選挙に突入することになりますので、ルペン国民戦線党首の行方に注目が集まります。ルペン党首が万が一フランス大統領選挙で選出されると、これはユーロ圏の分裂が起こるのではとの懸念が強まります。その場合には経済動向とは関係なく、リスク回避の独連邦債買いの動きとなり、利回りは低下することになります。
場合によっては、昨年年央のマイナス圏に近い利回り水準になる可能性は否定できません。現時点での予想通りルペン候補が大統領にはならない結果となれば、経済を反映して、順調に利回り上昇の動きとなると予想します。そしてECBの出口戦略に注目が集まることとなります。

このように論議してくると、今月からの欧州の選挙でポピュリズムの色彩が薄れると経済のファンダメンタルズに焦点が当てられ、投資状況が好転するように思います。しかしトランプ大統領を誕生させた米国を見るまでもなく、予想は当たらないと見た方が良さそうです。ミドルリスク・ミドルリターンの金融商品を組み込むことは重要であると認識しましょう。


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