新卒採用やめたADK。新しい雇用の形始まる?


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アサツー ディ・ケイは、2016年度より新卒一括採用を取りやめ、既卒者でもエントリーを可能とし、学歴や職歴を問わない採用活動へと転換すると発表した。

大企業への就職といえば、これまで大学生は就職活動を経て、新卒で採用されることが王道であった。法的拘束力はないものの、経団連では倫理憲章によって、加盟企業の採用スケジュールを定めている。

新卒一括採用をやめるという今回の動きをどう見るのか、今後の日本の新卒採用のあり方は変わっていくのか、日本クラウド証券代表取締役社長 大前和徳氏に伺った。

即戦力と幅広い人材を求める動き

新卒の一括採用をやめた理由をどう見るか。

「即戦力志向となったのだと思います。ただ、新卒を採らないわけではないので、新卒や第二新卒という区別をやめたのでしょう。

新卒一括採用は、日本独自のシステムです。新卒者を意識したタイミングではなく、会社の人事政策に基づいて、必要なスキルを持つ人間を必要なときに必要な人数を採用する方向へ、考え方を変えてきたのだと思います。

世界の企業がやっている普通のやり方に移行した形です」

また、今までの採用とは考え方の違いも見られるようだ。

「新卒は即戦力ではありませんので、企業にとっては先行投資です。企業に人を育てる余裕がなくなり、3年や4年、あるいは10年かけて育てて、将来の会社の戦力になってくれという考え方から変わってきたといえます。

新卒者が中途の人と争うのは難しいので、新卒者の採用の間口が狭まったと見ることもできます」

さらに、アサツー ディ・ケイは広告代理店という視点に立つとこんな見方もできるという。

「クリエイティブやコミュニケーションといった新しい分野では、新卒一括という古い日本の制度をやめることで、今まで出会ったことのないような人を採りたいという考え方もあるのでしょう。

変わった人やとんがった人を採ることで、人材に幅を持たせたいのかもしれません」

能力次第で企業と対等の関係に

今後、新卒一括採用を取りやめる動きは広まっていくと思うか。

「今後、アサツー ディ・ケイのように新卒一括採用をやめる動きは、広まっていくと思います。

ただ、マクロ的に見て大きな問題があります。日本は人口減を迎え、労働力が不足していくことが見込まれているのです。

企業は即戦力が欲しいが、でもいい人がいないから採らないというミスマッチが加速していくと思われます。欲しい人がいなくても、育てる余裕がなく、人手不足となることも想定されるでしょう」

採用のあり方の変貌は、企業と個人の関係にも変化をもたらすという。

「働き方が多様化してきている一方で、企業側の採用の仕方も多様化し、ある意味、企業と個人の関係が対等になってきているともいえます。

いい人はあちこちから声がかかりますが、大きな会社に依存している人であれば、会社にしがみつくしかなくなるでしょう。

能力の高い人は企業と対等な関係で、どんどん新しい会社に移っていくことができます」

企業の採用力による二極化

大きな流れとしては、新卒一括採用のシステムは残るのだろうか。

「新卒の一括採用を取りやめる動きは広まるものの、何十年と続いた日本の制度が急になくなるとは思えません。

一括採用は、地方の企業や労働集約的な事業を営み大量採用したい企業に便利です。逆に、優秀な少数の人材が欲しい場合は、新卒の一括採用を行う意味を見いだせなくなるでしょう」

最後に、新卒採用の形について展望を述べた。

「将来的には、学生から見た人気企業は、会社に採用力があるので、一括採用をやる必要がなくなり、人気のない企業が一括採用を行う形になるのかもしれません。

一括採用をやらない企業は、欲しい人材が採れるという自信の表れともいえ、二極化の様相を呈する可能性があります」

横並びで行われてきた新卒一括採用。多様化する時代の中、採用システムが変貌していくと、採用する企業側も、就活をする学生側も、これまで以上に実力を問われるようだ。

インタビュー先:日本クラウド証券代表取締役社長 大前和徳
記事作成:ライター 梅原ゆい


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