専業主婦希望率・第1位の日本。世界と日本のジェンダーフリーを考察


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「女性が輝く社会の実現」を推し進める安倍政権……。

アベノミクスの第三の矢である「成長戦略」において、最重視されている「女性の活躍」は、妊娠・出産を機に離職し、家庭に戻る女性を活用し、労働力不足を解消しようとするもの。この政策が見据える先には、待機児童解消、学童保育拡充、長時間労働抑制といった、男女垣根なく、仕事と子育てを両立できる社会の実現が掲げられていますが、その一方で女性からはこんな本音も聞かれます。
「アベノミクスが掲げる “女性の力”には家事労働は含まれないんでしょ?」
「働け、働けって言うけど家事、出産、育児、介護の負担は相変わらず女性にかかっている」
「男性の意識が変わらない限り、女性の意識も変わりようがない」……。
── そこで今回は、世界と日本の「ジェンダーフリー」について考えてみました。

 

女性の労働参加率が最も高い国はスウェーデン

 

最初に、世界における「女性の社会参加」に目を向けてみましょう。
日本のように夫が給料を妻に渡し、妻が家計を管理する習慣がなかったスウェーデンは、「無報酬で家事、育児をする女性は社会的地位がない」という通念が定着し、家事・育児を夫婦が平等にシェアし、男女関係なく社会参加することが当然……というオピニオン(主張)が根づいています。その証に、25〜54歳の女性の労働参加率は世界で最も高く、その割合は90%を超えています。まさしくスウェーデンこそ、ジェンダーフリー最前線の国家といえますね。

さらに、OECD(経済協力開発機構)の各加盟国の15歳女性に「将来、専業主婦を希望しているか」という設問を投げかけた調査では、第2位(100人中約2.5人)の韓国を引き離し、図抜けた割合(100人中約4人)で、日本が「専業主婦希望率」の第1位に輝いたそう。※
この結果をみなさんはどう受け止めるでしょうか。
※国際学力調査“PISA2006”の生徒質問紙調査のデータより

加えて、過去の厚労省の調査によると、日本女性の60%以上が「女性には家事や子育てなど、外に出て仕事をするより家庭でやるべきことがある」と答え、約30%が「夫がしっかり働けるようにサポートするのが妻の役目」とした結果も公表されています。
「ジェンダーフリー」とは、社会的性別(ジェンダー)に対する一般通念にとらわれず、自分の生き方を自己決定できるようにしようとする策動ですが、今の日本を見ると「ジェンダーフリー」は、深くて大きな河の対岸に立てられた、看板に書かれた“お題目”でしかなく、彼岸に船が渡るか、じっと目をこらさない限り、その文字を読むことすらできないものなのかもしれません。
そして、此岸(コチラ側)にいる20代、30代の女性は、出産までのタイムリミット、社会通念、男性の意識、企業制度と闘い、悩み、もがき続けている……。それが今日の日本社会なのでしょう。

 

子どもが3人になっても離職しないスウェーデン女性

 

2016年12月に公表された、厚労省の女性・イクメン活躍検討チーム 「ジョカツ部」がまとめた〈生活者の「期待」「不満」「怒り」の声〉 の一部を抜粋すると……、

●子どもがいるし、定時で帰らないといけないし、正社員は無理と判断(40代・既婚女性・子2人)
●ベビーカーを押して5m歩くごとに「すみません、すみません」って謝らないといけない日本を変えてほしい。子育てってそんなに悪いことですか(20代・独身・女性)
●残業が多い。休みがとれない。日本は長時間労働の慣行を是正しないと何も変わらない(30代・既婚・男性)
●働いてないから預けられない。夫は残業、残業で帰ってこない。実家は遠くて帰れない。子どもが小さくて外にも出られない(30代・既婚女性・子2人)
●働いてないから預けられない。働きたいのに預け先がなくて就職活動ができない(匿名)
●欧米は18時には家に帰っていると聞いている。日本も変われるのだろうか(20代・独身・男性)

……と、子育て世代の男女からリアルな声がたくさん寄せられています。

日本社会では、せっかく就職しても妊娠・出産を機に退職をする、または復職してもデスクワークなどに職種替えするなど、女性側に負担が強いられるケースが圧倒的に多いといえますが、表の通りOECDの調査によると、スウェーデンでは子どもの数が増えても雇用者数が減らないことが報告されています。
 

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独自の特異体質を長期にわたって温存する日本

 

先に紹介したスウェーデンをはじめ、ノルウェー、アイスランド、フィンランドなどの北欧諸国に加え、フランス、ギリシャ、モンテネグロ、ポルトガルなど、女性の社会進出がめざましい国の女子高校生を対象にした調査でも、「専業主婦希望率ゼロ」という結果が出ていることから、うら若き10代半ばで、国による女性の意識の相違が浮き彫りになっています。

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こうした日本のあり方や実情を海外メディアも注目し、「専業主婦希望率ゼロ」の国の一角をなす、フランスの日刊紙『フィガロ』は、「日本では、“女性は家にいて男は仕事をする”という図式がよき文化になっている」「日本人女性は働くことを思い描かず、若者のわずか4分の1しか海外で働きたいと思わない」とシニカルなトーンで報じています。

ちなみに、欧州諸国において1900年初頭に続々と女性が参政権を獲得するなか、1945年に日本と同じタイミングで女性参政権を獲得したフランスでは、長きにわたって「女性は結婚したら家庭に入るもの」という慣習がありました。しかし、1970年に「人類の二人に一人は女性である」というスローガンを掲げた女性解放運動(MFL)の革命的抗議行動によって、社会・男性側の意識も変化。多くの女性が職を持つようになったことで、今日のフランスでは20〜40代の女性の8割超が職に就き、出生率も上がっているそう。

 

真の女性の活躍は、真の意味での「ジェンダーフリー」から

 

複雑に絡み合った問題が山積するなか、日本において「女性の活躍」が名実のものとなる日がいつになるかは悩ましいところですが、70〜100年前までは社会における女性の立場が日本と相違なく、さらには女性が参政権を獲得した年が日本と同年だったフランス。
そのフランスにとっても、今日の日本人女性を取り巻く環境や、「将来は専業主婦になりたい」と発言する女子高校生が多いことが、とても奇異に映るようなのです。

加えて、苦労して就職活動をした末に「世間体があるので一度は就職しておかないと」「管理職なんてなりたくない」「就職は結婚相手をみつけるため」「賃金も待遇も男性と違うので、
最初からあきらめている」という意識で入社する日本女性が多いことは、特に男性であればご存じの通りです。

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── 「次の100年」とまで言わずとも、次の10年、20年の中で日本女性を取り巻く環境はどう変化しているでしょうか。
もしかしたら「営業マン」「ホテルマン」「スチュワーデス」という言葉が昨今使われなくなったように、10年後には「待機児童」「専業主婦」という言葉も、過去によく耳にした懐かしい言葉になっているかもしれません。
何より「自分の持ちうる力や個性を社会で発揮し、自らの可能性にチャレンジしたい」と男女関係なく思い描けるような、活気ある社会に日本が変化することを、期待してやみません。

来月は、今も昔も議論かまびすしい「専業主婦の労働対価問題」について考察したいと思います。

≪記事作成ライター:岩城枝美≫ 
東京在住。大手情報サービス企業を退社後フリーランスに。20年にわたりあらゆるジャンルの取材・執筆、コピーディレクションに携わる。


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