たったの5万円でブラックリスト入り!? 銀行に誠意は通じるか?


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今から約20年前、忙しく仕事をしていた30代半ばの筆者のもとに、突然一本の電話がかかってきました。

「前田さん、大変なことになりましたね、あなたもう当分、お金は借りられませんよ」。
なんのことかと思ったら、「○○銀行からあなたの債権を譲り受けた○○サービスです」と相手は名乗ります。とっさのことに事情がつかめず、「ええっ?? 銀行からお金を借りた覚えなんかないのに、どうして?」と内心思っていた筆者に、たたみかけるように相手からの説明が続いたのです……。

 

長年未使用だったクレジットカードとキャッシュカード

 

どうやら、筆者が社会人になった時に勤務地で作った○○銀行のキャッシュカードは、残高がゼロになると自動的に限度額まで融資される機能がついたカードだったようなのです(勧められるままに作ってしまい無自覚でした)。そしてその口座を、後にまったく使わなくなるクレジットカード2枚の引き落とし口座に指定していました。○○銀行のカードを作ってから半年くらい経った後から、転勤のため転居を繰り返した筆者のところには、○○銀行からも、クレジットカード会社からも、なんの通知も届きません。使用した覚えもないうえに、完全に頭から消え去っていて、さらに10年くらい経ってからの突然の電話だったので、筆者は本当に面喰ってしまったのです。

 

自動融資機能付きキャッシュカードの罠

 

 

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電話先の説明によると、何年分かはわかりませんが、クレジットカードの使用料が銀行口座からマイナスになって引き落とされており、借金をしている状態になっている。さらに延滞料などが加算されて債権額は増え続けている。それに対して返済の気配はなく、何の誠意も見られない。督促をしようにも、私の居住地がわからず連絡もつかないので、○○銀行は私をブラックリストに登録したうえで、サービサー(債権回収会社)の「○○サービス」に債権を売った。そして、その債権を買った「○○サービス」は、私の居住地と電話番号をみつけ出して電話をかけてきた、というわけです。

で、肝心の債権額ですが、聞くと「5万少々」なのです。そりゃあ、そうです。カード使用料の何年か分に利子がついただけですから。かなり高い利率で利子がついても、その程度の金額にしかなりません。とはいえ事は重大です。以下、思い出して、当時の電話のやり取りを再現してみます。

筆者/「いや、完全な過失なんです。忙しくて忘れていました。それは口座のお金の動きを見ていただければすぐにわかりますよね、今日、お金は払いますのでブラックリストは勘弁してもらえませんか?」

電話の相手/「過失と言われましても、ブラックリストに登録したのは銀行なので、私どもにはどうしようもありません。住所変更をしていないので、銀行からの督促状が届かなかったのかもしれませんが、それを含めて貴方には誠意がないということです」

 

ブラックリストから名前は消せないのか

 

いやはや、これは大変なことになりました。
一度、登録されたら少なくとも5年はお金を借りられないので、「これから家を建てて、会社を作って……」と張りきっていた計画も、これでは頓挫しかねません。何より「5万円少々を延滞してしまったので、もう家は買えません」なんてことを言ったら、「実家に帰ります」と嫁は言い出しかねません。
当然ながら20年ほど前は、ネットでの情報検索もおぼつかなかった時代。慌てた筆者は知人や知り合いの弁護士に聞きまわりました。その回答はおおむね「一度、ブラックリストに登録されたら絶対に消せない」という暗澹たるものでした。
目の前が真っ暗になりながらも筆者が頼ったのは、加入している生保会社のライフプランナーでした(注意、これはコマーシャルじゃありませんよ)。

 

銀行に誠意は通じるか?

 

ライフプランナーの彼は、「○○銀行だって話せばわかってくれるかもしれません。正直に話してみない手はない。まずは電話してみましょうよ」とアドバイスしてくれました。
そこで早速、筆者は○○銀行に電話をして、〈過失であること〉〈大変申しわけないことをしたと思っていること〉〈これから住宅ローンの契約があるので、このままでは大変なことになること〉〈指摘されてすぐに返済したこと〉等々を必死で説明しました。そして、筆者の話をじっと聞いてくれた電話口の担当者は、「責任者と話をしますので、2時間後に電話をください」と答えてくれました。

── このとき、少しだけ光が見えた気がします。

そして、2時間後の電話で、「銀行へ来て、直接経緯を説明するように」と指示された筆者は、指定された日時に出向いて、というよりも出頭して、自分のいい加減さを謝罪しました。応対してくれた責任者は、「そういうことでしたら、今後は気をつけてください。この口座は閉鎖していいですね」と、口を開きました。

「ということは……」と、思わず口元がほころぶ私に対して、銀行の担当者は「『ブラックリストから消します』とは、私の口からは言えません、お察しください。最初から今回の債権譲渡の話はなかったんです、そういうことです」と言ってくれたのです。

 

過失だろうが、少額だろうが、契約上のミスは許されない

 

今回、当記事に書いたことは、決して「ブラックリストはこうすれば消せる」的な話ではありませんし、消せるか消せないか、と問われれば、消せないことが一般的な解釈となります。

振り返ると、(20代だった)当時の私には、「仕事さえちゃんとしていれば、あとのことは適当でいい」という甘えがどこかにあったような気がします。さらに、ここまでずっと「過失」と書いてきましたが、正しくは過失ではありません。銀行からすれば、「契約は成り立っている、お金を借りておいて『忘れた』とは何事ですか?」ということですよね。これは、筆者にとって忘れられない教訓になりました。 

── この記事を読んでいるみなさんの中にも、義理やその場の雰囲気でなんとなく作ったまま、使わずに放置してあるクレジットカードや銀行口座をお持ちの方がいらっしゃいませんか。年会費がもったいないですし、筆者のような罠に落ちないためにも、ぜひとも使わないクレジットカードや銀行口座は覚えているうちに処理することをお勧めします。

≪記事作成ライター:前田英彦≫
同志社大学工学部(現理工学部)出身。株式会社リクルートに11年間在籍、広報室マネジャーなどを経て独立。数々の起業家、創業経営者との出会いを通して、日々成長中。独立時に設立した会社は現在18期目を迎えている。『レジを打ったことのない人間に小売りの何がわかる!』と流通業の顧客に言われて悔しかったことがきっかけで、たい焼き屋も展開。大学を卒業して30年。突如理系仕事に目覚め、最近では製造業の職人になってしまったという噂も。ダルメシアン、テニス、ゆで卵を愛す。


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