テレビやインターネットの動画などで、すっかりおなじみとなったドローンの空撮映像。宙を舞いながら繰り広げられる圧巻のパノラマビューは、まさに迫力満点で思わず見入ってしまいますよね!
もともとドローンは、第二次世界大戦中に軍事目的の無人偵察機として開発され、日本では30年ほど前に農薬散布を行う無人ヘリコプターとして登場。ここ最近は単なる空撮にとどまらず、さまざまな産業分野や用途での導入が進んでいます。そこで今回は、いま注目される分野でのドローン活用事例をご紹介しながら、大手商社やIT企業も参入するドローンビジネスの可能性に迫ります。
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上空から農業を“見える化”する「アグリドローン」
無人ヘリコプターによる農薬散布など、ドローンの先端技術をいち早く取り入れてきた農業分野。ここ2~3年は散布作業だけでなく、農作物の育成管理・収穫チェックなどにもドローンが活用され、農家の人手不足対策や人件費の削減、作業効率・生産性の向上に大きく貢献しています。
【農業分野でのドローン活用事例】
●農業分野のシステムやアグリドローンを手がけるIT企業「オプティム」では、ドローンで空撮した農作物の葉の色を解析して、生育状況や病害虫の有無を判断するシステムを開発。見回りが大変な広い畑でも作物一株一株の状態が容易に把握できるうえ、病害虫が発生している場所を特定して、ピンポイントに駆除することで農薬の使用量も大幅に減らすことができます。
●住友商事が出資する農業用ドローン会社「ナイルワークス」では、ドローンが稲穂の直上を時速20kmで飛びながら、もみの数を一気にカウントするシステムを開発。収穫高が正確に把握でき、米の安定供給につながると期待されています。
防犯・セキュリティに威力を発揮する「警備ドローン」
固定カメラや人間だけでは把握しきれない監視部分も、ドローンの機動性を生かして広範囲にカバー。人がいなくても防犯やパトロールの効果が期待できる「警備ドローン」は、国内外のさまざまな場所で威力を発揮しています。
【セキュリティ分野でのドローン活用事例】
●三井物産が出資する米国のベンチャー企業「ケープ・プロダクションズ」では、オンライン操作が可能な最新鋭のドローンシステムを開発。高い遠隔操作技術(東京~米国間の操作も可能)を生かして、メキシコでは国境のパトロールに、ヨルダンでは国際会議の警備に使われています。
●大手警備会社の「セコム」では、2015年から店舗・家庭向けの「セコムドローン」というセキュリティサービスをスタート。監視カメラとLEDライトを搭載したドローンが建物の周囲を回遊し、接近した人の顔や車のナンバーを撮影して、同社のコントロールセンターに送信するシステムです。
土木工事・建設現場で活躍する「ガテン系ドローン」
国土交通省では2015年から、情報通信技術を使って建設現場の生産性向上を図る「i-Construction」という取り組みを進めています。そこで大きく注目されているのが、土木・建築分野でのドローン活用です。すでに公共事業の土木工事や測量などにもドローンが導入されており、今後もさらなる需要拡大が見込まれています。
【土木・建築分野でのドローン活用事例】
●ドローンの撮影で収集・生成した3次元データを、実際の工事現場や発注機関で共有・活用することで、建設工事における一連の工程管理(測量、設計・施工計画、施工、検査など)がスムーズになり、現場の作業効率や生産性を高めることができます。
●時間や手間のかかる測量も、ドローンを使えば現場を歩き回ることなく短時間で完了。さらに、撮影画像から取得した距離や高低のデータから容積も算出されるので、埋め立てなどに必要な土の量も正確に把握できます。
●2013年の噴火によって拡大した小笠原諸島・西之島の測量や、橋梁・鉄塔・ダムの老朽化点検など、人が立ち入れない場所の調査や、目視で確認しにくい高所の点検作業にもドローンが活躍しています。
国内外で市場拡大するドローンビジネスの課題
こうして、さまざまな産業分野でドローンの活用が進む中、多くの企業が参入して開発競争を繰り広げるドローンビジネス。いまやその国内市場は350億円規模に達し、5年後には2000億円規模に、世界全体では数兆円規模に拡大するともいわれています。人手不足・高齢化社会への対応や、災害支援・危険業務の担い手として、今後ますます高まるドローンのニーズを受け、ドローンビジネス自体が一大産業として発展する可能性もあるでしょう。
しかし、ドローンの普及とともに墜落などの事故も頻発しており、安全性・信頼性という点に問題が残されているのも否めません。また、日本ではドローンの飛行に厳しい規制(改正航空法/2015年施行)があり、上空150m以上の空域や人口密集地での無許可の飛行が禁止されているほか、農地でのドローン導入をめぐっては周辺地域への影響を懸念する声も上がっています。
こうしたハードルをいかに乗り越え、ドローンの可能性を社会に広げていくか……ドローンビジネスの将来は、そこにかかっているともいえるでしょう。残された課題はまだまだ多くありますが、経済産業省の『空の産業革命に向けたロードマップ』では、小型無人機(ドローン)の技術開発と環境整備を、国として積極的に推進していくとしています。安全・効率的にドローンが飛び交う未来社会の実現に向けて、官民一体による新たなチャレンジがすでに始まっています。
※参考/ガイアの夜明け(テレビ東京)、朝日新聞、国土交通省・経済産業省HP
≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫
約20年にわたり、企業広告・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌などのライティングを手がけています。金融・教育・行政・ビジネス関連の堅い記事から、グルメ・カルチャー・ファッション関連の柔らかい記事まで、オールマイティな対応力が自慢です! 座右の銘は「ありがとうの心を大切に」。
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