注目のプロジェクトも続々!日本の美術館・博物館に広まるクラウドファンディング


クラウドファンディング,ソーシャルレンディング,マネセツ

世界文化遺産の国立西洋美術館(東京都台東区)

インターネットを介して有志からの出資を募り、さまざまなプロジェクトを実現させる「クラウドファンディング」。

みなさんご存じの通り、クラウドファンディングは利用者・活用の場が年々拡大しており、2020年には世界の市場規模が900億ドル(約10兆円)に達するとみられている。

そうした中、資金繰りに窮する日本の美術館・博物館でも、施設改修や展覧会のプロジェクトにクラウドファンディングを活用する動きが活発化。目標額に達せず失敗に終わるケースもあるが、出資者を一気に集めて成功するプロジェクトも多く、業界関係者からは大きな期待が寄せられている。
そこで今回は、成功を収めた国内美術館・博物館のプロジェクト事例を紹介しながら、ミュージアム産業におけるクラウドファンディングの可能性と課題について考察する。

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美術館を取り巻く環境が厳しさを増す中で……

ここ近年、国内の美術館を取り巻く環境は厳しさを増している。来館者の減少や施設の老朽化などで苦境に立つ美術館は多く、惜しまれつつ閉館する施設も少なくない。

村山槐多(むらやまかいた)をはじめ、夭逝(ようせい)した画家たちの作品など約1000点を収蔵する「信濃デッサン館(長野県上田市)」。1979年の開館以来、年間約7万人の来館者を集めて観光客にも親しまれていたが、ここ近年は約6000人にまで減少し、存続は困難として2019年3月に閉館した。

同じく1979年の開館以来、日本の現代美術シーンをけん引してきた「原美術館(東京都品川区)」も、施設の老朽化から2020年12月に閉館すると発表。美術館の建物は1938年に建てられた原邦造氏の私邸で、日本を代表するモダニズム建築としても高い評価を得ている。しかし、近年は老朽化が進み、バリアフリーなどへの対応も困難なことから閉館を決定したという。

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原美術館(東京都品川区)

国内ミュージアムのクラウドファンディング成功事例・1

そうした厳しい状況の中、施設運営を支える手段として期待を集めるのが、ミュージアム系のクラウドファンディングだ。最近はクラウドファンディング総合サイトでもミュージアム関連のプロジェクトが増えており、成功事例も多い(図表参照)。海外と比べて施設運営に対する優遇税制が弱く、民間からの寄付も期待しにくい日本の美術館・博物館にとって、不特定多数の有志から寄せられる資金はまさに救世主となる。

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プロジェクトの平均的な支援額は1万円ほどで、各館は優先観覧やグッズなどのリターンを用意して出資を募る。ちょっとした出資で苦境の美術館を救える、魅力的な展覧会の開催チャンスが広がる、文化的資産の保護・創造に寄与できる……など、文化振興に貢献したいアートファンにとっても、クラウドファンディングを利用する価値は大きいといえるだろう。

国内ミュージアムのクラウドファンディング成功事例・2

ちなみに、日本でいち早くミュージアム系のクラウドファンディングに乗り出したのが、国際的なコンテンポラリーアートを展示する「ワタリウム美術館(東京都渋谷区)」だ。同館は2012年にフランス出身の写真家JR(ジェイアール)とのコラボプロジェクト(東日本大震災の被災地をトラックで巡回し、撮影した住民のポートレートを街頭に貼っていくというインスタレーション)を企画。被災地をアートの力で元気にしようという呼びかけに賛同の声が広がり、目標額(200万円)を超える約250万円の出資を集めた。

クラウドファンディングを活用したプロジェクト事業は、2001年に独立行政法人となり、財政の自立が求められる国立ミュージアムにも広まっている。国立科学博物館(東京都台東区)は、3万年前の航海を再現するプロジェクトで2016年から出資を募り、約6000万円の資金を調達。そして今年(2019年)7月、丸木舟で台湾から与那国島に向かう実験航海のプロジェクトを見事に成功させた。

国立6美術館(東京国立近代美術館、国立西洋美術館、国立新美術館、京都国立近代美術館、国立国際美術館、国立映画アーカイブ)でも、今年3月に合同の専用サイトを立ち上げ、クラウドファンディングによるプロジェクト事業をスタート。第一弾となる国立西洋美術館(東京都台東区)のクラウドファンディングでは、クロード・モネの絵画をデジタル推定復元するプロジェクトで、目標額の3000万円を早々に達成。デジタル復元された画像は、今年6月~9月開催の「国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展」で公開されている。

クラウドファンディング×施設運営における今後の課題

もちろん、どれほど魅力的なプロジェクトを企画しても、PRが足りなければ賛同者は集まらない。とくに、ミュージアム系のクラウドファンディングでは、プロジェクトの趣旨や必要性をいかに工夫してPRできるかが成否を分ける。
とはいえ、賛同を得るプロジェクトを絶えず打ち出していくには限界があり、継続的な資金調達の手段として、やみくもにクラウドファンディングの「善意」に依存するのはリスクもある。クラウドファンディングをどこで・どう活用し、施設を維持する体力と企画力、情報発信力を蓄えていくかが、今後のミュージアム運営の課題となってくるだろう。

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── こうして、いまミュージアム産業にも広まりつつあるクラウドファンディング。その言葉自体は比較的新しいものだが、「有志から資金を募って何かを実現させる」という手法は、アートや文化事業の分野でも古くから存在している。たとえば、芸術家を経済的に支援するパトロンや、寺院・仏像などの建立・修復に寄付を募る「勧進(かんじん)」など……。これと同じことが、インターネットによって誰でも気軽に実現できるようになった今、現代のパトロン・勧進の輪が地域を超えて広まり、社会に根づいていくことを期待したい。

※参考/国立美術館CFサイト、国立科学博物館HP、朝日新聞、日本経済新聞

≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫  
20年以上にわたり、企業・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌・各種サイトなどの記事を執筆。長年の取材・ライティング経験から、金融・教育・社会経済・医療介護・グルメ・カルチャー・ファッション関連まで、幅広くオールマイティに対応。 好きな言葉は「ありがとう」。


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