海外企業によるシャープの買収で、「家電王国」日本の電機メーカーの今後は?


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この4月、台湾の「鴻海(ホンハイ)精密工業」によるシャープ買収が正式決定し、テレビのニュースや新聞などでも大きく報じられました。
これによりシャープは鴻海の傘下に入り、経営再建を目指すことになります。

とはいっても、日本の大手電機メーカーが海外企業に買収されるのは初めてのこと。
果たしてシャープは、海外企業のもとで見事復活を遂げることができるのでしょうか……?
国内外の他企業からも注目されている今回のシャープ買収、その背景を探ってみました。
 

自社ブランド製品をもたない巨大企業「鴻海」

 
1974年に設立された「鴻海精密工業」(以下、鴻海)は、世界最大手のEMS(電子機器受注製作)企業で、本社は台湾にあります。
2015年度の売上高は約15.8兆円。国内最大手の日立製作所(同9.7兆円)や、ソニー(同8.2兆円)、パナソニック(同7.7兆円)の規模を上回るビッグカンパニーです。
日本ではあまり知られていない会社ですが、鴻海製品は私たちの身近なところにたくさんあるのをご存じでしょうか?
たとえば、スマートフォンやゲーム機器。米アップル社の「iPhone」や、ソニーの「プレイステーション4」、最近話題となっているソフトバンクのヒト型ロボット「ペッパー」の製造も鴻海が手がけています。
自社ブランドの知名度はなくても、世界中の企業から信頼される技術力・生産力が鴻海の強みであり、事業拡大を目指す上で最大のカギとなります。

ご存じの通り、シャープには液晶テレビで培った技術力とブランド力があり、亀山工場(三重県)など世界に誇る生産拠点も有しています。
また、スマートフォンの画面で将来有力とされる「有機ELパネル」の開発事業も手がけています。
これらシャープの技術力・開発力・生産設備を事業展開に生かすことで、鴻海の業績は一気に拡大する可能性があるのです。

今回の買収で、鴻海はシャープに約5000億円の保証金・出資金を支払うと報じられています。EMSの巨大企業・鴻海にとって、わずか(?)数千億円で名門ブランド・シャープを手に入れることができるのは、まさに「お買い得」といえるのかもしれません。
 

家電業界はグローバルな競争の時代に

 
一方、シャープは1912年に設立された老舗企業で、他社にはない「シャープな視点」で独自の商品を開発し、堅実な成長を遂げてきました。
2000年代には液晶テレビの「アクオス」が大ヒット。2008年には売上高・純利益ともに過去最高を記録し、大手電機メーカーのなかでも勝ち組のはずでした。
ところが2010年以降、中国の景気減速などのあおりを受け、主力商品の液晶パネルの売れ行きが大幅にダウン。大規模な工場増設などの過剰投資も響き、ここ5年間で1兆円を超える赤字を計上するまで業績が悪化。危機的な経営難に陥り、ついに自力再建を断念したというわけです。

さらに近年は、海外のライバル企業も一気に勢力を拡大。テレビ・スマートフォンの分野では、韓国のサムスン電子やLG電子が頭角を現し、冷蔵庫・洗濯機などの白物家電では、中国のハイアールが世界でトップシェアを占めるに至っています。
そうした中で「家電王国」といわれた日本の電機メーカーは、海外企業との低価格競争に巻き込まれ、これまでにない苦戦を強いられています。

独自性を重んじて、これまで海外企業の傘下に入ることがなかった日本の大手電機メーカー。その卓越した技術力やブランド力は、買収先を探している海外企業にとっては大きな魅力であり「お買い得感」も。

今回のシャープ買収を機に、将来は海外企業の傘下に入るメーカーが増えてくる可能性があり、日本経済を支える家電業界にも大きな変革が求められるでしょう。
まずは、私たち日本人が慣れ親しんだ名門・シャープが、鴻海傘下で見事復活することを願って、今後の動向を見守りたいところです。
 

≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫
約20年にわたり、企業広告・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌などのライティングを手がけています。金融・教育・行政・ビジネス関連の堅い記事から、グルメ・カルチャー・ファッション関連の柔らかい記事まで、オールマイティな対応力が自慢です! 座右の銘は「ありがとうの心を大切に」。


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