新聞の折り込み広告や電車の中吊り広告を見ていると、「住宅ローンの金利が過去最低の今こそ、新築マンションがお買い得」、最近こんなキャッチフレーズが目につきます。
「頭金ゼロで、都心から電車で30分、3LDKのマンションが月々7万円台から」なんて言われると、確かに「家賃を払うよりもいいかも」と思う人も多いことでしょう。
けれど、ローンは一般的に20〜35年のお付き合いになるもの。
将来を考えた時に、本当に今買ってよいものか……よくよく考えてハンコを押さなくてはなりません。
広告費やディベロッパーの利益などが上乗せされた新築プレミアム
日本人は、総じて新品であることにこだわる傾向があります。
筆者のところにも、新車を買わせようと足繁く車の営業マンがやってきます。
でも、その隣の系列中古ショップでは、走行約50キロの車が「新古車」として、新車価格の30%引きで売っているのが現実です。
「その差って?」と問いかけても、営業マン氏の答えは「やっぱり新車がいいですよねぇ」と、とてもあいまいなのです。
そうです。答えはないのです。
マンションも同じことが言えます。「好きな階が選べる」「好きな間取りが選べる」、確かにそうかもしれません。けれど、バブルの時代ではない今は一般的に、
「新築マンションは、買った瞬間、ハンコを押した瞬間、その時が一番値を下げる」時なのです。
つまり、その場で買ったものをすぐに売ろうとしても、おそらく2~3割は損をすることになるケースが多い市場原理になっているからです。
これはなぜかと言うと、「新築プレミアム」と呼ばれる市場流通価格に対して上乗せされた金額が、一気にはげ落ちるから。
この「新築プレミアム」をローンで払うだけで、何年もかかることを覚えておかなければなりません。
金利は過去最低。けれど、下がったものは上がるかもしれない
筆者は、金利3.5%で住宅ローンを20年払い続けてきました。
今の時代、「住宅ローンで3パーセントを超える金利」というのは、ずいぶん高く見えますが、過去を振り返ると、平成8(1996)年には変動金利が8.5%を記録しています。
大きな買い物をする際は、このように金利が上がったり下がったりすることを頭に置いておく必要がありますし、長期で借り入れを考える際には、「過去最低金利」の今から金利が上がったら、月々の支払いがそれだけ増えることということ。
確かに、政府がマイナス金利を導入するまでに、資金需要を掘り起こさなければならない現状を考えると、今後10年間に住宅ローン金利が3%を超えることは考えにくい環境ではあります。ただ、中には「日本の財政破綻が起きてハイパーインフレがやってくる」と予測する経済学者もいます。
「だから固定金利にする」。変動金利と固定金利の差が、どんどん縮まってきている今、それは大きなリスクヘッジになるかもしれませんね。
価格が高すぎて、新築マンションは売れていないは本当?
不動産経済研究所が発表した全国マンション市場動向によると、2015年のマンション発売戸数は14年比6.1%減の7万8089戸。
全国のマンションの平均価格は4618万円で14年比7.2%上昇です。
この数字、なんと1991年(バブル末期)の4488万円をも上回る数字です。
この要因として考えられるのは、度重なる天災からの復興需要をはじめとるさまざまな要因による建築作業員の人件費や資材の高騰が原因とされています。
また、都心の高層タワーマンションなどでは、節税対策を目的とする国内富裕層をはじめ、爆買いに代表される海外富裕層のマンション購入も、その一因とされています。
2016年に入ってからはさらに価格が上がり、一部には「ここからタワーマンションの価格は下がる」という声もささやかれ始め、発売・販売戸数はさらに大きな落ち込みを見せています。これらの事実を照らし合わせると、
「今、新築マンションは高いので売れていないのは、どうやら事実のようだ」と判断するほうが自然です。
「マイナス金利だから、さぞやマンション市場は活気づいていることだろう」と思いがちですが、事実はそうではないようです。もちろん、消費増税先送りなどの様々な要因も絡んでいることでしょう。それらを総合的に勘案し、「高値づかみ」だけはしないようにしたいものですね。
≪記事作成ライター:前田英彦≫
大手情報サービス企業に11年間在籍後、独立。数々の創業経営者との仕事に触発されて、企業の広報活動を支援する会社を設立、現在18期目を迎えている。「レジを打ったことのない人間に小売りの何がわかる!」と言われたことがきっかけで、なぜかたい焼き屋も展開中。好きなもの。ダルメシアン、テニス、ゆで卵。
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