ECB(欧州中央銀行)の緩和政策継続明確化へ


ECB(欧州中央銀行)が金融緩和政策の継続を明確化しました。政策金利0.00%、預金金利-0.40%、貸出金利0.25%はそれぞれ据え置きを予想通り決定しました。そして量的緩和策である資産購入について変更があり注目されました。

現在の毎月800億ユーロの資産購入を来年3月末まで継続する。そしてその後4月からは200億ユーロ減らし毎月600億ユーロの資産購入を12月末まで継続するとしました。市場予想は、800億ユーロの資産購入を来年9月末まで継続するとのことでした。資産購入の延長期間が3ヶ月長かったこと、そして購入額が4月から200億ユーロ少なくなったことを金融市場は好意的に解釈したようです。
欧州株式市場、とりわけユーロ圏の中心取引所フランクフルト株式市場DAX指数+192.42の11,179.42まで急伸しました。ドラギECB総裁は、テーパリング(購入縮小)は本日議論していないと、ことさら縮小論議はマイナーな問題だと強調している。あくまでも金融緩和を強力に推進していく方針を市場に伝えたかったように思います。それはECBの預金金利の-0.40%でもECBは資産購入するとドラギ総裁は記者会見で発言しています。
そして残存償還期間の下限を2年から1年に変えるとも言い切っています。買入れ規模の縮小化とイールドカーブ(利回り曲線)のスティープニング(立つ)化を防ぐ目的が背景にあると思われます。つまり対象債券が増えるメリットがあると言えます。
独連邦債などは既に市場に流通する債券は少なくなりつつあり、そうして事態を防ぐ対策と言えます。そして同時に来年からの資産購入縮小にも対応した措置と言えます。

下記のグラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)はこれまでの資産購入の経緯を示しています。15年3月9日から毎月600億ユーロ規模の資産購入を開始しました。同年12月3日には17年3月まで延長を決定しました。そして15年末には累計8,000億ユーロ規模に達しました。
今年4月1日には、毎月800億ユーロに購入額を増やす措置に出ました。今年6月8日には、国債以外に社債の購入を決定しました。そして今年年末には累計1兆6千億ユーロに資産購入が膨らむ結果となっています。右の購入資産のこれまでの内訳が記してあるのですが、国債(Government bonds)の割合が多く、その他資産購入の選択肢の一つに社債(Corporate Bonds)に加えて、品薄の国債を補っていると言えます。
ドラギ総裁は、来年のGDP(国内総生産)見通しを1.7%、18年1.6%、そしてインフレ見通しを来年1.3%、18年1.5%としています。インフレ見通しはECB目標インフレ率2.0%からはまだまだ低い水準であり、ECBとしては資産購入を継続する意思を明確にする必要があった訳です。
しかし景気の後退期からは脱しつつあり、そしてデフレ状態からはボトムをつけたように思われます。今後インフレ率の上昇が明確化すれば、資産購入規模を更に少なくすることが考えられます。
ECBは当面は現在の資産購入規模を継続することが予想されます。そして政策金利を次第に引き上げる方向に変更して行く可能性があると言えます。トランプ経済が上手くグローバル経済の中で機能することになれば、そのスピードを速めることになります。
まだまだトランプ次期大統領の政策が明確化されていなく、そして実行されていない段階では、期待することはちょっと大きすぎるのではないかと思います。

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ユーロ圏債券市場の反応を見ると興味深いと言えます。10年独連邦債-0.77%と前日の-0.70%からマイナス幅を広げている。つまり独連邦債買いの動きとなっている。優良な債券に対しては引き続き投資家には人気が集中していると言えます。
反対に、10年イタリア債2.00%と前日の1.90%から上昇、10年ポルトガル債3.73%と前日の3.52%から上昇する動きとなっています。イタリアは先週末の国民投票で、議会上院の権限を縮小するという国民投票でイタリア国民は拒否しました。
ディーニ元伊首相の言葉を借りれば、一院制は扇動政治家に振り回されやすい、そして過去に苦い経験のあるファシズムの再現を許さないというイタリア国民の経験が左右したように思います。レンツィ首相は辞任する政治決断をし、イタリア政局が不透明になりました。
しかし問題を抱えるイタリア第3位の銀行モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナの再建については公的資金の投入を約束し、債券市場には安心材料になったようです。しかし今回のECBの決定で改めて弱点のある国の債券は買えないという投資家の判断があるようです。
10年スペイン国債1.55%とこちらは政局安定、そして経済絶好調であることから、やや利回り上昇程度の範囲内に収まっています。こんなことでユーロ圏債券市場では、明確に人気、不人気の国債市場となっているようです。

ちょっとユーロの為替について議論しましょう。
筆者は通貨の強弱は二国間の主要金利差が大きな要因であると思います。米国では来週14日のFRB(米連邦準備理事会)でのFOMC(米連邦公開市場員会)での利上げ(0.25%)が確実視され、そして来年も少なくとも2回以上の利上げが予想されます。トランプ経済効果もあり、10年米国債利回り2.40%となっています。
反対にユーロ圏指標債券10年独連邦債-0.77%と、前段で説明した通り、ECBの量的緩和継続の確認から利回りが更に低下する傾向となっています。このことから2大経済圏の金利差拡大のユーロ安傾向を鮮明にしています。
下記のグラフはユーロ/ドルの1年半の期間のチャートです。左右の緑の丸印を注目してください。そして緑のラインを。緑のラインは1.0560に引きました。見事に昨年の今頃の水準と一致しています。昨年の今頃の下落はFOMCで利上げがあるのではとの観測が強く、そして利上げに踏み切りました。ドル高相場の結果、ユーロ安が進んだと言えます。
そして今回も今月FOMCの利上げが確実視されるドル高と、ECBの量的緩和継続方針が確認されたことで、ユーロ安のドル高となっています。昨年の水準に現在は踏みとどまっていますが、来週のFOMCの利上げと声明文から来年の利上げセッションの観測が強いと市場が読み取ると、この緑の水準を下回って行くかに注目することになります。パリティ(1ユーロ=1ドル)を伺う相場になるかに注目したいと思います。対円では円安傾向がユーロ安よりも勝っており、ユーロ高/円安傾向が強く示す相場となっています。

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ユーロの債券市場では利回りと言う点では、優良債券はまだまだ低いと言えます。反対に米債は次第に利回りを切り上げる水準となっており、投資家には歓迎すべき市場環境となっています。投資家は米国市場に益々目が向かう市場環境ではと思います。

«記事作成ライター:水谷文雄»
国際金融市場に精通するInvestment Banker。
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替および金利・債券市場部門で活躍、
外銀を知り尽くす国際金融のプロフェショナル。新興の外国銀行(中国信託商業銀行 )の
東京支店開設準備に参画しディーリング・ルームの開設を手掛ける。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、
スペインと日本との文化・経済交流を夢見るロマンティスト。


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