「謝罪」と、土下座、断髪、お詫び金、菓子折りの関係性



 

店員と客の行き違いから、コンビニ店員に土下座を求めた映像を客がネット上にアップしたり、要職者が土下座するクライマックスの放映回が、ひと昔前の紅白歌合戦並みの高視聴率を記録した連続ドラマも、数年前に話題になりました。

さらには、製薬会社や食品会社の重役が土下座して謝罪する会見など、なぜだか1990年代あたりから社会に土下座が氾濫している……と感じませんか。
今回は土下座や断髪などの行為で、深い謝罪の意を表する日本古来の風習を振り返りながら、「謝罪」と土下座、断髪、お詫び金、菓子折りの関係性と、謝罪の行動手順を考えます。

 

 

恥辱きわまる行為から、冷笑の的になった土下座と断髪

 

「ごめんなさい」では済まされないトラブルが起きた際、日本では古くから「相手の足もとに平伏し、額を地面につけて謝る=土下座」「重要なアイデンティティである髪を切って謝る=断髪」といった行為で、心からの深い謝罪の意を表してきました。
そもそも土下座と断髪は、日本と東南アジアの一部だけの風習であり、欧米にはそのような風習はありません。日本の歴史をみても土下座を「恥辱きわまる行為」としていた江戸時代では、土下座して相手に謝れば大抵のことは許されたという史料も残っています。しかし、当時と今日では「謝罪」の有り様が様変わりし、今日では土下座や断髪によって「誠意+謝罪の意」を表したとしても、その行為も滑稽かつ冷笑の的となっている傾向が強く、有効な謝罪行動とはなっていないようなのです。

 

日常で多発する、さまざまなトラブル

 

ビジネスシーン、友人・知人、ご近所間で、私たちはさまざまなトラブルに遭遇します。
● 約束を反故にしたため成約が流れてしまった(相手からの信用を失った)
● セクハラ、モラハラともとれる言動で、相手を不愉快にさせてしまった
● ちょっとしたひと言や揶揄が、相手の逆鱗に触れた
● 何気ないひと言で、相手の秘密が周囲にばれてしまった
● 些細なウソが、のっぴきならない事態に発展してしまった
● 友人や知人との間で金銭トラブルが生じた
こうしたときはまず自分の至らなさを反省し、迷惑をかけた相手に心をこめて謝ることが大切ですが、場合によっては「とにかく怒りを鎮めたい」「一刻も早く丸く収めたい」という必死さから、土下座することで事の収束を図ろうとする人がいます。

 

「土下座」は、事の収束に役立つのか?

 

ひと昔前までは土下座が恥辱きわまりない行為であったため、よほどのことがない限り、するほうもされるほうも「土下座なんてとんでもない」という意識でいました。仮に、謝罪に来た人が土下座をしたら、その覚悟と猛省を慮って「そんなことはやめてくれ、気持ちはわかった。頭を上げてくれ」とうながしたもの。
しかし昨今では、初対面の人を攻撃対象に据えて土下座を求めるなど、土下座が単に溜飲を下げる行為に成り下がり、鬱憤晴らしの一環でしかない……とみる向きもあります。
逆に、「罪逃れのパフォーマンスでしかない土下座なんてされても、こっちは一文の得にもならない」「テレビで坊主にする罰ゲームがたまにあるけど、あれってまったく意味がわからない」と感じる人も増えているよう。

ここ数年をみても、場の空気や相手の気持ちを推し量れないデリカシー&協調性欠如者を「鈍感、天然、バカッター、ゲス、おバカ、KY」といった具合に、オブラードでくるんだ流行り言葉でもてはやし、問題を直視しない風潮が強まっています。これと同様に「ひどいことを言ったり、ひどいことをしたって、警察沙汰にならない程度の問題だったら、みんなすぐ忘れちゃう。だから土下座や坊主なんて無意味だよ」と考える人も多いようなのです。

 

「刑事事件」と「示談金」の相場は?

 

土下座や断髪はさておき、トラブルを起こした際の謝罪行為のひとつに「お詫び金」があります。このお詫び金は刑事事件でいう示談金ですが、刑事事件にまでいたらない日常トラブルの場合、お詫び金はいったいどれくらいが妥当なのか……と、悩んだ経験がある人も多いはず。

 

 
そこで刑事事件(罪状)での示談金の相場をみてみましょう。表に示した罪状は「ごめんなさい」では済まされない類のものですが、みなさんが思い描いていた感覚と相場は合致したでしょうか。

世の中には「出産・入学祝」「寸志」「お布施や法要料」など、いくらくらいが妥当なのか判断に悩むものがたくさんあります。特に謝罪時のお詫び金は、その最たるもの。そして何より厄介なのが、「金で済ませようという魂胆か!」「この程度でお茶を濁すつもりか!」と、善意で用意したお詫び金が裏目に出て、さらなる怒りをかってしまった事例も数多く存在することといえるでしょう。

 

謝罪時の行動手順と、事前に用意するもの

 
  

 

あたふた動揺、困惑するばかりでは、いっそう事がこじれかねませんので、謝罪に赴く際には、お詫び金や菓子折りを準備する前に、まず「謝罪行動の手順」を理解しておきましょう。図はあくまで相手の怒りを鎮める道筋の参考例となりますが、トラブル発生直後は相手の怒りが最高潮にあるので、「早くもなく、遅くもなく」のタイミングを見計らって謝罪に赴くことが肝要。さらに、相手にとって比較的余裕がある時間帯を選ぶこともポイントとなります。

また、お詫び金や菓子折りの金額は、トラブルの大小によってケースバイケースですが、下記の考え方が失礼のないものとなっているようです。
【菓子折り】5000円〜1万円程度の名店の品(保存のきく小分け状のもの)
【お詫び金】実質的損害 + 菓子折りの金額をうわまわる詫び金

ちなみに、図の①で「来訪前に用意する3品」は、相手が「あなたの気持ちはわかりました」と、謝罪を受け容れてくれた段階で渡すのが鉄則となります。
いっこうに相手の怒りが鎮まらない場合は、「そう言わず、せっかくですから」といった対応は☓。マナー違反となり火に油を注ぎかねません。一方でお詫び金と菓子折りではなく、物品を用意する人もいますが、相手が男女にかかわらず、好き嫌いが分かれる装飾・服飾品なども避けたほうが無難。また、相手が目上の場合、商品券や金券も失礼にあたります。

 

誠意を伝えるための「お詫び状」も

 

また、菓子折りとお詫び金の金品に「お詫び状」を添えると謝罪の気持ちが相手により伝わりやすくなりますが、注意したい点は長文にしないこと。「このたびは大変申しわけございませんでした。せめてものお詫びの気持ちです」「このたびは大変失礼いたしました。心ばかりの品ですが、どうかお納めください」といった短文にするとよいでしょう。

── 誰しも好んで「鈍感、天然、バカッター、ゲス、おバカ、KY」などと呼ばれたくないもの。
女子の中には「天然、おバカ、KY」と呼ばれて「私ってちょっとおバカでかわいいから」と、笑顔でうれしそうな表情をする人もいますが(だから天然、おバカ、KYなのでしょうが)、百人いれば百通りの価値観、見解、金銭感覚があるので、よかれと思って行ったことがトラブルに発展してしまうことがあります。
運悪く加害者になってしまったら、一種のパロディーと化した土下座、断髪なんて過剰な行為はせず、適切な行動と金品に加えて、相手にしっかり誠意を伝えることが肝要となります。考えようによっては「トラブルは相手との関係性をより深めるチャンス」(相手にこんなこと言っては元も子もありませんが)なのですから、的確に善処して事の収拾に努めたいものですね。

≪記事作成ライター:岩城枝美≫ 
東京在住。大手情報サービス企業を退社後フリーランスに。二十年余にわたり、あらゆるジャンルの取材・執筆、ディレクションに携わる。


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