缶コーヒーの経済学。 イノベーションと市場の変化


缶コーヒーの経済。イノベーションと市場の変化
手軽に気分転換ができる日本独自のコーヒー文化・缶コーヒー。

いまではカフェで、テイクアウトで、家庭で、通勤の途中に購入し、始業前のリラックスタイムに……と、私たちの生活にどっぷり根をおろした感がありますが、産声を上げたのは1969年のこと。

缶コーヒーの消費量が世界トップクラスとなったいま、50年弱にわたる歴史をざっとおさらいして、缶コーヒー・マーケットがたどった変遷を見てみましょう。
 

8500億円の市場

缶コーヒーは上島コーヒーによって1969年に開発・商品化されました。
それまでいわゆるコーヒー牛乳は幅広く飲まれていましたが、「乳飲料」ではなく、本格的なコーヒーをメインにし、缶に入れることで保存性を高めることで、新しいジャンルを誕生させたのです。「缶コーヒー」の登場です。

清涼飲料には、炭酸飲料、果汁飲料、茶系飲料、ミネラルウォーターなどの分類がありますが、2014年の統計(生産量ベース)では「コーヒー飲料」(缶コーヒーとイコールではありません)は、炭酸飲料についで第2位のランクに位置しています。
少しさかのぼった2011年の統計では、コーヒー飲料の販売金額は約8500億円にのぼりますが、ちなみに生産量のランクは、ミネラルウォーター、緑茶飲料…と続きます。
 

自動販売機と缶コーヒーの深い関係

さて、みなさんは缶コーヒーをどこで買いますか? 
コンビニ?スーパー?やはり自動販売機が圧倒的に多いのではないでしょうか。

実は、缶コーヒー市場拡大は自動販売機のイノベーションと大きなかかわりがあります。

飲料の自動販売機そのものは、明治時代にさかのぼるともいわれますが、電化された自動販売機は1970年代初頭まで、冷たい飲料しか販売できませんでした。

冷たい飲料しか販売できなかったため、自動販売機業界は冬の売上減に悩んでいました。缶コーヒーも当初は「冷たい飲み物」だったのです。

しかし1973年に「コーヒーとは本来温かい飲み物である」ことに目をつけて、加熱と冷熱の切り替えが可能な自動販売機が開発されます。これによって、冬場に缶コーヒーをはじめとする温かい飲料を販売できることが可能になりました。

現在ではご存じの通り、一年を通じて温かい&冷たい飲料両方が販売可能ですし、いまや自動販売機は全国に約250万台あるとされています。

訪日観光客がまず驚く点は、整然と並び、街の風景に溶け込む自動販売機だともいわれます。
ある人は「我が国だったら、すぐに壊されて中のお金が盗まれてしまう!」と言ったそう。自動販売機は、日本の安全性を物語る象徴ともなっているのですね。
 

缶コーヒー市場のゆくえ

順調にマーケットを拡大してした缶コーヒーですが、2005年をピークに頭打ち、横ばい、低下の傾向にあります。

これにはいろいろな要因が影響しているようですが、一つには茶系飲料やミネラルウォーターなど、清涼飲料のバラエティが広がったこと、またコンニビエンスストアの爆発的な普及にともなって、自動販売機をメインの販売ルートとしてきた缶コーヒーの販売が影響を受けた、ともいわれています。

そして、もう一つ興味深いのはプラスチックカップに入ったコーヒー飲料「チルドカップコーヒー」などの人気が高まってきたことによる缶コーヒー市場の変化です。

チルドカップコーヒーの市場規模について、2012年時点で約700億円規模に発展しているとされます。「カフェブーム」も追い風となって、冷たいチルドカップコーヒー、そしてカフェラテなどの「シアトル系コーヒー」が缶コーヒー市場に影響したという説があるのです。近年ではコンビニエンスストアの店頭で淹れるコーヒーも人気です。

このほかにも健康志向の高まりに加え、喫煙と缶コーヒーが切り離せないため、喫煙人口の減少が缶コーヒー販売量に関係している……など諸説あるようです。
 

コモディティ化する缶コーヒー?

各社はコーヒー豆の種類や焙煎方法などで商品の差別化を図っていますが、缶コーヒーは、「コモディティ化」しているとも言われます。

「コモディティ化」とは、商品開発の効果がひと通り普及すると、各社の商品にはそれほど大きな差はなくなり、価格競争をせざるを得なくなってしまう現象を指します。パソコン部品などに見られるように、「コモディティ化」は商品経済の袋小路と言える状態です。

缶コーヒーは日本独特の商品です。
ひょっとすると、缶コーヒーは日本経済のゆくえを考えるときに、重要なサンプルとなるかもしれません。

※参考文献:小川長「缶コーヒー市場の変貌と経済戦略」、全国清涼飲料工業会による統計「清涼飲料水品目別生産推移」ほか
 

≪記事作成ライター:帰路游可比古[きろ・ゆかひこ]≫
福岡県生まれ。フリーランス編集者・ライター。専門は文字文化だが、現代美術や音楽にも関心が強い。30年ぶりにピアノの稽古を始めた。生きているうちにバッハの「シンフォニア」を弾けるようになりたい。


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