世界主要債券利回り上昇鮮明に


金融緩和政策

前回レポートで話題にしたECB(欧州中央銀行)の金融緩和政策の出口論をきっかけに、世界主要国の債券利回り上昇の動きが広がってきました。今週はECBの議事録が発表され、インフレ見通しが一段と高まれば、金融緩和のバイアスを維持するかについて見直す可能性があると記述されていました。
先月下旬のドラギECB総裁の講演の中で、デフレ圧力かリフレに変わってきているとの内容を裏づける、資産購入の縮小(テーパリング)を開始されるのではとの観測が強まります。ユーロ圏債券の指標独連邦債10年利回りは0.56%水準にまで上昇してきています。

そしてこの影響からか、他の主要国債券市場は右にならえの状態になってきました。まずはお隣英国を見ましょう。
下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は、英債券つまりギルト債10年の過去3年間の利回りの推移を示しています。現在1.31%と1ヶ月ほど前の1.00%から上昇してきています。
ECBの金融緩和が解除方向に向かう、つまり資産購入の縮小が始まることと、BOE(イングランド銀行)が利上げに近く踏み切るのではとの期待感からの相乗効果のように思います。BOEは先月開催の金融政策委員会で政策金利(Bank Rate):0.25%据え置きを決定しました。しかし委員8名のうち3名の委員が反対し、利上げを主張する委員が増えています。(これまでは全員一致の議決が多かったように思います。)
今週はマカフィーBOE委員が、もし成長が予想通りに継続した場合は、緩やかな利上げがあるだろうと発言されています。英国経済は、第1四半期GDP(国内総生産)2.0%前年比、5月消費者物価指数2.9%前年比となっています。
結論から言うと、良い経済状態と言えます。BOEのインフレ目標は2%です。これを超えるインフレ水準に現在はなっていると言えます。普通に考えれば利上げに踏み切っても良さそうです。それを阻んでいるのが、Brexit問題つまり英国のEU(欧州連合)離脱問題と言えます。英国が欧州との経済関係、金融関係まで制約を受けるとなると、相当経済には悪影響が出てくることが予想されます。エコノミストはあれこれ算出するものの、そのコストが実際にはじき出されていないと思います。
カーニーBOE総裁は、経済状態からだけで利上げには踏み切れないでしょう。Brexitの英国経済の悪影響が最小限に留まると確信してから、踏み切るのではないでしょうか。2年後に正式にBrexitとなりますが、その段階まで待てないとも言えます。利上げ主張の委員が3名いるという事実から、今年後半にも利上げに今年中に踏み切る可能性が出てくるのではと思います。
また量的緩和政策の一環である資産購入プログラム4,350億ポンドも次第に縮小する傾向を強めるものと考えられます。このような状態からギルト債売りの利回り上昇となってきています。グラフでは昨年初めの水準が2.0%であり、この水準を目指して上昇するのではと思います。

独以外のユーロ圏諸国債券では、スペイン10年債1.71%とこちらも1ヶ月前の1.48%からは上昇しています。選挙で荒れたフランスも、10年債0.92%(0.67%:1ヶ月前)と上昇しています。そして安全資産として買われる傾向のあるスイス債10年はマイナス圏から脱して0.04%となってきています。1ヶ月前には-0.18%でした。欧州の債券市場模様が把握できます。

そして債券利回り上昇の動きが日本にまで波及するかに注目されています。今月に入り、概ね日本国債10年0.08%~0.09%で取引されています。
金曜日の動きが注目されました。0.11%まで朝方上昇しましたが、日銀は指値オペ(日銀が指定する利回りで国債を購入して、市場に資金を供給する操作)を実施すると通告しました。これを知覚した債券市場は日銀の意図を察しました。昨年9月の日銀金融政策決形会合では、イールドカーブコントロールで10年国債利回りを概ねゼロ金利水準に維持する金融政策を決定しました。この方針に基づいて、0.10%以上に跳ね上がった所では指値オペを実施する方針に変化はありません。金曜日は実際指し値オペに参加した金融機関はいなかったようです。そして通常の国債購入オペを増額して、金利上昇の動きを阻止したようです。
下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は日本国債10年の過去3年間の動きを示しています。これを見ると昨年半ばからゼロ金利維持がなされていると言えます。物価水準を見ても、5月全国消費者物価指数0.4%前年比、そして生鮮食料品とガソリンなどエネルギーを除いたコアコアの数字は±0%前年比です。一向にデフレ状態から脱出することができていない日本経済と言えます。
世の中には電気代、ガス代、野菜などの高騰と物価が上昇する兆しもありますが、実際には全般的な物価は落ち着いている状態ではと言えます。一時のインバウンド需要からの中国人の爆買いが落ち着いてきており、デフレ脱却とはいかない状態と言えます。黒田日銀総裁は、就任当初、2年で2%の物価目標達成と声高に吹いていましたが、あれから4年が経過する中、まだまだ道半ばのようです。

日銀が金融緩和路線を続けるということは、グローバルな債券市場との比較で、金利差が拡大することを意味します。それは金利差拡大で海外債券に投資する本邦投資家とっては、ますます海外投資を続けることを確信するということを意味します。このため、今日の外国為替市場では、円を売ってドル、そしてその他高金利通貨を買う動きを強めていました。益々高金利通貨に対する魅力を強めています。

米国債10年2.36%と再び利回り上昇の動きとなっています。グローバルな債券利回り上昇は、一見安全資産に滞留していた資金が本格的にリスク資産、つまり株式、不動産、商品市場に移動すると解釈されています。しかしこの動きが強まると、市場金利上昇の動きとなり、逆にリスク市場に冷や水を浴びせかねません。
グローバルな株式市場は、ある程度上昇した後に、一旦調整することになります。市場は株式好調と囃しますが、慎重になる投資家も多いと思います。そしてリスク材料、例えば地政学リスク、中国経済不調などのニュースが出てくると、たちどころに市場環境が冷え込むことになります。

中リスク、中リターンのクラウド商品がやはりリスク志向の時だからこそ、ポートフォリオの一部として有用ではないかと思う所です。

«記事作成ライター:水谷文雄»
国際金融市場に精通するInvestment Banker。
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替および金利・債券市場部門で活躍、
外銀を知り尽くす国際金融のプロフェショナル。新興の外国銀行(中国信託商業銀行 )の
東京支店開設準備に参画しディーリング・ルームの開設を手掛ける。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、
スペインと日本との文化・経済交流を夢見るロマンティスト。


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