ユーロ圏のファンダメンタルズ悪化鮮明!


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欧州のユーロ圏諸国のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)がここに来て悪化してきているようです。
ユーロ圏経済成長への陰り、景況感を検証してみたいと思います。そして関連する政治的要因、ECB(欧州中央銀行)の政策、ユーロの為替動向へも検証してみたいと思います。

ユーロ圏の近況

先月発表されたGDP(域内総生産)を見ると、ユーロ圏(主要19ヵ国)で1.7%(年率)、0.2%(前期比)、ユーロ圏(28ヵ国)で1.9%(前期比)、0.3%(前期比)成長となっています。
下記グラフ(出所:ユーロ圏経済統計)は2007年以来のGDP前期比ベースの推移を示しています。赤線が19ヵ国、青線が28ヵ国の数字です。一年前には19ヵ国0.7%、28ヵ国0.6%からは大きく落ち込んできています。それを緑の矢印で示しています。
グラフでは米国の数字と比較して描かれています。米国(黒線)は1%近い伸び率であり、ユーロ圏経済の落ち込みが鮮明です。原因には様々な要因が絡んでいます。
ドイツで言えば、対ロシアでは同盟国で経済制裁を科しているから、これまでのように輸出できないことがあげられています。そして対米でもトランプ政権に代わり、これまでのように対米輸出特に自動車の輸出に制限が掛かってきたことが大きいようです。
対英国ではBrexit交渉の不透明感もあるのではと思います。第二の経済国であるフランスでは、昨年からの観光業の落ち込み、天候不順による農産物のユーロ圏域内への輸出が思うように行かなかったことが大きいのではと思われます。
第三位のイタリアでの景気の後退を意識した数字が出ているようです。最も元気であった第四位スペインでも、来年度の景気見通し2.2%(年率)と、今年の2.5%よりも景気後退を予想しています。

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イエローベスト運動の影響は?

それでは企業の購買担当者の景況感を見ましょう。毎月ユーロ圏、各国の企業購買担当者のPMI(購買担当者景気指数)が発表されます。
下記グラフ(出所:ウォールストリートジャーナル紙)は1999年から直近2018年12月までのPMI(緑線)とGDP(前期比ベース棒線)を併記したものです。
上記グラフを重複する部分があります。11月PMIは51.4であり、今年前半の58近辺から急速に落ち込んでいることが分かります。国別に見ると、独:製造業51、サービス業52.5、そして仏:製造業49.7、サービス業49.6となっています。
フランスは両部門ともに50を下回っています。最近では、政府のガソリン税引き上げに反対する黄色いベスト運動に同調した市民が週末ごとにデモを行っていることから、観光業、小売り、物流業、製造業などに悪影響を与えています。
このことから各企業の購買担当者の心理に少なからずネガティブな印象を植え付けています。棒グラフのGDPの下落とPMIの下落が同時に進行している状況に現在はあるようです。

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各国経済の政治的要因

フランス:前段でも説明しましたが、黄色いベスト運動のデモ行動の結果、マクロン大統領が大盤振る舞いをしました。
最低賃金の引き上げ、残業で得た収入の非課税などの施策で約100億ユーロの政府負担が発生する見通しです。その結果、従来の2019年度GDP比財政赤字2.8%見通しが、3.2%に悪化する見通しとなりました。
EU欧州委員会の加盟要件である3%以内に抑える財政赤字ルールに反することになります。このため、政府は景気が急速に悪化した場合には、緊急の財政出動をすることが出来なくなる場合になる可能性が出てきていると言えます。

ドイツ:メルケル首相が与党CDU(キリスト教民主同盟)党首を辞任し、腹心のクランプカレンバウアー幹事長を選出しました。2021年まで首相の任期がありますが、求心力の薄れから来年にも首相退陣となる観測があります。
移民政策などで国民の不満が溜まっており、極右政党が台頭してきて、ドイツでもトランプ現象が見られます。政権の混乱が今後予想されます。

イタリア:イタリア政治は慢性的に短期の政権が誕生しており、不安定な政権が続いています。現在のコンテ首相も5つ星運動の支持を受けた連立政権であり、ポピュリズム政党が基盤にあると言えます。
国民にお金をばらまく政策が基本であり、必然的に財政出動が膨らみます。前政権がEU委員会に公約していた財政赤字対GDP比0.8%から、現政権の予算案で2.4%に膨らむ案となりました。
EUの財政規律ルールを無視することとなり、EU委員会からは承認を取れません。2.0%まで予算案を修正することになり、やっと承認が取れることになりました。こちらの政権も機動的に景気対策に財政出動ができない制約を受けることになります。

欧州中央銀行は当面利上げせず

ECB(欧州中央銀行)の対応を見ましょう。先週定例理事会を開催し、政策金利0.00%の据え置きを決定し、また量的緩和つまり国債などの資産購入の今月末での終了を発表しました。
消費者物価指数は直近11月2.0%とECBのインフレ目標2.0%に達しています。しかし、前段に説明したように、景況感は世界的な景気落ち込み観測、そしてユーロ圏の個別要因から次第に悪化してきています。
したがってECBとしても、流動性の供給を直ぐに絞ってしまうわけには行きません。これまで積み上げた資産約4.7兆ユーロの債券が償還時期に来たら再投資する方針を明らかにしました。
下記グラフ(出所:ウォールストリートジャーナル紙)を参照ください。ECBの2028年までの資産状予想が詳しく出ています。各種資産が徐々に縮小してゆく方針であることが分かります。当面(2020年頃)は保有資産を減らさない方針のようです。
そして利上げ時期についても、来年夏ごろまでは利上げはしないとドラギECB総裁は明言されましたが、この時期が秋頃から冬の時期まで後ずれするのではないかとの観測が強まっています。

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為替の動向

ECBは来年夏頃までは利上げはしないと明言していますが、更に先延ばしする可能性が強まっています。そのために金利差からして対ドル、対円では更に金利差拡大からユーロ高になる可能性は低くなっているのではと思います。
対ユーロで言えば、ユーロ/ドルは1.10方向であり、1.15方向の可能性は少なくなってきていると予想します。ユーロ/円は、125円方向であり、130円を超える相場の可能性は少なくなっていると予想します。
ドル金利が今後急速に低下していくことを考慮する必要があるのかもしれませんが。

まとめ

ユーロ圏、そして英国を含めた欧州では、Brexitなど政治的要因、そして各国の経済的不安定要因から今後、経済成長の勢いが衰える可能性が次第に高まってきています。
金利も大きく上昇することはなく、また各国株価も大きく上昇することは期待薄ではないかと思います。リスク回避的行動をとる欧州の投資家の態度ではないかと思います。
欧州投資中心の本邦投資家は、債券投資など安全資産、そしてキャッシュの比率を高める姿勢を当面は強めるのではと思います。ここでもミドルリスク、ミドルリターンなクラウド商品がベストな投資商品と言えるのではないかと思います。

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«記事作成ライター:水谷文雄»
国際金融市場に精通するInvestment Banker。
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替および金利・債券市場部門で活躍、
外銀を知り尽くす国際金融のプロフェショナル。新興の外国銀行(中国信託商業銀行 )の
東京支店開設準備に参画しディーリング・ルームの開設を手掛ける。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、
スペインと日本との文化・経済交流を夢見るロマンティスト。


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