今年一年の世界経済を振り返る


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年の瀬も迫り、今年の金融市場、そして影響が大きかった原因、そして来年に向けた期待を記述したいと思います。

おおまかな全体像

今年前半から中頃にかけては、投資家全体は金融市場をポジティブに考えていた方がほとんどだったのではないかと推測します。世界全体の株価は上昇し、主要株価指数の米ダウ平均は10月には26,000ドル台、日経平均も24,000円台をつけていました。

今年前半を振り返ると、世界経済は順調そのものであったと市場は考えていた節があります。最大の経済圏米国は、トランプ大統領のもと、経済は順調に拡大傾向にありました。そして中央銀行であるFRB(米連邦準備理事会)は、今年4回の0.25%毎合計1%の利上げを予想、そして来年以降も複数回の利上げ予想がほとんどでした。中立金利は2.75%~3.00%との市場の概念は変化なく、拡大基調の経済、適温経済を持続させるため緩やかな金融引き締めに向かうものと考えていました。

欧州の今年一年を振り返る

欧州ではどうでしょうか?英国のEU(欧州連合)離脱つまりBrexitが一番大きな課題であると言われていました。Brexitは予想通りの展開であり、合意ありなのか合意なしなのか、現在も不透明は状況です。
英国の不安定要因はあるものの、今年前半には、英国、ユーロ圏全体の経済は大きく落ち込むことはなかったと言えます。中央銀行であるBOE(イングランド銀行)は、8月に利上げに踏み切り、政策金利を0.75%としました。Brexitの不安要因にも関わらず、英経済の力強い状態を意識していたのではと思います。
そしてユーロ圏では、ECB(欧州中央銀行)は、年を通して政策金利をゼロ金利に据え置き、そして来年夏頃までは利上げをしないという見解を示しました。資産購入プログラムでは、年初は月額300億ユーロ購入姿勢を示していましたが、年末には購入額ゼロを決定しました。つまり、経済状態は良好であり、流動性の供給は現状にとどめ、経済良好のもと、来年には金融引き締めを示すシナリオを持っているのではと市場は考えていました。

アジア圏の今年一年を振り返る

中国はどのようであったのでしょうか?中国経済は拡大基調を続けていたものの、その持続性が弱まってきたのではとの観測が強まってきました。経済成長は今年概ねGDP(国内総生産)6.5%前後で推移すると予想されていました。
そして経済が仮に縮小の展開になった場合には、政府が大規模財政出動で、インフラ投資を中心にテコ入れするのではと思われていました。不動産投資などは都市部中心に引き続き好調なようです。
しかし、株式市場については、上海総合指数は、右肩下がりの展開であり、一抹の不安定要因を提供していたようです。

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日本はどうであったのでしょうか?経済の基調は比較的強く、日本銀行は金融政策を動かすことはなかったようです。年間ベースで80兆円を目途に流動性を供給する姿勢を貫徹しました。
イールドカーブ・コントロールでは、10年債の金利をゼロ近辺から0.1%前後に柔軟性を見せる動きをしましたが、基本には変化がない状態が続きました。自然災害が多く起きたこと、来年秋予想される消費税引き上げを意識した姿勢を示したのではと思います。

米中貿易戦争の懸念

今年前半の金融市場は行け行け相場、そして10月以降に急速に失速、そして失望が強くなる金融市場に変貌することになりました。
大きな要因は良くも悪くもトランプ大統領でした。中国との貿易戦争を高らかに宣言し、中国からの輸入品に関税を課すと方針を示しました。このことが、世界経済に暗雲をもたらし、そして投資家心理を不安定にしています。
トランプ大統領は、中国がハイテクなどを中心とした「中国製造2025」の名のもと、世界の覇権を狙っているのではと考えており、これ以上の技術移転、そして中国からの輸入は増やさない、貿易赤字は増やさないとのキャンペーンを展開しました。次々と関税を課し、また中国ハイテク企業の幹部の拘束も目論みました。

またFRBも中国との貿易摩擦が徐々に米経済に悪影響を与えることになるのではと心配をし始めました。トランプ大統領の行動、そしてFRBの心配事が増幅され、その結果、米株式市場が変調を来すことになりました。
下記グラフ(出所:ウォールストリートジャーナル紙)は、過去3年の米ダウ平均の推移を示しています。去年までは順調に右肩上がりのチャート、今年前半は概ね順調な動き、そして年末にかけては大きく下げる展開となっています。チャートだけを見ると、まだ本格的な下落相場の判断を下すには時期尚早のように思います。
テクニカル的には20,000ドルを大きく下回る動きにならなければと、筆者は楽観的でもあります。経済が大きく落ち込まれなければ、つまりリーマンショックのような事象がなければ、20,000ドルを維持できるのではと思います。
 
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米経済の来年の見通し

 
FRBは景気動向に対しては慎重であるように思います。中立金利が2.75%~3.00%であると仮定し、それをシカゴの短期金利先物の価格の推移から推測します。現在は来年1回0.25%の利上げと推測される。それは来年の全ての限月で概ね2.75%の金利水準に収束していますが、中立金利の下限水準と一致しています。
そして2020、21年はやや金利低下の動き、そして2022年にやっとやや金利上昇の動きになっています。このことから、筆者はFRBについて来年1回の利上げ予想、そしてその後様子見を決め込む姿勢ではないかと推測します。
サブプライムローンのようなリーマンショックの原因となる要因が出てこなければ、米経済は大きな落ち込みが見られることはないのではと思います。

トランプ大統領にしても、政治・経済の中国の覇権は許さないという一線は譲らないと思います。しかし経済混乱に陥っては自身が目指す大統領再選の芽は出てきません。ウォール街を敵に回すわけにはゆかないでしょう。結局のところ、ウォール街が上昇に向かう経済運営、つまり財政政策、税制を続けざるを得ないのではと推測します。

中国も大きな落ち込みは回避するか

中国経済は、米中貿易戦争の経済への悪影響はあると思いますが、そこは中国共産党政権が、インフラ投資などで景気テコ入れをするのではと思います。リーマンショック時も中国は強力な財政出動に動いたという歴史があり、準統制経済が活きてくるのではと思います。
GDPも来年6.2%成長予想が出ていますが、それでも6.2%です。まだまだ内陸部などに経済成長余力を大きく感じる中国です。そして一帯一路の欧州までのインフラ整備で、ユーラシア大陸全体の経済成長余力に大きな期待感を習近平主席は描いているのかもしれません。中国経済の大きな落ち込みは来年も予想されません。

最後に

欧州、日本は概ね米中経済に追随する経済状態になるのではと思います。米中が風邪を引けば、欧州、日本が肺炎を引き起こす。米中大きく落ち込む経済状態にならないとの前提に基づけば、日本とそして海外金融市場も大きく落ち込むことはないとポジティブに考えたいところです。

皆様良い年をお迎えください。来年が良い年であるように祈っています。

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«記事作成ライター:水谷文雄»
国際金融市場に精通するInvestment Banker。
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替および金利・債券市場部門で活躍、
外銀を知り尽くす国際金融のプロフェショナル。新興の外国銀行(中国信託商業銀行 )の
東京支店開設準備に参画しディーリング・ルームの開設を手掛ける。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、
スペインと日本との文化・経済交流を夢見るロマンティスト。


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