AIがもたらす“家電変革”とは?「三種の神器」から始まり、新たな進化を遂げる家電


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現代の暮らしにおいて、電化製品を使わない日はないといえるでしょう。家庭用の電化製品、いわゆる家電を例にとると、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、エアコン、テレビ、電子レンジなどは年齢に関係なく、そして一人暮らしや大人数などの家族構成にかかわらず、生活の必需品となっています。
それほど私たちの生活にとけこんだ家電だからこそ、利便性を問われ、価格競争に挑み、各家庭の生活スタイルや個人の嗜好を追求して、進化し続けてきました。さらに昨今、省エネまでをも考慮した研究・開発に挑み続けてきた家電メーカーから次々と新製品が発表されていますが、今後の家電のキーポイントとなるのは近年飛躍的に発達した「AI」でしょう。便利で快適な暮らしを求め、家電はどこまで進んでいくのでしょうか。

家電が日本社会を変え、主婦の生活を変えた時代

1950年代、テレビ放送の開始と同時にもてはやされた家電といえば、白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫の『三種の神器』でした。初めて松下電器産業(現パナソニック)が売り出したテレビは、当時の価格で29万円と庶民には手が届かない代物でしたが、テレビへの需要と人気は高まるばかり。戦時中、家電は“ぜいたく品”としてほぼ生産中止になったものの、戦後はその反動も手伝い、メーカー各社はしのぎを削って技術を磨きます。その結果、家電人気に目をつけたメーカーが乱立し、粗悪な製品を生み出すこともありましたが、支持されたのは品質がよいものでした。良品を生産するメーカーが生き残り、ついにテレビは10万円を切る価格を実現。質とともに価格が安定していったことと、なによりもその便利さから、テレビを筆頭に家電はまたたく間に家庭に普及していったのです。

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『おばあさんは川へ洗濯に……』の昔話と変わらず、洗濯板を使って手作業で洗濯をしていた主婦たちは洗濯機の出現にどれだけ喜び、どれだけ助けられたことでしょう。洗濯機のおかげで、手にアカギレができることも少なくなりました。冷蔵庫があれば食材を保管できますから、毎日買い物に行かなくても済み、時間的余裕が生まれます。電気炊飯器はスイッチひとつで、炊き立てのごはんが食べられる便利さと気楽さを提供。焦げつく心配をなくしたうえ、火加減を調整する手間がかからないのは、本当にありがたいことでした。家庭の主婦はまさしく、家事の手間やそれに費やす時間から解放され、自分の時間を持てる余裕や自由さを感じたに違いありません。

とどまるところをしらない家電の開発

1964年の東京オリンピック開催を機に、テレビはカラーの時代へと突入。カラーテレビはお茶の間を席巻し、1家に1台が当たり前になっていきます。カラーテレビ(Color television)、自家用車(Car)、クーラー(Cooler)とあわせて『新・三種の神器(3C)』と呼ばれるように。当時は、現在のようなエアコンではなく冷却機能があるだけのクーラーで、クーラーが搭載された電車やバスはまだ珍しい時代。生活の豊かさが問われ、その意識に応えるかのように、家電製品の開発が加速化していったのも当然といえるでしょう。

やがて、家電がひと通り家庭に配置されると、メーカーはその機能性の高さを競いあい、デザインやコンセプトに力を入れていきます。家電に求められるのは利便性に加えて専門性であり、趣味を楽しみ美しくなるための家電など、個人の好みや嗜好を踏まえてさまざまな工夫がされていきました。
デジタルカメラは写真の楽しみをより身近なものにし、専門性が強かった写真への意識を180度変えることになります。薄型テレビやDVDレコーダー、そしてブルーレイレコーダーなどは映像の世界を大きく広げ、魅了される人を増やしていきました。便利さから始まった家電の進化はとどまるところを知らず、無限に広がっていったのです。

全自動洗濯乾燥機の登場は、洗った洗濯物をそのまま乾かしてしまうという画期的な発想で、さらに家事に時短をもたらします。ビデオカメラで孫や子どもの運動会を録画してテレビで楽しむことは世間では当たり前となり、やがてそのサイズはどんどん小さく、コンパクトに。外出している間に部屋を掃除してくれる全自動掃除機は、共働き世帯の味方として圧倒的な支持を得、全自動掃除機の新しい市場を開拓するほどになっています。

AIを活用した、次の家電とは

そして、世の中をまるで違うものに変えたといっても過言ではないのがインターネット、パソコン、携帯電話です。これらIT(information technology)の登場は、世界中の時差や距離をなくし、いつでもどこでもさまざまな情報を瞬時に把握できるようになっていきました。やがてITは家電にも大きな影響をもたらします。機能やデザインの開発が加速していくだけではなく、IT技術を駆使した製品が生み出され、家電はさらなる発展を遂げていくのです。

IT技術を導入した家電の開発に、さらなる可能性を与えたのはAI(Artificial Intelligence:人口知能)です。
例えば、シャープの「ヘルシオホットクック」は、AIを搭載した「水なし自動調理鍋」。食材に含まれる水分を活用して調理する電気調理鍋ですが、かきまぜる必要もなく、すべて自動コントロール。朝、食材をセットしていけば、帰宅したときにはアツアツのメニューができあがっているのだとか。2015年に業界初の電気無水鍋として販売され、2017年モデルからAIが搭載されました。AIがメニュー検索を音声で案内するほか、各家庭での利用履歴や好みを学習して、オススメメニューを提案してくれます。価格帯は6万円弱と鍋としては決して安くはありませんが、共働き世帯や毎日の献立に悩む主婦にはなんともありがたい機能かもしれません。

来春、185万円で販売予定。「全自動衣類折りたたみ機」も!

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「食」にまつわる便利の次は、「衣」です。
洗濯物を取り込んでからたたんで、引き出しにしまうのが面倒……という人にとって、画期的な製品が開発されています。その名は「ランドロイド」。洗濯して乾かした衣類を箱の中に投入すると、ロボットアームがすべての衣類をきれいにたたみ、棚に並べてくれるという“全自動衣類折りたたみ機”です。
開発したのはパナソニックなどが出資するベンチャー企業のセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ。AIが衣類の特徴を画像解析で識別、データベースに蓄積された知識で最適なたたみ方を判断し、実行してくれるのだそう。男物の大きなチノパンツ、小さな子どものTシャツ、女性のブラウス、タオルなど、あらかじめ設定しておけばアイテムごとや持ち主ごとに仕分ける機能があり、使うほどにAIが学習し進化していくといいます。来春、185万円での販売を予定しているようですが、どの程度の需要があるのか、注目したいところです。

これらの家電はIoT(Internet of Thingsの略)と言われ、“モノのインターネット”と訳されます。家電に通信機能を持たせてインターネットに接続することで、自動認識、自動制御、遠隔操作などを行います。スマートフォンにアプリをダウンロードし、帰宅途中にスイッチを入れたり、作動時間を調整したりすることなどが可能で、暮らしを便利に快適に変えるとして期待されています。

相次ぐメーカーの撤退で今後の家電はどうなる?

戦後、アメリカを手本に開発され、日本流の工夫と技術で成長してきた家電製品。冷蔵庫や洗濯機、炊飯器などは“白物”、テレビやステレオなどのオーディオ関係は“黒物”として、さまざまな家電を手がける総合家電メーカーが増えていきました。
家電量販店では新機種を試したり、メーカーごとに機能をチェックしたりすることができるのが魅力ですが、その家電はもはや開発から生産までを海外に任せている例も少なくありません。1980年代には円高の影響を受け、1990年代にはバブル経済が崩壊。人件費の高騰や海外勢の進出により、すべての家電を自社生産する総合家電メーカーは徐々に撤退を迫られます。

白物家電を中国に売却した東芝をはじめ、三洋電機はパナソニックの子会社になり、シャープは現在、台湾企業の傘下にあります。日立製作所、三菱電機は自主生産を取りやめた製品もあり、幅広く家電を手がける総合家電メーカーは今やパナソニックだけとなりました。そのパナソニックは今年2018年で創業100年を迎えます。

消費者のニーズの多様化により、事業の縮小や撤退を余儀なくされている家電メーカーですが、家電以外での成長が期待されています。
朝起きて、まずあいさつをするのはAI。AIに声をかけるとカーテンが開き、照明が点灯、テレビのスイッチが入る。コーヒーを沸かしてくれる間、今日の天気予報やニュースを知らせてもらう。出かけている間に洗濯・掃除を済ませ、帰宅した時には出来上がったばかりのアツアツの食事にありつける……。
そんな未来はすぐそこまできています。家電はクラウドやAI、そしてIoTとともに、住宅事業や自動車産業などと結びついたモノづくりとして、ますます新たな進化を遂げていくことになるでしょう。

参考:朝日新聞

≪記事作成ライター:山本義彦≫
東京在住。航空会社を定年退職後、介護福祉士の資格を取得。現在は社会福祉法人にて障がい者支援の仕事に携わる。28年に及ぶクラシック音楽の評論活動に加え、近年は社会問題に関する執筆も行う。


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