トヨタが次世代都市「スマートシティ」建設を発表! 富士山のふもとに2021年着工


トヨタ自動車の豊田章男社長は今年1月6日(日本時間7日)、世界最大の国際技術見本市「CS」のプレカンファレンス(米・ラスベガス開催)で、人とあらゆるモノがインターネットでつながる実証都市「コネクティッド・シティ」を富士山麓の工場跡地(静岡県裾野市)に建設すると発表した。

コネクティッド・シティ(つながる街)は、いわばトヨタブランドのスマートシティで、2021年の初頭に着工。自動運転をはじめとする次世代技術の実験場とここを位置づけ、実際の街づくりを通して新開発の技術やサービスの具現化を目指す。整備が進めば、5年以内に人が住んで生活を始めるという。

自動車メーカーがゼロから街をつくる異例の取り組みとして、早くも世界中から注目を集めるトヨタのコネクティッド・シティ構想。日本のモノづくりを支える巨大企業が挑む、壮大なプロジェクトのロードマップに迫る。

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※記事中の画像はスマートシティやプロジェクトのイメージです

人が生活する環境で自動運転やAIなどの先端技術を検証

人々の暮らしを支えるあらゆるモノ・サービスが情報でつながる時代を見据え、2021年から本格始動するトヨタのコネクティッド・シティ・プロジェクト。自動運転やスマートホーム、AI(人工知能)などの先端技術を導入する実証都市を新たにつくり、人が生活するリアルな環境で技術検証を進めることで、次世代型のサービスや商品開発のスピードを速める狙いだ。

この都市は、2020年末に閉鎖予定のトヨタ自動車東日本・東富士工場の跡地を利用して、2021年はじめから建設が始まり、将来的には約70万平方メートル(東京ドーム約15個分)の敷地に住宅や道路、広場などを整備した「街」が形成される。完成時期は未定だが、5年以内にはトヨタの従業員やプロジェクト関係者など、約2000人の「住民」が暮らすことを想定。さらに、街づくりを進めていく上で、世界中の企業や研究者・技術者らにも門戸を開き、独自のプロジェクト実証の活用や共同開発を含めて参画を募るという。

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道路が網目に織りなす「ウーブン・シティ」の構想

この街の愛称は、英語で“編まれた街”を意味する「ウーブン・シティ(Woven City) 」。街の中を網の目のように道路が織りなすイメージから命名された。住む人・クルマ・道路・建物などが情報でつながることで、人々が安全・快適に暮らせるサスティナブル(持続可能)な環境を街全体で生み出していく──それがウーブン・シティの目指す姿だ。
では、その街づくりの構想について詳しく見ていこう。

【ウーブン・シティの街づくり構想】
■街の道路は「高速・自動運転車両専用」「低速車両と歩行者の共用」「歩行者専用」の3種類を整備。トヨタが開発を進める自動運転の電気自動車「イー・パレット(e-Palette)※1」が、人の輸送やモノの配達を担うほか、移動店舗やイベントなどの用途にも活用される。

■街の建物には、環境負荷の少ないカーボンニュートラルな木材を主に使用し、屋根には太陽光発電パネルを設置。また、電力供給にはトヨタが力を入れる燃料電池発電技術も使って検証する。

■生活に必要な街のインフラ・ネットワーク設備は、すべて地下に設置する。

■街の住民は室内用ロボットなどの新技術を検証するほか、スマートホームのセンサーやAIにより、自動で健康状態をチェックしたり、冷蔵庫に食材を補充したりできる。

■街の各ブロックに人々の集いの場となる公園・広場を設け、住民同士のリアルなつながりやコミュニティの形成も目指す。

(※1)トヨタの自動運転電気自動車「イー・パレット」の詳しい情報はこちらの記事を参照。

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デンマーク出身の著名建築家が都市設計を担当

こうしたウーブン・シティの都市設計は、デンマーク出身の建築家ビャルケ・インゲルス氏が担当。氏がCEOを務める「ビャルケ・インゲルス・グループ」は、ニューヨークの新たな第2ワールドトレードセンターや米Google本社の新社屋など、これまで数多くの著名なプロジェクトを手がけたことでも知られる。

今回、豊田社長とともに「CES」の発表会に臨んだインゲルス氏は、「コネクティッド・自動運転・シェアリングのモビリティサービスは、現代の新しい暮らしの可能性を広げるだろう。今回のプロジェクトは、トヨタのエコシステムによって幅広いテクノロジーや業界と協業し、未来の新しい都市のあり方を模索するユニークな機会だと考えている」とコメント。

同じく、豊田社長も壇上で「私たちのプロジェクトは、ゼロから街をつくり上げる非常にユニークな取り組みとなる。ウーブン・シティでは、将来の暮らしをより良くしたい方、このユニークなチャンスを研究に活用したい方、そして、私たちと一緒にモビリティサービスを追求していきたい方……すべての皆さんの参画を歓迎する!」と力を込めて強調した。

スマートシティ開発の課題を示すトロント市の事例

ちなみに、自動運転やつながる技術を活用したスマートシティ構想は、米Googleのグループ会社が計画を進めるカナダ・トロント市のプロジェクト例がある。
これはトロント南東部のウォーターフロントエリアを再開発し、およそ800エーカー(東京ドーム約69個分)におよぶ次世代都市を構築するビッグプロジェクトだ。交差点には自動運転走行を円滑にするセンサーが設置され、街のあらゆる場所で収集したデータは、住民の安全・快適な生活をサポートするサービスに生かされるという。

しかし、2017年にプロジェクトの計画が発表されると、同社が収集するデータやプライバシーの取り扱いを懸念する意見が、地域の団体や一般市民から続出。周辺住民からは「実験室のモルモットになってしまう」「テック企業が支配するディストピア(暗黒郷)が形づくられようとしている」といった反対の声が次々と上がり、結局、プロジェクトを支援していた米政府とトロント市は2019年秋に計画を大幅に縮小する判断を下した。
こうして、巨大テック企業が描くトロントのスマートシティ構想は、住民の反対運動という思わぬ展開で暗礁に乗り上げてしまったのだ。

スマートシティの多様な可能性を示す「つながる街」

一方で、トヨタのコネクティッド・シティ構想は、こうしたスマートシティ開発における課題を解決する可能性を示している。
そもそもトヨタが計画を進めるのは、富士山麓に広がる工場跡地で、地元の自治体や周辺住民との問題が発生しにくい環境にある。そして、この街で新たに生活を始める人たちも、先端技術の検証・開発に参画するという目的と使命感をもって移り住んでくる。当然ながら、自分たちが実験台になることは、十分承知(むしろ歓迎)しているはずだ。

今回のトヨタの発表を受けて、地元の裾野市長・高村謙二氏も「裾野市のみならず、静岡県、そして日本全体に弾みをつける本プロジェクトとともに、新しい街づくりを進めていきたい」と歓迎するコメントを発表した。豊田社長も「世界中から有力な企業や優秀な人材が集まる拠点にしたい」と話しており、そうなれば地元地域の活性化だけでなく、世界のトップ企業やさまざまな分野のスペシャリストが日本にやってくる好機にもなるだろう。

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──日本最大の自動車メーカーがつくる「つながる都市」は、街の人・モノ・サービスだけでなく、日本と世界をつなげる新たな中核地になる可能性を秘めている。今後、この街がどのような成長を遂げ、人々をワクワクさせるような新技術とサービスを世界に発信していくのか、大きな期待をもって見守っていきたい。クルマ好きな筆者としては、ちょっと住んでみたい気もするが……果たして皆さんはどうだろう。

※参考/トヨタHP、日本経済新聞、朝日新聞

≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫  
20年以上にわたり、企業・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌・各種サイトなどの記事を執筆。長年の取材・ライティング経験から、金融・教育・社会経済・医療介護・グルメ・カルチャー・ファッション関連まで、幅広くオールマイティに対応。 好きな言葉は「ありがとう」。


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