ブランド米の競争激化! “食味ランキング”の影響力はいかほど?


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コメは日本人の主食。毎日の生活になくてはならない存在だ。が、ここ数年、そのコメの世界に大きな地殻変動が起きている。

最近、スーパーなどでは見慣れないブランドの米が多く並ぶようになっている。有名な「コシヒカリ」や「ササニシキ」以外に、新ブランドがどんどん誕生しているのだ。
国内のコメの消費量は減少しているのに、ブランド米が増えている背景にはどのような事情があるのだろうか。

高値で勝負に出る新ブランド米が続々誕生

毎日食べているコメだが、自分が食べているコメの名前や産地を正確に知っている人は意外に少ないかもしれない。コメの袋には必ず「○○産コシヒカリ」「△△産あきたこまち」などと、産地とブランド名が書かれている。これは「産地品種銘柄」として農林水産省が認めているもの。これがブランド米だ。

2018年産の産地品種銘柄は、実に795銘柄。これは前年から42増えており、増加数は過去10年間で最多だ。また、10年前から銘柄数は5割増えている。

これはなぜか。
近年はすし用、コンビニ弁当用といった特定の用途のために開発した銘柄も増えているが、やはり一般家庭向けのブランド米の競争が激しくなっているからだ。
新潟県は、代表的な銘柄である「コシヒカリ」と並ぶ新ブランド米として、2017年「新之助」を発売。粒が大きく、甘みとこくがあるとして、5キロ3780円の価格を設定した。岩手県は柔らかい口当たりと甘みの「金色(こんじき)の風」を5キロ3780円で、福井県も、つやがあって粘りが特長の「いちほまれ」を5キロ3520円で売り出した。
一般的なコメは5キロ2000円前後だから、どれも強気の価格設定といえるだろう。
これらがすぐに一般家庭の食卓に普及するとは考えにくいが、富裕層の一部にはすでに浸透し始めている。味と健康に敏感な富裕層から火が付けば、大ヒット米となることも十分にあり得る話なのだ。

地球温暖化で、ブランド米が増加!?

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ブランド米が増えているのは、一般消費者の嗜好が分散してきていることが大きい。誰もが自分好みの美味しいご飯を食べたいと思っているのだ。一方、生産者にとってはコメが高く売れることは大きなモチベーションとなる。同じ手間で高く売れるコメが作れるのであれば、新ブランドに挑戦しようという農家も増えてくるだろう。

しかし、それ以外にも大きな要因がある。気象環境の変化、つまり地球の温暖化だ。
品種改良によってコシヒカリが誕生したのは1956年のこと。美味しいことに加え、寒い地方でも収穫できることで東日本の広い地域で栽培されてきた。これまでは「寒さに強い」ことが品種改良で重視されてきたポイントだった。

しかし、近年は地球温暖化によって「暑さに強い」ことが求められている。
気象庁によれば、2016年の日本の平均気温は1981~1990年の平均気温に比べて0.9度も高くなっている。急速に温暖化が進んでいることが分かる。

これにより、水稲の品質低下が、西日本を中心に発生するようになっている。この異常な温暖化の影響で、これまで涼しすぎて稲作に向かないとされてきた北海道が、今後の稲作の中心地になってくるのではないかと予想する専門家もいる。近年は品種改良が進み、北海道産のコメのヒットブランドが誕生するようになっているのだ。

温暖化の進行によりコメの品種開発が進み、作付けられる品種数は2010年に13だったものが2016年には27に増えている。多くは高温環境でも栽培しやすい品種だ。そしてこの高温耐性品種は、2016年に全国9万1400ヘクタールに作付けされ、10年前と比べて2.4倍になっている。

2018年に本格デビューした富山県の新ブランド米「富富富(ふふふ)」は、高温に強く、病気もしにくい。うま味と粘り、甘みが強いことが食味の特徴だ。高知県の「よさ恋美人」も高温に強く、甘みと香りの良さが特徴だ。

今後、このように高温下でも栽培でき、美味しいコメが多くデビューしていくことになるだろう。

コメの評価に影響大の食味ランキングとは

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さて、多くのブランド米の生産者たちが気にしているものが、財団法人日本穀物検定協会が実施している「コメの食味ランキング」だ。例年11月から検査を始め、2月に結果を発表している。

検査は、協会が選抜した「エキスパートパネル」と呼ぶ評価員たちが実際にサンプルのコメを食べ、「外観」「香り」「味」「粘り」「硬さ」「総合評価」の6つで評価する。

基準米となるコシヒカリのブレンドと食べ比べ、「0」を中心にプラスマイナスがそれぞれ3段階ある全7段階で表し、「特A」「A」「A’」「B」「B’」の5段階のランキングをつける。機械で測って数値化するのではなく、エキスパートパネルの味覚が頼りの検査だ。

2018年の食味ランキングで、新潟県魚沼産のコシヒカリが28年間守り続けた「特A」から「A」に転落。原因は天候不良によるものとの見立てだったが、関係者はもちろんのこと、全国のコメ農家に衝撃が走った。

2019年は「特A」に復活してその実力のほどを見せたが、他のブランド米も品質を上げているだけに、「魚沼産コシヒカリ」というだけで売れる時代は終わったとも判断できる。

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2019年の食味ランキングで「特A」になったブランド米を見ると、四国や九州など、温暖な地で生産されたものも多く入っている。暑さに強い新品種が、どんどんその食味や品質を上げていることの証拠だろう。

── 地球の温暖化、ユーザーの好みの広がりなどを背景に、群雄割拠の時代に突入しているブランド米。大きな転換点にあるブランド米事情を知ると、スーパーに行った際にお米コーナーを見る目も違ってくるだろう。

≪記事作成ライター:三浦靖史≫ 
フリーライター・編集者。プロゴルフツアー、高校野球などのスポーツをはじめ、医療・健康、歴史、観光、時事問題など、幅広いジャンルで取材・執筆活動を展開。好物はジャズ、ウクレレ、落語、自転車。


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