買い物などでたまったポイントを、投資にまわすサービスが広がっている。新規顧客が欲しい証券会社と、カードのさらなる普及をめざすカード会社、その思惑が合致しての急展開だ。
そうした流れの中、3月20日に「Ponta(ポンタ)」のポイントを使った4月からの株式投資運用サービスの開始が発表され、注目を集めている。2019年2月末時点でPontaの会員数は8998万人にのぼるとされている。これは大きなシェアだ。そこで、ポイントで投資とはどんなものなのか……、競合他社はどんな動きを見せているのか……、さっそく調べてみた。
投資初心者の心を揺さぶる? Pontaポイントの株式投資
政府によるキャッシュレス化推進の施策や、今秋に予定されている消費税アップもあって、自社カードの普及をもくろむ顧客の取り込み合戦は熾烈を極めている。
大方の消費者の財布には、何種類かのカードがたまっているのではないだろうか。カードはリピーター顧客の証でもあるので、業者が取り込みをめざすのは当然だ。そのため、大手クレジット会社はもとより、百貨店やスーパーなどの流通系カード、コンビニエンス系のカードなど、数え上げればきりがない。
そしてほとんどのカードにサービスとしてついてくるポイント還元は、付加価値の代表といえる。
そうした消費者の奪い合い合戦のさなか、共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営するロイヤルマーケティングと、株価連動型ポイント運用サービス提供のストックポイント社が業務提携を発表。8990万人(2019年2月末時点)のPonta会員を対象に、企業の株式銘柄にポイントで投資・運用ができるサービス「Pontaポイント運用」のスタートだ。
しくみはとても簡単(Pontaポイント株式運用のイメージ図参照)。
ローソンや街の商店の買い物などでたまったPontaのポイントを最小20ポイントから株式銘柄に投資することができる。選んだ銘柄の株価が変動するたびに、それに応じてポイントの価値も刻一刻変動し、増えたり減ったりすることになる。口座開設の必要はなく、Pontaの会員ならだれでも利用できる。投資先の銘柄をあらためて再検討したり、あるいは株式への運用をやめたいと思えば、「未使用ポイント」に移して、投資していない状態に一時退避することも可能。
証券口座も現金も不要。学生もできる投資体験
これまで株式投資に興味はあったもののなかなか実行には移せなかったビギナーでも、比較的リスクが少なく、安心して投資・運用を体験することができる。とりあえず、サービス開始の投資先として、Pontaの提携社を中心に9銘柄が予定されている。
投資したポイントや未運用ポイントは、20ポイント単位でPontaポイントに戻すことができるので、うまくいけば投資の運用で増えたポイントを使って、あらためて買い物をすることができる。
ただし、運用ポイントを戻す際には5%の手数料が発生する。また、6月1日以降には銘柄ポイントへの運用手数料も発生する予定なので、その点も注意しておきたい。
3月20日に、2社は合同記者発表を開催。
ストックポイントの代表取締役の土屋清美氏は「今回のPontaポイント運用は、業界でも初となる画期的な試みで、このサービスを利用することは、少額の株式を持つのと同じ体験ができる」とし、資産がなくても気軽に株の運用ができ、それを通じて株式投資の魅力を実感してほしいと語っている。
また、ロイヤルマーケティング金融サービス開発部の佐藤智仁氏も「証券口座、現金不要で、学生さんでも利用できる投資体験。ユーザーと企業をつなぐ架け橋になる新しいサービス」と、胸を張っている。本格稼働は4月中旬から。消費者がどんな反応を示すのか楽しみだ。
Tポイントカード、ANAマイレージでも投資が可能
広い意味でのポイント投資は、Pontaの独占ではない。ほかのカード会社でも証券会社などと組んで、徐々にポイントを使った投資サービスを始める動きが出ている。
●Tポイントカード
レンタルショップのTSUTAYAや、ファミリーマートでおなじみのTポイントカードを主宰するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)では、SBI証券と組んで金融事業を展開する新会社「SBIネオモバイル証券」を設立。買い物などで溜まったTポイントを利用して金融商品が購入できる「Tポイント投資」を始めている。若年層をターゲットに、スマートフォンだけで完結できる金融サービスを提供する予定だという。
●ANAマイレージ
航空会社ANAグループでは、マイルで資産形成を行う「マイル投資サービス」を開始した。これは、アプリによる投資サービスで有名なTORANOTEC社と業務提携したもの。同社のアプリ「おつり投資サービストラノコ」のサイト上で、ANAを利用して溜まったマイレージを、投資など資産運用にまわせる。ひと月につき1000マイルまでの投資が可能とのことで、航空券購入とまではいかないが、そこそこたまっているマイルを投資に回して、コツコツ資産運用に充てることができる。こちらも若い人向けの新しいポイントサービスの一環ということだ。
●楽天ポイント
楽天の買い物でたまったポイントも、投資にまわすことができる。主に楽天証券を使っての投資信託で、100ポイントから投資が可能。また、現金と併用しながら、少しずつ積み立て投資することもできる。投資信託の保有額が50万円以上になると、ここでもポイントがさらに加算される。
●dポイント
NTTドコモの携帯電話ユーザー向けポイントサービス。手元にたまったⅾポイントを、投資にまわすことができる。最大100ポイントから可能。ロボアドバイザー「THEO」と連携しており、投資すればTHEOが運用する投資信託の基準価格の変動に合わせてポイントが増減する。
── 以上のように、大手のカード会社を中心に、ポイントをいかに有効活用してユーザーサービスにつなげるか知恵を絞っており、株式や投資信託への運用は魅力的な付加価値戦略のひとつと考えられている。
まもなく迎えるキャッシュレス時代にどう生き残っていくのか、各社とも顧客の囲い込みに正念場を迎えているといっていい。
≪記事作成ライター:小松一彦≫
東京在住。長年出版社で雑誌、書籍の編集・原稿執筆を手掛け、昨春退職。現在はフリーとして、さまざまなジャンルの出版プロでユースを手掛けている。
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