世界35億人がターゲット──いま注目の成長市場「フェムテック」とは?


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みなさんは「フェムテック(Femtech)」という言葉を聞いたことがありますか?

これは「女性(Female/フィメール)」と「技術(Technology/テクノロジー)」を組み合わせた造語で、生理や妊娠、避妊やセクシャルウェルネスなど、女性の生活・健康をテクノロジーで支援するサービス分野のことを指します。

女性の社会進出が加速する近年、女性特有の課題を解決するフェムテックは社会的にも注目されており、欧米を中心にスタートアップの市場参入や投資の動きが活発化。海外市場の拡大と人気の高まりを受け、そのムーブメントは日本にも広まり始めているようです。
そこで今回は、海外のフェムテック企業が手がける新発想の商品・サービスを紹介しながら、急成長する市場の背景にフォーカス。女性のみなさんはもちろん、パートナーの男性も要チェックです!

起業・投資の活発化を受けて市場規模は5億ドルに

フェムテックという言葉は、2013年に月経アプリを開発したドイツのスタートアップ「クルー(Clue)」CEOのアイダ・ティン氏(スウェーデン人女性)が、新たなビジネスカテゴリーを示す造語として使ったのが始まりといわれています。

これをきっかけにフェムテックは、女性と密接にかかわるヘルスケアビジネスとして急速に広まり、欧米ではクルーをはじめとする生理日管理アプリのほか、不妊・避妊対策アプリ、新タイプの生理用品、妊産婦・育児サポートケア、産後・閉経後のヘルスケア、セクシャルウェルネス……など、多種多様なジャンルのサービス・商品が登場しています。

米国の大手調査会社「CBインサイツ」によると、2018年にフェムテック関連の新興企業へ投資された金額は約5億ドル(約550億円)で、市場黎明期の2014年(約2400万ドル/約26億円)から20倍以上に拡大。サービスを利用する女性ユーザーのみならず、企業や投資家も熱い視線を送るフェムテック市場は、今後も右肩上がりで成長し、2025年までに500億ドル規模(約5兆円)に達すると予測されています。

一気にブレイクした「見過ごされていた市場」

ある意味でフェムテックは「見過ごされていた市場」だったのかもしれません。これまでも女性をターゲットにしたヘルスケア市場は相当規模で存在していましたが、妊娠や生理、セックスといったパーソナルな悩みに対して、日常レベルで応える画期的なソリューションはほとんどありませんでした。多くの女性が日常的に抱える問題でありながら、それを表沙汰にするのが避けられてきた社会背景もあり、ビジネスとして解決していくという視点がなかったからでしょう。

そうした中、女性特有の問題をテクノロジーとビジネスで解決しようと起業する女性(あるいは男性も)が次々と名乗りを上げ、それを応援する投資家も増えてきたことで、フェムテックは女性待望のマーケットとして一気にブレイク。社会の第一線で活躍する女性が増え、セクハラ問題に声を上げる「# Me Too」運動(※)なども追い風となり、そのムーブメントは年々盛り上がりを増しています。

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※「# Me Too(ミートゥー)」……セクハラなどの被害を告白・共有する際に使用されるSNSのハッシュタグ。2017年10月、ハリウッドの映画プロデューサーによる女優へのセクハラ疑惑が報じられたことを受け、女優のアリッサ・ミラノが同様の被害を受けたことのある女性たちに「Me Too(私も)」と声を上げるよう、ツイッターで呼びかけたことが発端とされる。

新発想から生まれたフェムテックの人気商品・サービス

フェムテックサービスを手がける企業に共通するのは、「生理や妊娠にまつわることは恥ずかしくない、我慢しなくていい」「女性の自己決定権を尊重しよう」というコンセプトです。その一例として、欧米のフェムテック企業が開発した人気商品やサービスをいくつかご紹介しましょう。

■生理日管理アプリ/クルー(Clue)
先述した「クルー」のティン氏が多くの女性とカウンセリングを重ね、データを蓄積して開発した生理サイクル予測アプリ。次の生理日や排卵日、妊娠しやすい日、気分や体調が不安定になるPMS(月経前症候群)を予測。ピンクなどガーリーなイメージの色使いを避け、スタイリッシュなレイアウトにもこだわっています。現在、日本語も含め15ヵ国語に対応し、ユーザー数は世界で約500万人。

■下着型の生理用アイテム/シンクス(thinx)
ニューヨーク発の下着メーカー「シンクス」は、ナプキンやタンポンなどの生理用品がいらない「履くだけ」の生理用ショーツを開発。同社が特許を取得したマイクロファイバー素材の4層構造で、1日着用した後は洗うだけでOK。生理中のわずらわしさを解消する画期的なアイテムとして、アメリカのマーケットで人気を博しています。

■ウェアラブル自動搾乳機/ウィロー(Willow)
米国のベンチャー「ウィロー」が開発した、仕事や家事をしながらでも母乳の搾乳ができるハンズフリーのウェアラブルデバイス。袋をセットしたカップ型の本体をブラジャーの中に入れ、ボタンを押すだけで搾乳を開始し、袋がいっぱいになると自動でストップ。スマートフォンと接続すれば、専用のアプリが搾乳量や搾乳時刻、搾乳の所要時間を記録してくれます。

■尿もれ解消サポートデバイス/カリン(Carin)
オランダのベンチャーグループが開発した「カリン」は、超小型のウェアラブルセンサー・ショーツ・管理アプリ・エクササイズアプリの4点セットで尿もれ解消をサポート。センサーをスマホやタブレットと同期させてショーツ内に装着し、尿もれの量や動作などの情報を端末でモニタリング。さらに、出産や閉経後の尿もれ改善に役立つ骨盤底筋のセルフエクササイズを行い、2週間サイクルで改善度がチェックできる仕組みです。

日本にも波及するフェムテックのムーブメント

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ここ最近は日本国内でも、フェムテックビジネスを立ち上げて新商品の開発に取り組む女性起業家や、SNSなどでフェムテックの普及を支援する団体が増えており、ユーザーサイドの女性の間でも待望のマーケットとして注目され始めています。

今年(2019年)2月には、東京都内でフェムテックの起業を支援するイベントが開催され、新たなビジネスチャンスを狙う起業家・投資家を中心に80名近くが参加。主催者である「ビタミン株式会社」CEOの高松裕美氏は、「フェムテックは社会への貢献度が高いビジネス分野。2019年が日本でのフェムテック元年だったとなるように、今年のエンジェル投資・事業立ち上げのサポートはフェムテックに注力し、イベント開催や登壇活動を続けていきたい」とコメントしています。

計り知れないポテンシャルを秘めた巨大マーケット

こうして日本にもジワジワと浸透しつつあるフェムテックですが、世界全体から見るとニッチな市場という認識がいまだに強く、国によっては文化的・社会的な背景から、女性特有のヘルスケアをタブー視する風潮があるのも事実です。

しかし、世界の男女の人口比率はほぼ半分。つまり、フェムテックのターゲットは約35億人にも上るのです。経済における女性の影響力や人口比、潜在的なニーズを考えれば、決してニッチな市場とはいえないことがわかるでしょう。そして、フェムテックのサービスが浸透することで、女性が抱える課題自体が可視化・認知されれば、結果的に男女が互いのポジションを理解し合い、真の意味で「女性が輝く社会」が実現するのではないでしょうか。女性の社会進出に対して、国の政策だけでは乗り越えられなかった課題が、フェムテックというテクノロジーによって一気に解決できる可能性もあるのです。

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国や地域によってまだまだ温度差はあるものの、世界35億人をターゲットとする巨大市場・フェムテックのポテンシャルは、社会的にもビジネス的にも計り知れません。筆者自身、ユーザーサイドの働く女性として、今後のさらなる市場展開に期待をもって注目していきたいと思います。

※参考/BuzzFeed Japan News、BeautyTech.jp、朝日新聞

≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫
20年以上にわたり、企業・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌・各種サイトなどの記事を執筆。長年の取材・ライティング経験から、金融・教育・社会経済・医療介護・グルメ・カルチャー・ファッション関連まで、幅広くオールマイティに対応。 好きな言葉は「ありがとう」。


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