転機を迎えたコンビニ業界に新たな指針を示す「セイコーマート」のビジネスモデル


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今年(2019年)6月、公益財団法人「サービス産業生産性協議会」が、全国のサービス6業種(コンビニエンスストア・カフェ・飲食・シティホテル・ビジネスホテル・証券)の顧客満足度を発表した。

これは、同協議会が2010年から実施している日本最大級の顧客調査で、今回は75の企業・ブランドが対象となっている。

なかでも注目される「コンビニ部門」で、全国チェーンの大手各社を抑え、4年連続で顧客満足度1位となった企業がある。
北海道を中心にセイコーマートを展開する「セコマ(北海道札幌市)」だ。同社は2011年度以降、今回を含めて8回ナンバーワンの座を獲得。
人口が1000人以下の過疎地にも出店し、地域に欠かせない生活インフラとしての役割を果たしていることが、圧倒的な顧客支持を得ている一番の理由だ。

人口減・高齢化社会を先んじて経験する北海道にあって、大手各社とは異なる独自の戦略でしたたかに生き抜くセイコーマート。転機に差しかかった全国チェーンのコンビニ業界を横目に、地域密着・持続可能な店舗づくりを追求し続ける、北の最強コンビニのビジネスモデルにフォーカスする。

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北海道の隅々にまで店舗ネットワークを展開

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日本が高度成長期の真っただ中にあった1971年、日本初のコンビニエンスストアとして札幌市北区に誕生したセイコーマート。
以来、地元の酒類販売店が中心となってチェーン網を拡大し、2019年8月末現在、北海道に1091店、関東に96店(茨城県86店、埼玉県10店)を展開。
総店舗数はコンビニ業界6位だが、北海道内では業界最大手のセブンイレブン(1012店)を抑えてシェア首位を誇る。

また、セイコーマートは道内179の全市町村(人口540万人)のうち、173市町村(人口539万人)に出店しており、北海道における人口カバー率は99.8%。
大手チェーンが出店をためらうような過疎地や離島にも出店し、単なるコンビニとしてだけでなく、地域のライフラインとしても道民に欠かせない存在となっている。

ちなみに、コンビニの出店・経営には、徒歩5分以内の商圏に3000人規模の人口が必要といわれている。
そのため、大手チェーン各社は人口の多い都市部に競って進出し、地域集中のドミナント出店(同じ商圏内に大量出店して地域市場を独占する)や年中無休・24時間営業などの戦略で消耗戦を続けてきた。

一方、人口の少ない地域でも出店・経営を可能にするのがセイコーマートの強みだ。たとえば、紋別市の上渚滑(かみしょこつ)店は、高齢者を中心に近隣住民が900人ほどの過疎地区にある。
店の営業時間も午前6時半~午後9時と短いが、客単価は一般のコンビニの1.5~2倍で、2017年の出店以来、黒字経営が続いているという。

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店舗の直営化で地域事情に合った効率運営を実現

では、セイコーマートはいかなる戦略で、過疎地・時短営業でも持続可能な店舗づくりを実現しているのだろうか。

そのひとつが、店舗の直営化である。大手チェーンは95%以上が、オーナーと契約するフランチャイズ(FC)加盟店であるのに対し、セイコーマートは約8割が自社経営の直営店だ。
以前は同社でもFC契約による出店がメインだったが、過疎地では加盟店オーナーのなり手が少なく、アルバイトの確保も難しいという事情がある。
オーナーの高齢化で店舗経営が立ち行かなくなれば、地元のニーズがあっても閉店するしかない。そこで同社は、地域を支える店舗づくりという視点から、高齢オーナーの店を引き継ぐなどして直営店を増やしてきたという。

ここ最近、大手チェーンの24時間営業問題で明らかになったように、コンビニ運営で大きなハードルとなるのが、深夜営業と人手不足(人件費高騰)である。
そうした課題を抱えつつ、大手チェーンのFC加盟店では本部指導による画一的な店舗運営が強いられ、経営に行き詰まったオーナーは疲弊しきっている。

一方、直営店が8割を占めるセイコーマートでは、各店の地域事情や現場サイドの要望に合わせて、本部が店舗運営をコントロール。
深夜人口が少ない地域も多いため、24時間営業しているのはFC店を含め250店ほどで、過疎地では正月に休業する店もある。また、店舗スタッフの病欠などで人手が足りなくなれば、本部や他店からヘルパーを派遣して対応。
こうした本部主導の柔軟な施策により、店舗運営の最適化を図りながら、スタッフの負担も軽減することができるのだ。

企業としての収益源を多様化する事業モデルを構築

とはいえ、直営店方式ではオーナーからの加盟金やロイヤリティの収入は見込めず、店舗の運営費や人件費、初期投資なども本部が負担しなければいけない。企業としてはいかに店舗経営のコストを抑え、収益を生み出すかが課題となる。

そこで、セコマ本部が取り組んできたのが、SPA(製造小売業)としての事業モデルづくりだ。
すでに同社では、道内に自社農場や20を超える製造工場を展開し、道内産の原料を使った牛乳・飲料・パン・弁当・菓子・即席麺など、デイリー商材のプライベートブランド(PB)商品を一貫生産する体制を整備。
人気のPB商品は、ドラッグストア大手のウエルシアホールディングスなどにも卸しており、セコマグループの売上高約2000億円のうち、外販比率は約1割に達するという。
店舗で販売する商品を自社で製造すればコスト管理がしやすくなり、メーカーとしても利益を稼げるというわけだ。PB商品の製造を社外に委託する大手チェーンとは、ここが大きく異なる。

さらに同社は、小売・製造という「川下・川上」だけでなく、「川中」にあたる物流事業までも自社でまかなっている。
配送センターを出たトラックは、広い道内に点在する各店舖に商品を届け、帰りに自社農場や食品工場から荷物をピックアップしてセンターに持ち帰る……というルートで、配送業務の効率化・低コスト化を図る。

こうして、川上~川中~川下にいたるロジスティクスを自社内で構築することで、店舗で利益が生まれなくても、他の部門でカバーできるグループ体制を確立。企業として総合的に収益を生み出せるからこそ、過疎地への積極的な出店や、地域に根ざした持続性のある店舗経営が可能となるのだ。

地域や災害時の社会インフラを担うコンビニとして

対して、これまでFC方式で拡大してきた大手コンビニの経営は、今まさに大きな曲がり角を迎えている。
過剰出店や人手不足による賃金高騰が各加盟店の経営を圧迫し、24時間営業をめぐっては本部とオーナーが対立する労働問題にまで発展。
粗利益の4~6割を本部に支払うロイヤリティや、食品廃棄の費用負担についても不満の声が噴出している。

そうした中、セイコーマートが収益源を多様化することで直営店化を進め、FC契約についてもロイヤリティを1割に抑えているのは、
「オーナーに過度な負担をかけながらの成長は持続しない。地域や災害時の社会インフラを担うコンビニとして、そのインフラを支える人々が疲弊しているようでは、真のインフラにはなれない(セコマ・丸谷智保社長)」
と考えているからだ。

昨年9月の北海道胆振東部地震では道内のほぼ全域が停電し、他のコンビニやスーパーなども営業不能となったが、セイコーマートは95%の店舗で営業を継続。
本部主導で自社工場と物流網を早急に稼働させ、地震発生から24時間以内に道内各店へ飲料や日用品を供給している。
地震の後、北海道の某町に住む筆者の友人も「町全体のライフラインが寸断していた時、近所のセイコーマートが開いているのを見て、涙が出るほどうれしかった。水や生活用品も手に入り、本当に助かった」と話す。

セコマの取り組みが将来のコンビニ像のヒントになる

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日本の人口は2009年の1億2808万人をピークに減少に転じたが、北海道の人口のピークは1995年の569万2321人と、全国に先がけて人口減・高齢化社会に直面している。そんな社会的課題の先進地にあって、早くから後継者問題や事業の多様化に取り組み、道民のソウルコンビニとして存在感を示してきたセイコーマート。

今後、本州の都市部や首都圏でも人口減・高齢化が加速する中、大手コンビニが成長戦略を描いていくためには、根本的なビジネスモデルの改革が必要となってくるだろう。
もはや過剰供給の時代は限界に達し、環境意識の高まりとともに消費者のニーズも変わりつつある。社会的使命を担うサスティナブル(持続可能)なコンビニづくりが求められる今、セイコーマートの姿から学ぶべきことは少なくない。

※参考/セコマHP、日本経済新聞

≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫  

20年以上にわたり、企業・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌・各種サイトなどの記事を執筆。長年の取材・ライティング経験から、金融・教育・社会経済・医療介護・グルメ・カルチャー・ファッション関連まで、幅広くオールマイティに対応。 好きな言葉は「ありがとう」。


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