ヤマト運輸にみるロジスティクス問題 ~変わりゆく物流事情 2~


■撮影用にデザインした架空の「ご不在連絡票」を使用しています。イメージ写真です。


 

老いも若きも手にしているスマホの普及に伴い、いまや普通の買い物としての地位を築いているネット通販は急拡大の一途をたどっています。

同時に、荷物量の激増とドライバー不足による配送問題が浮上し、サービスの破たんまで噂される物流事業。中でも最大手のヤマト運輸は、サービス残業が常態化し残業代の未払いが発覚するなど、多くの問題を抱えています。宅配便はすでに、生活に密着したサービスとして私たちの暮らしに根差しているため、ヤマトにかかわる問題は私たちにも影響をおよぼす可能性が多大にあります。労働環境の改善をはじめ、サービスの見直しなど、ロジスティクスサービスをめぐる問題は、これからどのようになっていくのでしょうか。

 

27年ぶりに基本運賃を値上げ

 


 

2017年5月22日、ヤマト運輸は全国の新聞各紙朝刊に全面広告を出しました。広告内容は、今年10月1日より宅急便の値上げをする、というもの。しかしこれは、単なる値上げのお知らせではありません。トップには「ご理解とご協力を」と掲げ、現在の状況を「かつてない厳しい状況にあり」「人手不足によって労働力の確保も困難」と訴えています。また、値上げの理由として、「宅急便のネットワークを維持、発展させていくため」、「社員の健全な労働環境を守るため」と語っています。

この切実ともいえる「ご理解とご協力のお願い」はこれまでのヤマトにかかわるマスコミ報道から予想できる内容です。大口の契約を持つ法人はもちろんのこと、普段から利用する私たち個人にも深く訴える広告だと言えるでしょう。
気になる個人向けの値上げ額は、サイズによって1個あたり140円から180円(税抜き)で、スキー宅急便やゴルフ宅急便などは適用サイズも変更に。また、大口契約の法人には運賃の見直しをお願いしていく、という一文も見受けられました。すでに大手通販会社とは契約交渉に入っているとみられます。

 

業務効率化への協力により割引も

 

広告には値上げだけではなく、サービスの見直しについても言及されています。かねてより問題となっていたセールスドライバーの負担を軽減するため、まずはお届け時間帯の指定枠を変更することに。現状では6区分に分かれていた指定可能な時間帯のうち、利用者数の少ない「12時~14時」を廃止します。また、「20時~21時」の指定枠は「19時~21時」に変更となり、配達時間に余裕をもたせる方針。実施は2017年6月19日からの予定です。

また、新たに「デジタル割」という割引制度を設け、デジタル送り状を利用すると50円の割引が実施されます。クロネコメンバーズを対象として、直営店へ荷物を持ち込んだ場合、現行100円の割引が合計150円の割引になるなど、メンバー登録している人には便利なしくみを用意。さらに、届け先を自宅ではなく直営店を指定すると50円を割り引くサービスもあり、業務効率化に協力することに対する体制もスタートするとしています。

 

いずれは無人運転!? 「走る宅配ロッカー」も実験中

 


 

そのほかにも人員増強に、IT化や自動化への投資、オープン型宅配ロッカーの普及拡大をすすめるなど、「宅急便の進化への取り組み」と「働き方改革をスピードアップさせる」という記述が見られました。中でも注目を浴びているのが「宅配ロッカー」や「宅配ボックス」です。

現状では、マンションなどにある宅配ボックスは、宅配業者間で奪い合いともいえる状況にあります。再配達を減らすには、“なるべく早い時間にどれだけ多くのボックスを確保できるか”にかかっているため、早めに出社して仕分け作業をするドライバーも多いのだそう。

そこで、ヤマトがIT大手のDeNAと始めた実証実験が「ロボネコヤマトR」です。ロッカー式のボックスを積んだ車を指定の場所に呼び、荷物を受け取ることができるサービスで、神奈川県藤沢市の一部で始まっています。実験は来年3月末までの約1年間で、期間中は3台の専用車を使用。将来的には自動運転車での完全無人配達の実用化を検討するとしていますが、市街地での無人運転車導入は当分先のことになりそうです。

 

再配達ゼロを目指した取り組み

 

再配達をなんとか減らしたいと考えているのはヤマトだけではありません。いまや社会問題とも言われる宅配便の再配達率は、国土交通省の調べによると19.1%にもなり、ドライバー9万人分、年間で1.8億時間の労働に相当します。再配達に伴い配達車両が排出するCO2(二酸化炭素)量は約42万トン/年※と、環境的にも大きな課題となっています。
※国土交通省「宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会」報告書より(2015年10月14日発表)

政府はこの4月から設置費用の半額を補助する制度を新設。最近では、宅配ロッカーやボックスを設置する駅やコンビニエンスストアなどが増えてきました。セブンイレブンではすでに宅配ロッカーを設置。中には、再配達ゼロを目指して宅配ロッカーの利用効率向上プロジェクトを始めたマンションも出現しました。また、戸建てでも宅配ロッカーを配備する動きが増え、戸建住宅用宅配ボックスの開発も進んでいます。世間の関心が高くなるにつれ需要が増えたため、メーカーによっては生産供給体制が追い付かないところもあるほどです。

── 共働き世帯など日中を留守にする家庭にとって宅配ボックスや宅配ロッカーは重宝する存在であり、何より配達する側にとっては再配達コストの削減になります。ただ、これらのボックスやロッカーではチルドや冷凍、ナマモノなどには利用できませんし、ロッカーに入らないサイズは当然入れることができないため、全面的な解決には至っていません。
世界的にも最高レベルにあると言える日本の宅配便サービスですが、このままでは破たんしかねないという声も。サービスの高度化や利用する側のモラルなど、今後はどのような形で推移していくのか、ロジスティクスサービスからますます目が離せなくなりそうです。

参考:朝日新聞デジタル、国土交通省HP、パナソニックHP

≪記事作成ライター:山本義彦≫
東京在住。航空会社を定年退職後、介護福祉士の資格を取得。現在は社会福祉法人にて障がい者支援の仕事に携わる。28年に及ぶクラシック音楽の評論活動に加え、近年は社会問題に関する執筆も行う。


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