5月13日付の日経新聞では、『個人マネーが貯蓄から投資へ向かっている』と報じられている。記事によると、『野村証券など主要証券10社が顧客から預かる資産は2014年度末に297兆円となり2年連続で過去最高』であり、『株価上昇で資産の評価額も膨らみ、メガバンクなど都市銀行の預金額(303兆円)に迫っている』という。
貯蓄好きといわれてきた日本人の志向に変化が起きているのであろうか。今、投資を始めるとしたら、どんな金融商品がよいのか、日本クラウド証券代表取締役社長 大前和徳氏にカイセツしてもらった。
個人マネーは貯蓄から投資へ!?
証券会社に資金が集まっている背景とは?
「NISAの影響と株高です。株価上昇で預かり資産が膨んでいます」とし、そのうえで大前氏は、「貯蓄から投資へ」という見方について疑問を呈した。
「証券会社の預かり資産が増えていても、それだけでは貯蓄から投資への流れなのか、預かり資産が膨らんだだけなのか、どちらの増加なのかわかりません。貯蓄から投資への動きはむしろ、限定的と考えられます」
その理由として次のように述べた。
「NISAができて初めて投資をした人は増えてはいますが、上限は100万円程度であり、影響は限定的です。株高の流れが終われば、証券会社の預かり資産は縮小する傾向にあります。
メガバンクだけではなく、地方銀行を含めた預貯金に、家庭に貯蔵されている現金などを合算した現預金の残高は、今でも840兆円あるとされています。
個人の資産は預貯金が圧倒的に多いということに変わりはありません。リスクマネーとしての投資への資金の流れは限られています」
投資を始めるなら、おすすめするのは?
NISA以外では、個人が証券会社や銀行などの金融機関に、資金の運用から管理までを包括して依頼する「ラップ口座」が人気とされている。これについては、どう見るのか。
「投資のハードルを下げるのは、NISAのような税制優遇や、投資がわかりにくいという人に向けて、プロに運用を任せるラップ口座のような商品です。金融知識のない人にとっては、投資を始めやすいでしょう。
ただし、ラップ口座には最低投資額があり、富裕層を対象とした商品です」
ラップ口座は最近では、最低投資額を300万円や500万円とする金融機関も出てきたものの、もともとは1億円以上の億単位の投資を対象とした商品である。
では、一般的な人が投資を始めるのにおすすめなのは?
「自分の資産でリスクをとれる範囲の金額から投資信託などへの投資を始めてみてはいかがでしょうか?特に直販型の投資信託は手数料が安いのが大きなメリットです」
個人投資の拡大は、個人の資産形成に寄与するだけでなく、企業へのリスクマネーが供給され、日本経済にとって好循環な動きとなる。しかし、貯蓄から投資への流れが始まったとみるのはまだ早計のようだ。
取材先:日本クラウド証券代表取締役社長 大前和徳
記事作成:ライター 梅原ゆい
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