あのユニクロも!ダイナミックマーケット「インド」へ日本企業が続々進出!


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日本の大手小売業界が、インドに熱い視線を投げかけている。中国の経済成長がいっときの勢いを失ったいま、次の投資先を探す日本企業にとって、インドはのどから手が出るほど魅力的な市場ということになる。

顕著な例として、いち早く国外企業としてインドに着目した自動車メーカーのスズキが大成功を収め、現在のインドでは2台に1台の割合でスズキ車が広大な国土を駆け抜けている。実は長きにわたって、スズキのような成功例はインドでは非常にレアなケースとされていた。
実際にダイナミックマーケットのインドへの進出を目論み、日本企業や世界の名だたる企業が進出を果たしてきたのだが、相次ぐ失敗により、撤退を余儀なくされるケースがほとんどとされてきた。それだけインドは魅力的である一方、成功を勝ち取ることが難しい国でもあったのだ。

しかしここにきて、私たち庶民に身近な日用消費財の企業や製造業が続々と進出し始めたという。なぜいまインドなのか、その理由を探ってみよう。

デリー中心街に、ユニクロ1号店誕生

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10月4日早朝、デリーの高級ショッピングモールDLFアンビエンスモールの入り口に、約500人の行列ができた。日本から乗り込んだファストファッションの雄「ユニクロ」のインド1号店(画像参照/ユニクロのプレスリリースより)がオープンを迎え、いち早くユニクロの商品を手に入れようというファンが殺到したのだ。

店頭にはファーストリテイリングの柳井正社長が登場し、代表してあいさつするほどの気合いの入れよう。「インドへの出店を長い間心待ちにしていた。19歳のときにこの国を旅して、51年後にようやく実現できたことを心底うれしく思う。インドは当社にとって重要な市場であり、今回の出店はこれから長きにわたるパートナーシップの第一歩だ。最高品質の衣料品を提供するとともに、インド特有の文化と伝統を取り入れた革新的商品も展開していく。今後、インドの経済発展に貢献していきたい」と熱く語った。

このオープニングセレモニーには、インドの繊維大臣や駐インドの日本大使らも出席した。インド特有の文化とは、たとえばインド人デザイナーのリナ・シン氏と組んで、インド人女性の伝統的な日常着「クルタ」をモチーフにした「クルタコレクション」の発売などだ。ユニクロは年内にもあと2店舗、デリー周辺に出店する予定だという。

ユニクロの進出は、世界的に見れば後発組?

インドでは、同じファストファッションの世界的なブランドである「H&M」「ZARA」「GAP」などがすでに店舗を構えており、日本の有名企業では無印良品の「良品計画」がこれまで出店しているが、世界的に見れば後発組に属することになる。

しかしここにきて、日本企業のインド進出が活発になってきているのだ。その業種は「ユニクロ」などのアパレルにとどまらず、庶民にもっとも身近な飲食店も次々にインド進出を表明している。その代表格が牛丼の「吉野家」だ。インド人の多数派であるヒンズー教徒は牛肉を食べないが、宗教上の風習や食生活を尊重し、インドの「吉野家」では牛肉を使わない定食を試験的に発売している。

また、カレーハウスCoCo壱番屋を展開する「壱番館」も2020年に進出する予定としている。1年を通して3食がカレーという人も多い国でのカレー店出店であるからには、よほど品質やインド国民に愛される味等、さまざまな面から自信を持って「勝算あり」と見込んでの参入だろう。

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上の図は、在インド日本大使館は12月18日、ジェトロ、大使館、インド各地の日本総領事館が共同で調査した「インド進出日系企業リスト(2018年10月現在)をジェトロがまとめたものだ。
図を見て一目瞭然、インド進出の日系企業は年を追うごとに右肩上がりの状態になっており、2018年の統計を見ると、進出した日系企業数は前年比5.3%増の1441社にのぼっている。また、インド各地の拠点数は5.5%増の5102カ所にのぼっている。
ビジネス拡大の観点から、生産性が縮小する日本では今後の活路が見いだせないとして、日本企業の多くがインドへ高い関心をもっていることがわかる。
                 

13億の人口の平均年齢が27歳!という圧倒的な魅力

では、いったいなぜ世界の企業が続々とインドを目指すのだろう。
その理由はなんといっても、国全体が若々しくて活気があることに尽きるだろう。国内総生産は毎年6%以上の成長率を維持しており、それを支えているのが日本の約10倍に相当する約13億におよぶ人口だ。いまはまだ中国よりも若干少ないものの、2022年には14億人を超えて中国に並び、それ以降は世界一人口の多い国となる。そして、2050年には17億人にも達すると見込まれているダイナミックマーケットなのである。

しかも、13億の人口のうち50%以上が30歳以下で、平均年齢が27歳だという。これを人口ピラミッドに表すと、理想的な形を描くことになる。日本のような先細りの老人大国とはまったく裏腹だ。
このように人口が多くて、さらに若年層が多数を占めるとなれば、商品マーケットはどんどん巨大になり、しかも彼らはこれから何十年にもわたって消費者であり続ける。こんな魅力的な市場はない。

また、20代や30代の彼らは消費者であるとともに、貴重な労働力でもある。進出した日本企業にとって、人件費はもっとも大きなコストのひとつとなるが、比較的低賃金ですむインドの人々を従業員として使えば、経費抑制にもつながる。

もうひとつ、最近になって日本企業が積極的に進出している背景に、インドの税制改正と外国資本参入に対する規制緩和がある。
税制では、それまで国税と州税の2本立てだった間接税が、物品サービス税として一本化されたため、税を納める企業にとって大幅な節税になっている。
また、従来は商品原価のうち一定の割合をインド国内で調達するように求める規制があったが、それが一部緩和されたのだ。
こうした税制改正や規制緩和が、外国企業に進出しやすい下地をつくっているようだ。

インド進出企業にとっての成功へのリスク

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ユニクロをはじめ、インド進出ラッシュにわく日本企業だが、これから先、明るい未来ばかりが待っているのだろうか……。一部には、インドならではのリスクを指摘する声もある。

そのひとつが、インド独特のカースト制度だ。生まれや種族によって社会的階級が厳密に区分けされており、たとえば異なる階級での結婚などは難しいとされるインド。
その影響は経済活動にもおよび、経営陣や従業員が同族で占められることも当たり前で、一部の階層の既得権益が延々と維持されるなどの因習も残っている。
新興の日本企業が進出したとき、このインド独特の文化を理解していないと、企業間の不要な対立や従業員間の不和などに巻き込まれて、果ては失敗しかねないリスクがあることになる。

もうひとつは、まだまだ不十分なインフラ整備だ。もっとも基本的な道路、橋、港湾、空港などの交通機関は日本などの先進国と比べ、いまだ未整備の状態にあるため、店舗間の商品の輸送や顧客の往来に影響をおよぼしている。
また、ホテルやオフィス用ビルの設備・機能も先進国とはいえない脆弱な部分が多い。そうした条件に加えて、スマホの普及率などは貧困層と呼ばれる人々にも年々拡大しているが、その反面、一日に短時間の停電が何度も起きることは当たり前。情報、通信等の面でも、まだまだ脆弱な面は否めない。

こうしたお国柄の違いは、日本からインドに出向いて駐在する従業員にはカルチャーショックになるだろうし、時間に対する感覚もインドの人と日本人には大きな開きがある。
こうした基本的なことが、企業進出における妨げとなることも多いだろうし、円滑な企業運営にもさまざまな影響を与え、結果として業績にも影響を与える可能性が懸念される。

さらに大きな不安要素は、インド人の倹約気質だ。一部の富裕層をのぞいて、一般的なインド人はお金を使うことにとてもシビアだといわれている。
経済成長率は向上しているものの、若年層が過半数を占めるインドでは、安い賃金で働く人も多く、彼らの財布のひもは固い。
こうした国民性があればこそ、自家用車は大型車ではなく、性能がよくて壊れにくい小型車がよいという発想になり、スズキの軽自動車が爆発的人気を博したことになる。

さらに、仕事に対する考え方も日本とは異なり、彼らは会社に忠誠を持って働くという意識は低く、会社はあくまでも自分のキャリアアップのための手段の場と考えているケースが多い。終身雇用の意識などは企業側にも従業員にもほとんどない。

── 今回ご紹介したように、インドに進出すれば誰もが成功を収めるというバラ色の未来が待っているわけではない。ただ、これから人口も減って大きな経済成長も望めない日本と比べれば、大きな可能性を秘めている国であることはたしかだ。ユニクロや吉野家が、今後どんな勢いで業績を伸ばしていくのか、とても楽しみだ。

≪記事作成ライター:小松一彦≫
東京在住。長年出版社で雑誌、書籍の編集・原稿執筆を手掛け、現在はフリーとして、さまざまなジャンルの出版プロデュースを手掛けている。


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