ECB総裁がラガルド女史にバトンタッチへ!


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ドラギECB(欧州中央銀行)総裁の任期が10月末で終了し、ラガルド女史が新総裁として就任します。時代の変遷を筆者は感じます。今回はドラギ総裁時代を振り返り、そしてラガルド総裁にバトンをどのように引き継ぐか、考察してみましょう。

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ドラギ総裁時代

ギリシャ債務問題の課題

ドラギ総裁は、2011年11月1日に、前任のトリシェ総裁からECB総裁を引き受けました。当時はリーマンショックの影響から回復しつつある経済状況でした。
就任前には2009年ギリシャの債務問題が突如噴出しました。ギリシャはGDP(国内総生産)に対する財政赤字を5%程度と政府は発表していたのですが、政権交代でその数字が隠蔽されていたことが発覚、実際にはなんと12.7%であったようです。
そして2010年には欧州委員会から更に統計上の不備を指摘され、財政状況が悪化の一途を辿りました。その過程の中でECB総裁として登場したのがドラギ氏でした。
この難局の処理が一大課題として、金融面でドラギ氏の手腕が試されました。ドラギ総裁は、当時後退局面にあったユーロ圏経済とギリシャ債務問題で、「何でもする。(whatever it takes.)私を信じてほしい。」と宣言し、金融政策の舵をとることとなりました。

下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)はドラギ総裁の任期時代のGDP(域内総生産)の推移を示しています。数字は前年比ベースです。

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これを見ると、2011年には2%超える成長を遂げていたのですが、2012~13年には一転ギリシャ問題の深刻化、スペイン等南欧諸国で不動産バブル特に住宅バブル崩壊となり、債務問題に更に焦点が当てられる経済状況でした。
そしてECBの金融政策、ユーロ圏各国がとった財政政策の結果、ユーロ圏経済は徐々に回復を示すこととなりました。
2017~2018年には2%を超える成長を示していたのですが、ここに来て、米中貿易摩擦の影響からか、ドイツの製造業が悪化し、ユーロ圏経済全体に蔓延する弱い経済状況になってきました。
直近では今年第2四半期GDP:1.2%となっています。グラフでは、2020年以降の予想も示していますが、灰色線のECB予測では2021年までは横ばい、そしてその後上昇する予測です。
赤線のNatixis(フランス金融グループ)予測では今後大きく落ち込み、マイナス成長もあるのでは、そして回復する予測を示しています。
いずれにしても、今後のユーロ圏経済には悲観的な見方をしているようです。

量的緩和に注目

就任当初にドラギ総裁がとった政策は、政策金利の大幅引き下げと、金融市場に資金を潤沢に供給すること、つまり量的緩和政策でした。まずは政策金利の動きを検証しましょう。
下記のグラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は政策金利の中の預金金利の動きを2005年から直近まで示したものです。現在は-0.50%です。政策金利の中心であるメイン・リファイナンシング・オペレーション 固定金利(Main Refinancing Operation fixed rate):0.00%です。

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最近の動きとして、政策金利をゼロからマイナス金利にすることに躊躇したECBは預金金利を0.4%から0.5%としました。概ね0.3%~0.3%の乖離が、政策金利と預金金利にはあると解釈します。
その上で、上記グラフを見ましょう。ドラギ総裁が就任した当時から既に低い金利で、トリシェ総裁時代から0.50%以下の政策金利を引き継いでいます。
若干景気が上向く時期もありましたが、政策金利を0.50%~0.00%に近づける以外に金利政策では限りがあり、そこで量的緩和が注目されました。

再熱したドイツ・南欧州諸国の財政問題

下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は、ECBのバランスシートつまり資産状況を2010年から直近、そしてその先の予想を示しています。
ドラギ総裁は、2011年当初から、大規模な資産購入、つまり量的緩和政策を推し進めていることが明確です。2013年から2015年にかけては、景気が上向きの状況(最初のGDPグラフを参照ください。)になり、一時的に量的緩和を注視する状況にありました。
しかしその後、スペイン、イタリア、ギリシャで財政問題が再燃し、量的緩和政策で景気を支える必要性がありました。ユーロ圏経済の盟主であるドイツはこの量的緩和政策に否定的でした。
メディアからはドイツ嫌いのドラギ総裁と言われましたが、この姿勢にもドラギ総裁の就任当初の言葉「whatever it takes。」を思い起こされます。

ドラギ総裁の信念

ユーロ圏は狭義で19ヵ国、広義では28ヵ国で構成されています。ECB定例理事会では、それだけの国々の中央銀行総裁が集合し、金融政策などについて協議し、合意をとることになっています。
北欧州は好景気、南欧州は不景気の景況ですが、就任当初からドイツを筆頭に景気の良い国は量的緩和に否定的でした。それを押しのけて量的緩和を実行し続けたドラギ総裁の手腕は評価されるのではと思います。
最近では、景気悪化が懸念されるドイツに対しても、ドイツ政府が財政政策で景気を支えてはと提言しています。現在のECBの資産は約4兆7千億ユーロ(約570兆円)です。
9月開始のTLTRO-Ⅲに加えて、更に資産購入を続けると、5兆ユーロ(約600兆円)にまで膨れ上がます。この数字はFRBの約480兆円、日銀の約550兆円を上回っています。
そして直近では、11月から毎月200億ユーロ(約2.4兆円)の債券購入を発表しており、信念の人と言えます。

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ラガルド新総裁

IMFからの転身

そんな信念を貫いたドラギ総裁から、ラガルド女史に引き継がれます。米金融機関に勤めた経験があるアメリカ的決定プロセスを重視するドラギ総裁に対して、ラガルド女史はIMF(国際通貨基金専務理事)の職責からECB総裁に転身しました。
もともと弁護士の資格を有し、フランス政府で財務大臣を経験しており、調整能力に優れた能力を発揮されそうです。IMF専務理事時代には、世界の財務大臣、中央銀行総裁の意見をまとめ上げ、そして発表するプロセスを何度も経験されています。
政策方針がアメリカ的な決定方式から、トリシェ総裁(仏出身)時代のECB理事会の総意をベースに、側近エコノミストの意見を聞き入れて、無難な金融政策を当初は執行することになるのではと推測します。

今後の政策方針は?

ドイツからの批判をどのように聞き入れて、南欧州諸国(特にイタリア、ギリシャ)の財政状況を吟味し、必要であれば、量的緩和を続けることが予想されます。
量的緩和政策は、上記グラフを見ても、5兆ユーロまで膨れ上がる予想となっています。ラガルド総裁が、思い切って資産購入を停止するような動きとはならないと推測します。
急速にユーロ圏経済が好景気に向かうという兆しはまだ見えてきません。それにはまだ3年以上の期間が必要ではと思います。また政策金利にしても、大きく利上げに踏み切るといった状況にはないと見られます。
ラガルド総裁は、側近の意見を聞き、各中央銀行総裁とのコミュニケーションに注力を注ぐことになると思います。ECB総裁は長期に渡る任期が予想され、長い目でラガルド総裁を見守りましょう。

投資家から見ると、ユーロ圏経済の立て直し期待を金融面から支援する明確な方針を示してほしいものです。
投資家、金融市場とのコミュニケーションも重要ではと筆者は思います。ユーロ圏金融商品が分かりやすい投資環境にすることを、ラガルド総裁には期待したいところです。

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«記事作成ライター:水谷文雄»
国際金融市場に精通するInvestment Banker。
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替および金利・債券市場部門で活躍、
外銀を知り尽くす国際金融のプロフェショナル。新興の外国銀行(中国信託商業銀行 )の
東京支店開設準備に参画しディーリング・ルームの開設を手掛ける。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、
スペインと日本との文化・経済交流を夢見るロマンティスト。


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