ゴルフ税撤廃議論。2020年のスポーツ・ビッグイベント開催前に白熱!


いまどき、スポーツをするだけで税金がとられる……そんな信じられないことが、実際には起きている。ゴルフをしない人にはピンとこない話かもしれないが、ゴルフ場に行ってプレーすると、帰りのレシートには必ず「ゴルフ場利用税」という項目があり、プレー代や食事代と一緒に知らないうちに課税されているのだ。

なぜ、そんなことになっているのか……。不思議に感じながらも、ゴルフを楽しんだときに利用税を払っている人も非常に多いのが現状だ。
そして2020年を迎えると、日本は世界的スポーツイベント開催に向けて大いに盛り上がることが予測されるが、そのイベント開催を機に、見直しへの議論が白熱していることをご存じだろうか。今回は、その実態を報告しよう。

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なぜゴルフプレーに税金がかかるのか。摩訶不思議な現実

テニス、水泳、野球、サッカー、流行のフィットネスジム。さまざまな施設で多くの愛好家がスポーツを楽しんでいるが、そうしたシーンで税金をとられるという話は聞いたことがない。

しかし、ゴルフだけは毎回税金をとられている。それは「ゴルフ場利用税」という名目によるもので、コースのグレードによって最高1200円から、最低でも350円くらいまで(最低料金は都道府県によって異なる)と数段階に分かれている。ちなみに、プレーフィーや食事代にはもちろん消費税がかかるので、ゴルファーは、2つの項目にわたって税金をとられて(払って)いることになる。

なぜ、ゴルフだけが利用税をとられるのか……。さかのぼると、戦後施行された娯楽施設利用税の施行に行きあたる。その頃、ゴルフは広い意味での娯楽とみなされ、映画や遊園地などといっしょに課税されていた。1954年以降は映画などの入場料に対する税とは切り離されたものの、引き続きパチンコ、麻雀、ビリヤードなどと同カテゴリーに分類され、娯楽施設の使用として課税され続けてきた。
つまりこの間、ゴルフ場はずっとスポーツ施設としては認められず、娯楽のための遊び場とみなされていたのだ。しかも税金としては、ゴルフはクラブやキャディバッグ、ボールなどの購入でも物品税までとられていて、宝石や高級自動車などと同じぜいたく品とみなされていたのだ。

そのまま、30年以上にわたってこの制度は維持されたが、1989年に税制は大きく変わる。この年初めて消費税が導入され、それに伴って娯楽施設利用税、物品税などは廃止になったのだ。これはつまり、パチンコやビリヤードの施設を利用するのに、税金はかからなくなったことを意味する。

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ところが、ゴルフだけは「ゴルフ場利用税」という新たな税金が制度化され、実質的にはゴルフ版娯楽施設利用税が存続されることになった。もちろんゴルフ関連団体は、文科省を巻き込んで大規模な反対運動を起こしたが、結局このゴルフ場狙い撃ちの税金はスタートしたのだ。

                      

利用税は、地方自治体にとっては貴重な収入源

大きな反対運動が巻き起こったにもかかわらず、なぜゴルフにだけ利用税が新設されて、事実上娯楽施設利用税が維持されたのか……。当時の税務当局は次の3点をおもな理由にあげていた。

【理由1】ゴルフ場利用者は十分な担税力(税金の支払い能力)がある。
【理由2】ゴルフ場開設にあたっては、開発の許認可、周辺道路の整備など、さまざまな行政サービスが施されている。
【理由3】ゴルフ場利用税のうち、3割が都道府県の収入となり、残りの7割は当該ゴルフ場のある市町村に交付されており、各自治体にとっては貴重な財源となっている。

ここからさらに30年の現在にいたるまで、「ゴルフ場利用税」は延々と維持され続けている。もちろん撤廃運動は地味ながらずっと続いていて、上に掲げた撤廃運動のポスターは、あちこちのゴルフ場で掲げられている。しかもこの間、消費税率は3%から5%、8%とアップ。そのたびに“このタイミングでこそ”と撤廃運動は盛り上がったが、ついぞ実現することがなかった。

なぜ、ゴルフ場利用税は維持され続けるのか?

さきほどの理由の1と2については、いまとなってはあまり説得力はない。昔、たしかにゴルフは贅沢なスポーツといわれていた時代があったが、いまやプレーヤーの5割以上が年収500万円以下とされているのが実情だ。

ゴルフ場のプレー料金もバブルの崩壊後急速に下がり、ウイークデーなら1万円以下でラウンドできるゴルフ場が続出していて、その料金内でランチが無料でつくサービスを提供しているコースも多い。それだけ低料金での競争が激化しているのだ。そうした実情にもかかわらず、またプレーフィーが下がっているにもかかわらず、変わらず税金が継続していることに割高感は募っている。
多くの人が認知している通り、すでにゴルフは金持ちの娯楽ではなく、庶民のスポーツに生まれ変わっていることを、ここでまた再確認しておきたい。

また、行政サービスの恩恵といっても、ゴルフ場の許認可手続きや周辺の道路整備などは、開業当初こそ費用が発生するが、その経費がずっと継続されるわけではない。むしろゴルフ場は自ら周辺設備も整えており、逆に地元の若者の雇用や地場産品の売り上げに貢献し、その中から法人税も固定資産税も払っている。特別恩恵を受けているとは思えないのが現状だ。

結局、ゴルフ場利用税がいつまでたってもなくならないのは、3つめの都道府県と市町村の自治体が、このおいしい収入を手放したくないという理由につきる。

ゴルフ場利用税による税収は、バブル絶好調の時期1000億円を超えていた。その後、不景気になってゴルフ場の倒産が相次いだが、今でも約450憶円の税収となっていて、これを都道府県で3割、市町村で7割に振り分けられている。市町村にとって320億円の税収は貴重な既得権だ。
ゴルフ場は市街地から離れた山間部につくられことが多く、もともと商工業による税収が望みにくい地域に建設されている。その地から、毎年まとまった税金が得られるのは非常にありがたいこと。それを、いまさら何の代替えもなく失うことは、とても受け入れられない事態といえる。

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2020年のビックイベントを機に、各方面から見直しの声

しかし、このどうしてもなくならないゴルフ場利用税、いままた撤廃の好機として、議論が白熱している。理由のひとつは、先ごろ導入された消費税の10%へのアップだ。これまでも消費税が上がるたびにゴルフ場利用税の撤廃が叫ばれてきた。今回も、消費税が10%にまで上がって、さらに利用税もとるのはあまりに酷、という声がゴルフ場関係者から多数あがっている。

そしてもうひとつ大きな盛り上がりのきっかけは2020年夏に開催を控えた世紀のスポーツイベントだ。前回大会からゴルフが正式種目として復活し、今回は2度目。世界的なスタープレーヤーが日本でプレーすることになる。その国で、この純粋かつ大衆化したスポーツに“意味不明の税金”が課せられているという事実は、あまりに不可思議だ。ゴルフ関連団体は、こぞってゴルフ場利用税の撤廃を声高に叫んでいる。

2019年の8月、国際ゴルフ連盟のピーター・ドーソン会長は、下記のメッセージを発している。
──ゴルフ場利用税が廃止される方向に進み、接待の道具というイメージが払しょくされ、オリンピック競技の健全なスポーツとして認識されるようになってほしい──

スポーツに課税するなど国家の恥!

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そうした中、ゴルフ関連団体の撤廃運動の声を受けて、文科省が動き始めた。現実的な措置として、現在のゴルフ場利用税は「18歳未満」と「70歳以上」には課さないことになっているが、この非課税対象をせめて「30歳未満」と「65歳以上」に広げるという暫定的な要望を、税制改正当局に働きかけることにしたのだ。超党派のゴルフ議員連盟もこれを後押しし、自民党の衛藤征士郎元衆議院副議長は「スポーツに課税するなど国家の恥」と息巻いている。

日本ゴルフ協会は、今回の文科省の要望書の提出について、「われわれは決して完全撤廃をあきらめたわけではないが、前向きな一歩として受け取りたい」と、少なくても現状維持よりはベターと歓迎だ。
ただ、これを受けた地方自治体は、さっそく反発している。全国知事会は廃止も減税も受け入れられないとの立場で、2019年の9月には与党の税制調査会長に「ゴルフ場利用税の堅持」とする要望書を手渡している。

世界的なスポーツイベントの開催を目前に控え、ゴルフ場関連団体と地方自治体との攻防は、まもなくいったん決着を見るだろうが、今の見通しでは、少なくとも完全撤廃はないだろう。
自治体にとって長年の既得権は、そう簡単に失えるものではない。つまり、正論を唱え続けているだけでは説得は難しいということ。自治体も納得できるような具体的な代替案が必要なのかもしれない。それにしても、この先いつまでも続けるべき税金でないのは、誰が見ても明らかで、疑いの余地はない。

≪記事作成ライター:小松一彦≫
東京在住。長年出版社で雑誌、書籍の編集・原稿執筆を手掛け、現在はフリーとして、さまざまなジャンルの出版プロデュースを手掛けている。


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