北陸新幹線開通1周年を過ぎて ── 地方創生の未来を探る


画像マネセツ027(中村)/ 北陸新幹線

今年3月14日、北陸新幹線が開通1周年を迎えました。
最速の「かがやき」に乗れば、東京 — 金沢間は2時間28分。首都圏がぐんと身近に、利便性は圧倒的に高まりました。
観光客の増加、大手企業の一部移転など、新幹線効果で大きく変わり始めた北陸。
観光資源の豊富な石川県・金沢の一人勝ちといわれるなか、ものづくりに焦点を絞った富山県の取り組みなど、同じ北陸でも独自のカラーを出し始めています。
しかし、本当の正念場となるのは2年目以降。北陸新幹線開通による“今”を考えます。
 

兼六園や金沢城公園の入園者数は過去最高

 
金沢駅で下車すると、まず目に入るのが新幹線開通と同時に完成した駅のシンボル「鼓門(つづみもん)」。
鼓をイメージし、米松の構造材を螺旋状に組み上げた「鼓門」は、古都・金沢の気分を一気に盛り上げてくれます。
ひがし茶屋街などに代表される風情ある町並みや、豊かな食文化や伝統工芸を誇る「観光力」に長けた金沢は、やはり仕掛け上手。鼓門をバックに写真を撮る観光客は後を絶たず、海外からの観光客が圧倒的に増えていることも大きな特徴でしょう。
昨年の兼六園の入園者数は286万5000人(前年比145.5%)、金沢城公園は224万8000人(同181.2%)と過去最高を記録。県有施設の来場者は1480万人にも上りました。
駅周辺の飲食店やコンビニ、土産物等の売り上げも、開通前に比べて大幅に伸びており、ホテルには法人や学会等の利用が増加しています。
 

産業観光に力を入れる富山県

 
一方の富山県は、「ものづくり富山」を全面アピール。
伝統産業の町・高岡市は、工房で職人体験できるツアーなどを開催、独自のカラーを打ち出しています。
また、テーブルウェアや花器などの鋳物(いもの)メーカーで有名な(株)能作は、一度に200人規模が見学できる産業観光施設を新設。日本橋三越や松屋銀座に直営店を置き、海外の見本市でも注目を集める能作の作品は、国内外にファンが多いことでも知られています。伝統的な職人技とデザイン性が融合するテーブルウェアなどを作る工程、(たとえば1100℃の高熱で溶かした金属を鋳型に流し込む作業など)を、職人と同じ目線で体感することができます。

また、「黒部宇奈月温泉」駅からシャトルバスで約20分揺られると、YKKグループの大規模な事業所内にある、YKKセンターパークに到着します。
水と緑、森や展示館で構成されるセンターパークは、ファスナーや窓(サッシ)ができる過程や技術の歩み、歴史が見学できる人気スポット。また、立山連峰を望む豊かな自然のなかで、自家焙煎した珈琲を楽しむことも。
こうした産業観光の取り組みは、見て、体験できる点が特徴。
地方が誇るものづくりの文化を広く体感することできるという、新しい楽しみ方を発信しています。
 

本社機能の一部移転や、支店開設で地域創生の流れを

 
北陸には、YKK(株)YKKAP(株)だけでなく、(株)小松製作所(石川県小松市)など、大手企業の事業所や工場もあります。
YKK(株)YKKAP(株)では、平成26年度に東京・千代田区にあった本社機能を黒部市に一部移転し、230人が異動しました。
さらに、事業所の社宅跡地に「パッシブタウン黒部モデル」という自然エネルギーを活用した街づくり(商業施設と集合住宅)を開始。第一期街区の入居が始まりました。

こうした地方への機能分散の流れをいち早く作ったのは、(株)小松製作所。
平成23年に本社機能の一部を石川県小松市の創業地に移転させ、150人が異動。その年から大卒者の地元採用も始めています。
また、医療機器・航空部品メーカーの日機装(株)は石川県白山市に新工場を建設。こうした移設や支店開設の動きは今後も広がることは間違いないでしょう。
また、石川や富山の地元企業が首都圏へ進出する例も少なくありません。

── 首都圏と、豊かな自然が広がる地方が短時間で結ばれることにより、地方創生の未来へつながっていく……。
実際、山や緑を間近に感じる職場環境は、東京とは違う豊かさと魅力があり、暮らしの質の高さを実感できれば、こうした動きは加速するのではないでしょうか。
 

2年目のジンクスを指摘する声も

 
順調な滑り出しをした北陸新幹線ですが、各新幹線の開業年の次の年は、客数が伸びない傾向があるのも事実。
たとえば平成9年開業の長野新幹線は、開業翌年に前年比95%となり、山形、青森でも同様の傾向があり、前年比割れに……。こうした背景から、観光強化やビジネス上での開業効果の継続について検討もなされています。
また、金沢・敦賀間が、3年前倒しで平成34年に完成・開業を目指すことが決定。小松、加賀温泉、福井等を通るルートで、最終的には大阪まで結ばれることが決まっています。

── 北陸には、自然環境が豊かで災害リスクが少ない、女性の有業率が高いなど様々
な利点があります。北陸らしさを残しつつ、新幹線による利便性をどこまで享受できるか。地方創生の鍵を、北陸新幹線は握っているのかもしれません。
 

≪記事作成ライター:中村深雪≫
ライター。千葉県出身。4月より金沢在住。
映画、舞台、飲食、住まいについての広告・取材記事や、著名人インタビュー、街歩きコラム等を手がける。
関東から北陸に来て、日本の魅力を再発見。現在は幅広いジャンルで執筆中。


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