「ふるさと納税」。“問題”あり!? 「地方を応援しよう」という本来の主旨はどこへ!


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“ふるさと納税”がすごいことになっていますね。
何がすごいかというと、それでもらえる“お礼”が、です。

ふるさと納税サイトをのぞいてみると、“お礼の品でチョイス”といったページがあり、「肉」「海老・カニ等」「菓子」「美容」「ファッション」「イベント・チケット」などといったカテゴリがならび、それらのおいしそうな写真も並び、まるでネット通販サイトを見ているようです。
そんな“ふるさと納税”、いまや“お礼品競争”と化しているようなのですが……。
 

地方を支援し守るための制度

 
自分の住んでいる市町村に納税する代わりに、日本全国の市町村に寄付をすると、そこの名産品などを“お礼”として送ってもらえることになっています。
各市町村はなるべく多くの人に寄付してほしいから、“お礼品競争”がエスカレートしているんですね。自転車とか、パソコンとか、なかには“宅地”まで……。
「どこが“ふるさと”なの?」と首をかしげたくなるようなアイテムまであります。

とはいえ、この“お礼品競争”でふるさと納税をする人が急増し、制度が始まった2009年は約3万人により73億円が払い込まれましたが、5年後の2014年度には13万人・142億円と倍増(金額)しています。
 

総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」

 
では、“ふるさと納税”とは、何でしょうか。基本に立ち返ってみましょう。
総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」には、次のように書かれています。

「多くの人が地方のふるさとで生まれ、その自治体から医療や教育等様々な住民サービスを受けて育ち、やがて進学や就職を機に生活の場を都会に移し、そこで納税を行っています。
その結果、都会の自治体は税収を得ますが、自分が生まれ育った故郷の自治体には税収が入りません。
そこで、『今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた「ふるさと」に、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があってもよいのではないか』、そんな問題提起から始まり、数多くの議論や検討を経て生まれたのがふるさと納税制度です」。

“納税”といっても、実際は“寄付”。払い込んだ金額のうち2000円が自己負担額となり、それ以外の全額分が所得税・住民税から控除されます。つまり、その分は自分の住む市町村から寄付をした市町村に移るということになるわけですね。

このことにより、一般の生活者が税金への意識が高まり、地方を支援し守ることにつながり、自治体としては「応援してもらえる自治体になる」努力を喚起するといった効用も見込まれているようです。
 

問題は、エスカレートする“お礼品競争”

 
その“自分を育んでくれた”ふるさとは、何も生まれ育った場所とは限りません。
「ちょっと1回旅行してその景色の美しさに心洗われた」とか、「行ったことないけどとってもお世話になった人の生まれた街だから」とか、何でもいいわけです。

何でもいい。どこでもいい。だから「おらが町に寄付してくんろ!」とばかりに、“お礼品競争”がエスカレートしているのでしょう。そこがいま、問題視されているわけです。

つまり、実質2000円の負担だけで(残額は税金の控除の形で返ってくる)豪華な品物が手に入るわけですから、納税(寄付)者にしてみれば、“お礼品”が目当てとなってしまうからです。これでは、本来の「地方を応援しよう」という主旨を歪めることになりかねませんね。

“お礼品競争”がエスカレートすると = お礼品にコストをかけることになるわけです。
1万円寄付してもらって数千円分のお礼品ならいいとしても、中には“原価割れ”が疑われるケースも。そうなると、お礼品のベンダーばかりが繁盛するということになっていまいます。

先の「平成28年熊本地震」の際には、甚大な被害に遭った南阿蘇村や益城町に「ふるさと納税」の形で寄付する人が多くありました。
実は“お礼品は不要”も選択できるのです。「税金を被災地にシフトすることが本来の支援のはずで、その被災地からお礼品まで受け取るのはしのびない」と考える人が返上しているようです。これこそ、「地方を応援しよう」という主旨に則った“ふるさと納税”なのかもしれません。
とてもいい話ですね。
 

≪記事作成ライター:髙橋光二≫
フリーライター・エディター。1958年、東京都生まれ。1981年、多摩美術大学デザイン科卒業後、㈱日本リクルートセンター(現・㈱リクルートキャリア)入社。2000年、独立して現職。主に経営者インタビュー、コンテンツマーケティング、キャリアデザインなどの分野で編集・執筆。


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