引退しても現役!アジアで活躍する日本の中古電車たち


マネセツ052(山本)/引退しても現役の中古電車

かつていわれた「人生50年」。時代は進み、いまは平均寿命は80年といわれます。
引退時期や寿命は人それぞれですが、それは電車も同じこと。

毎日のように通勤に利用する電車も永久に使い続けることはできませんから、稼働がある程度の年数を超えると、引退になります。鉄道車両の減価償却期間が13年と税制上の耐用年数が決まっているためです。
とはいえ、日本ではほとんどの電車が30年程度は利用されているのが現実。
驚くのはその先で、多くの電車は日本で長い間働いた後、アジア各地へ行き、主力車両として大活躍しているのです!
アジア圏で第二の人生を営み、国同士のかかわりを密にしている電車をご紹介します。
 

日本とインドネシアの鉄道規格は同じ

 
深刻な交通渋滞を抱えるインドネシアの首都ジャカルタ。
ジャカルタ特別州政府によると、人口や所得の増加で自動車やバイクの数が年10%程度増えているにもかかわらず、道路面積の伸び率は年0.01%に留まっているそう。
そこで、政府は公共交通機関の整備に乗り出し、日本の車両にスポットが当てられました。

なぜ日本の車両なのかというと、日本とインドネシアの鉄道の線路幅(1067ミリ)や電圧(1500ボルト)が同じ規格だからです。つまり、日本の車両をインドネシアに持ち込めば、そのまま運行できるというわけ。
その利点を初めて生かしたのは2000年のこと。
当時、都営地下鉄三田線では新車導入により72両の廃車が決まっていましたが、なんとか有効活用したいと、ジャカルタと姉妹都市関係を結んでいる東京都が、無償で車両を譲渡したことがきっかけです。

車両は製造後30年を経過していたものの、日本基準でメンテナンスされていたため、状態はすこぶる良好。
エアコンが装備されていたことも高ポイントとなり、暑いジャカルタでは追加料金を徴収する急行電車として運行されるなど、電車を走らせたジャカルタ首都圏鉄道(KCJ)の増収に一役買うほどになったのです。
 

安いうえに性能がよい中古車両で、運行拡充へ

 
これを機に首都圏鉄道(KCJ)は、日本から中古車両を次々に購入し、都営三田線の他にJR東日本や東京メトロなど4社の10モデルを獲得。2014年には合計892両を数えました。

日本から海外へ渡った中古の車両はおよそ1400両にものぼりますから、インドネシアではその6割を占める計算に。実に、ジャカルタの首都圏で走る電車の9割が日本の中古車両だというから驚きです。つまり、ジャカルタで電車に乗ると、かつての埼京線や横浜線など懐かしい車両に出会う可能性が高いことに。鉄道ファンにとってはたまりませんね。

また、KCJは中古車両の導入を増やしたことにより、2008年からの6年で運行本数を5割増加、1日の乗客数を65万人とこれまでの倍に伸ばしました。
ちなみに中古車両1両の価格は約10億ルピア(日本円では約820万円程度)。これは新車の1割の値段だそう。
KCJの初乗り運賃は3千ルピア(約25円)ですから、「新車はとても買えない」とトリ・ハンドヨ社長は説明しています。安いうえに性能も十分となれば、手にいれたくなるのも頷けますね。
 

将来の鉄道インフラ輸出を目指して

 
日本側からすれば、不要になった車両を売り込めるだけではなく、将来的に日本の鉄道インフラ輸出につながる可能性も視野に入れていました。

中古車両の輸出増大は大きなチャンス!
そこで積極的なセールスを展開しているのがJR東日本です。
2004年に京葉線に使われていた車両16両を販売して以来、これまでに合計422両を売却してきました。さらに、アフターサービスとしてKCJに技術者を派遣。2014年3月には鉄道運営における相互協力の覚書を同社と締結するなど、力を入れています。
さらに中古車両の売却にあたっては東京メトロなどが追随し、現在では各社から専門スタッフを派遣、技術指導にもあたるなど、確実に成果を上げています。

ジャカルタの首都圏における移動手段としてはいまだに道路が主役ですが、渋滞せずに速く走り、エアコンが効き、整備された電車が安全に運行することで、少しずつ電車通勤にシフトする人も増えているそう。
かつて、屋根の上に人が大勢乗っていた“名物車両”もいまや過去のもの。
爆発的成長を遂げるジャカルタの光景が、これまでとは違うものになってきました。
 

変わりつつあるインドネシアの鉄道網

 
首都ジャカルタと第2の都市スラバヤ間(約750キロメートル)を横断する鉄道として計画されているのが、「ジャワ島横断高速鉄道」です。
両都市を現在の半分以下の約5時間程度で結び、総事業費は2千億円前後という壮大な計画ですが、このたび、インドネシア政府がその鉄道建設を日本に要請する方針を固めた模様、と報道されました。

日本は円借款の提供を軸に協力を検討する予定で、インドネシアとしては年内に契約をまとめ、2019年までの完成を目指す方向とのこと。
先般、ジャカルタ─バンドン間(約140キロメートル)の高速鉄道建設(新幹線方式)における受注を中国に落札されたことも記憶に新しいと思いますが、今回の要請により日本の鉄道インフラ輸出が大きく広がりそうな気配と言えます。

── 日本で役目を終えた車両を売却し、鉄道システムを紹介していくことで、鉄道インフラ輸出につなげる可能性を探ってきた日本。
中古車両を安く導入して電車の運行本数や客数を伸ばし、アジアの大都会のひとつとして確実な発展を遂げているインドネシアの首都ジャカルタ。
中古車両を通じた両国の協力関係は今後も関心を集めそうですね。

参考:朝日新聞、日本経済新聞、外務省パンフレット
 
 

≪記事作成ライター:山本義彦≫
東京在住。航空会社を定年退職後、学校に通って介護資格を取得。現在は介護福祉士として勤務する日々。オペラをこよなく愛し、航空会社在職中より始めた音楽評論の執筆も継続している。


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