空からおカネが降ってくる?! いま話題の“ヘリコプターマネー”とは


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最近、時々見聞きするようになった“ヘリコプターマネー”。
その名のとおり、ヘリコプターからマネーをバラまくように、政府が国民におカネを渡す政策の通称です。

このネーミングは、1976年にノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマン先生が、1969年に提唱し、世界経済に絶大な影響力を有するFRBの議長に就任していたベン・バーナンキ氏(就任〜2014年)が、講演で「デフレ克服のためには、ヘリコプターからおカネをバラまけばいい」と言及。
それ以来“ヘリコプター・ベン”とのあだ名がつき、この政策が“ヘリコプターマネー”と呼ばれるようになったといわれています。
※FRB=連邦準備制度理事会=アメリカの中央銀行
 

デフレの解消に有効?

 
ではなぜそんな政策があるのかというと、バーナンキ氏の発言のとおり、デフレの解消に有効であると考えられているからです。

日本は、1989年ごろにバブル経済が崩壊し、90年代のはじめからデフレ基調となったとされています。
それ以来ずっとデフレは続き、景気は悪化。日本銀行は“量的緩和”(日銀が銀行などから国債や手形を買い、そのおカネで各銀行などの当座預金残高量を増やす形で市場にジャブジャブ資金を供給する政策)や“ゼロ金利”(日銀が銀行などに貸し付ける際の金利をゼロにすること)などの政策を繰り出しておカネのめぐりをよくし、デフレの軽減、つまりインフレ基調への展開に持って行こうとしました。
 

“アベノミクス”で好転するも…

 
しかし、デフレはなかなか退治できないでいるわけです。
現在、日本には30~40兆円ものデフレギャップがあるといわれています。
その大きな原因の一つは、日本国民が将来を不安視しておカネを使わなくなったことですから、そう簡単に克服などできないでしょう。
しかし、座視するわけにはいきません。いい加減決着をつけようと、安倍首相は“アベノミクス”という経済政策を大々的に打ち出したわけです。

“アベノミクス”は“3本の矢”で構成されていますが、その“第1の矢”が“黒田バズーカ”“異次元緩和”で一躍脚光を浴びた金融政策でした。
2%のインフレ目標を掲げ、マネタリーベース(市中への資金供給量)を2年で2倍にすると宣言。すると当然、日本円の価値が下がるので円安となり、輸出に有利に働くなどの理由で株価が1カ月余りで1万2000円から1万6000円まで上がるという事態となり、景況が好転したわけです。

しかしながら、中国はじめ新興国の経済悪化などで元の木阿弥に。
日銀はついに“マイナス金利”政策も繰り出しましたが、あまり効いていません。
しかも、ここにきてのイギリスのEU離脱騒動です。「こうなったら、銀行を通じての量的緩和やゼロ金利はまどろっこしい、“ヘリコプターマネー”を直接バラまくしかない」といった論調が出始め、この政策が注目されているというわけです。
 

効果への疑問視とリスク

 
仮にデフレギャップが30~40兆円あるとすれば、国民一人あたり30万円配って使ってもらえば、デフレは解消することになるでしょう。
1か月分の給料がタダでもらえれば、みんなウハウハになっておカネを使うことは予測できますね。

しかし、賢い人はチャッカリ貯金する可能性が大きいという懸念も……。これはつまり、将来不安が根本的に解消されるわけではないからです。
現に、1999年にヘリコプターマネーの一種である総額6200億円弱の「地域振興券」がバラまかれた際は、68%が貯蓄にまわったというアンケート調査もあります。よって、効果のほどが疑問視されているわけです。

さらに、国が直接おカネをバラまくためには、新たに国債を発行しておカネを借りなければなりません。
日本はただでさえ、1040兆円以上の債務を抱えている国です。これ以上の国債を発行すると、国債価格の下落つまり長期金利の上昇を招くという大きなリスクがあります(いまはマイナス金利なので展開が異なりますが)。
しかし円の価値は確実に下がり、下手をするとハイパーインフレを招きかねません。まさに逆効果。

── 政府や日銀は、本当に難しい舵取りを迫られているといえるでしょう。
 
 

≪記事作成ライター:髙橋光二≫
フリーライター・エディター。1958年、東京都生まれ。1981年、多摩美術大学デザイン科卒業後、㈱日本リクルートセンター(現・㈱リクルートキャリア)入社。2000年、独立して現職。主に経営者インタビュー、コンテンツマーケティング、キャリアデザインなどの分野で編集・執筆。


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