春になると各国でシーズンインするのが「野球」。日本でもプロ野球が開幕しましたが、開幕を待ちわびていた方は、さっそく球場やテレビで観戦を楽しんでいることでしょう。
ところで、全天候型のドーム球場以外の屋外型球場でプロ野球を観戦する際、心配なのが「雨天中止」ですね。ファンや観客はもちろんなのですが、チーム関係者にとっても悩ましいのが、この「雨天や荒天による試合中止」なのです。今回は、雨天中止によってチームにどのようなコストがかかるのかを考えます。
そもそも、プロ野球チームの収入源とは?
年間数十億円といわれるプロ野球チームの収入。主な収入源は「チケットの売り上げ」で、チームにもよりますが収入全体の40%以上を占めることが多いようです。
この次に金額が大きいのがテレビの「放送権」ですが、地上波での中継が減少傾向ということもあり、かつてほどの収入源ではなくなってきていると言われています。
このほか、グッズ売り上げ、チームによってはスタジアム内の飲食の売り上げ、広告収入などが、チームの収入源として比較的大きな割合を占めています。
ここで「チームによって」と書いたのは、「自前のスタジアムを持っているかどうか」「スタジアム内の飲食店とどのような契約をしているか」が、チームによって異なるからです。当然のことながら、自前のスタジアムを持ち、チームと連動したメニュー開発などの企画を立てやすいチームのほうが、この部分での売り上げを伸ばすことができる可能性が高いといえます。
では、試合開催にかかる経費とは?
プロ野球チームの支出のうち、およそ十数パーセントを占めるといわれるのが「試合経費」です。チームの規模によっても異なりますが、その金額は年間10億円前後にのぼるとみられます。
試合を主催するためには、「自前のスタジアムを持っていない」チームの場合、スタジアム使用料の支払い、選手や監督・コーチなどの「移動費」や「宿泊費」「食事代」、そしてスタジアムの警備や観客整理のための人件費、飲食物を販売するための仕入れ代金などがかかってきます。雨天中止になれば、これらの経費のかなりの部分が「無駄」になってしまいます。
「セ・パ交流戦」の導入などによる試合数の増加で、雨天中止が重なるとシーズン後半が過密日程になることが増えています。そこで、どのチームも「できれば中止にしたくない」と、多少の雨なら試合開催を強行(?)する傾向が強まっているのです。
ビジターチーム側も「雨天中止」はつらい?
試合のために遠征する「ビジターチーム」にとっても、雨天中止は大きな損害になります。選手や監督・コーチの「移動費」「宿泊費」「食事代」などの金額が、大きなものになるからです。チームの本拠地がどこなのか、帯同する人数、また旅行会社や航空会社と特別な契約を結んでいるケースもあり一概にはいえませんが、ビジター遠征のための費用は各チーム年間1億円前後といわれます。年間約140試合のうち約半分の試合がビジターであることを考えると、そのうち1試合でも中止になった場合のコストは決して小さくありません。
とはいえ、青空の広がる屋外スタジアムでの野球観戦は、ドーム球場では味わえない気持ちのよさがありますよね。これから野球観戦を予定されている方は、もしも雨天中止になってしまった時は、プロ野球チームの懐事情を想像して楽しんでみるのをおすすめします。
参考:「プロ野球 お金にまつわる100の話」(ベースボール・マガジン社)
《記事作成ライター:奥田ユキコ》
生まれも育ちも東京のライター。教育や語学、キャリア、進学、サイエンス、生活の雑学、ライフスタイルなどをテーマに、雑誌や広報誌、ウェブなどの記事を手がけています。「マネセツ」では、主にスポーツと「お金」にクローズアップした記事を書いていきたいと思います。
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