マイナンバー、相続税改正。個人財産が筒抜けの一方、国民側の実情=Happy度は?


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専業主婦を取り巻く環境やその労働対価について、2回に分けて考察してきましたが、今回は「世帯」に目を向け「世帯別の貯蓄」「共働き世帯」「世帯年収」「世帯の生活意識」を見てみることにします。

振り返れば2016年は、国民の財産を国が把握することへの是非が議論された、マイナンバー元年でもありました。自営業やフリーランスの人であればわかると思いますが、マイナンバー導入に伴い、身分証明書等の請求を依頼する封書が取引先から続々届き、平成28年度分の確定申告でも、書類の最上段にマイナンバー記載項目が新たに設置されるように。
その一方、管理されようとしている国民側の実情=Happy度はどうなっているのでしょうか。いくつかのデータから、その実情を見てみたところ……。

 

約4世帯に1世帯の割合で、預金がないUnhappyな現実

 

そもそも、国がマイナンバーを導入した背景には「公平・公正な社会の実現」「国民の利便性の向上」「行政の効率化」といった3つの理由が掲げられていました。一方で、国民一人ひとりのお金の出入りを把握することで、相続税をはじめとする“税逃れ” を阻止する国(税務署)の目論見も指摘されています。
金融機関にお金を預けようとしない傾向が強まる昨今、あえて盗難や置き忘れのリスクを負ってまで自宅に現金を置く理由は「マイナス金利」「マイナンバー対策」「ペイオフ解禁」「銀行ATMの手数料節約」「相続税対策」等、様々な要因があるといわれます。でも、それはあくまで財産のある人の話。「タンス預金をしたくたって、わが家にはお金がないから……」と嘆く人も多いのではないでしょうか。

 

 

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平成 25(2013)年国民生活基礎調査 – 厚生労働省

 

そこで「各種世帯別にみた貯蓄の有無」を見てみると、全世帯中16%で「貯金がない」という結果に。さらに、その16.0%と「100万円未満」の8.8%と合わせると、4世帯に1世帯の割合で「預金がない」「苦しい家計事情」に置かれていることが判明。

 

1992年以降、「共働き世帯」の割合が逆転

 

預金がなければ、塾や習い事などの教育費はおろか、家族旅行の費用もままならない……ということになります。昭和の時代であれば「家庭を守る母」「良妻賢母」が女性の美徳とされていましたが、全世帯の25%が苦しい家計事情を抱え、さらに老後の不透明感が社会を覆う中、最近では共働き世帯が急増。
そこで「共働き世帯数の推移」を見てみると、表の通り平成4(1992)年以降「共働き世帯」の割合が逆転し、今日では半分以上が共働き世帯になっていることがわかります。

 

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総務省


 

こうした変化に伴い、国内では「待機児童解消」「学童保育拡充」「長時間労働抑制」といった女性が働きやすい環境を整える労働環境整備と平行して、「男は仕事、女は家庭」といったジェンダー観念の撤廃(ジェンダーフリー)が加速。結果として「主夫パパ」「イクメン」「イケダン」急増に拍車がかかったといえます。

反面、時代の移り変わりを象徴する一例として、
── 手塩にかけて育てた息子がようやく結婚。母親としてホッとひと息ついたものの、息子より嫁の収入のほうが高いため、息子は家事・育児を担当することになり、いま流行りの「主夫」に。そんな息子夫婦の姿を見た母(姑)が、時代の移り変わりを嘆く ──。昨今では、こうしたケースも決して珍しくないものになっているようです。

 

平均可処分所得のピークは、50代の700万超え

 

次に「1世帯当たり平均可処分所得金額および世帯人員1人あたり平均所得金額」を見てみることにします。

「可処分所得」とは、税金や社会保険料などの非消費支出を差し引いた手取り収入のこと。
つまり、最も高い50代の世帯主の平均所得金額720万4000円は、「家計が自由に処分できる所得」を意味し、実際の収入はより高いことになります。

働き盛りで、仕事上での責任が増す50代が最も収入の高い世代であることは、さほど驚きのない結果といえますが、
●1世帯あたりの平均所得金額    ➡ 537万2000円
●1世帯あたりの平均可処分所得金額 ➡ 417万1000円
●世帯人員1人あたり平均所得金額  ➡ 203万7000円
みなさんの世帯収入と比較して、この数字は高いですか? それとも、低いでしょうか?

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平成 25(2013)年国民生活基礎調査 – 厚生労働省

 

 

全世帯の約6割が「生活が苦しい」と嘆く現実

 

先ほど平成4(1992)年以降に働き世代が逆転した……とご説明しましたが、「生活意識別世帯数の構成割合の年次推移」では、時を同じくして平成4(1992)年に、「大変苦しい」「やや苦しい」世帯の割合が一度減少したにもかかわらず、その後「大変苦しい」「やや苦しい」世帯の割合は、増加の一途をたどっていることが見てとれます
 

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平成 25年国民生活基礎調査 – 厚生労働省


 

結果、「苦しい」「大変苦しい」「やや苦しい」を合わせた割合は、平成25(2013)年に約6割の59.9%におよび、過去最高に。
共働きとはいえ、妻の収入はすべて自宅購入費のローンや教育費に消えてしまう……。
要職に就いた年収の高い父親が大黒柱となっていても、中学受験、私立校進学、大学進学にかかる支出が家系を圧迫している……。
働きたくとも、保育園に子どもを預けられずに退社を余儀なくされた……といった具合に、「ゆとり」を感じられない日常を送っている人たちが多いことも現実のようです。
HappyとUnhappyの受け止め方は人それぞれですし、お金や物をたくさん持っているからといって、それは決して幸せではないともいえるでしょう。そういえば最近、「清貧」という言葉を見聞きしなくなったと思いませんか。

── 最後に昨今大きな話題を呼んだ、第40代ウルグアイ大統領を務めたホセ・ムヒカ氏の言葉を引用します。〈若い人には恋する時間が必要。子どもが生まれれば、子どもと過ごす時間が必要。働いてできることは請求書の金額を払うことだけ。職場と家の往復をするだけに時間を使っていると、いつの間にか老人になってしまうよ〉。

≪記事作成ライター:岩城枝美≫ 
東京在住。大手情報サービス企業を退社後フリーランスに。二十年余にわたりあらゆるジャンルの取材・執筆、ディレクションに携わる。


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