トヨタがダイハツを完全子会社化! 自動車業界・再編の幕開けか


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今年8月1日、ダイハツはトヨタの完全子会社になりました。
トヨタにはレクサスのブランドがありますが、ダイハツもトヨタブランドの一角として名を残し、小型車部門の担い手となります。その狙いはやはり、新興国の需要の開拓です。

ダイハツの完全子会社化により、現在大手7社となった日本の自動車メーカーは、海外も巻き込み、さらなる業界再編が加速するのでは、という見方もあります。
今回は、そんな自動車業界にスポットを当てます。
 

グローバル展開の鍵は「軽自動車」にあり

 
1907年に大阪で生まれたダイハツは、自動車メーカーの老舗。
ダイハツと聞くだけで、自然と「タント」「ムーヴ」「ミラ」「コペン」などの名前の軽自動車が思い浮かぶのではないでしょうか。
なかでも「タント」は、2016年1月〜6月の上半期の新車販売台数が、8万9361台(前年比102%)で軽自動車部門2位。
ホンダのN-BOX(販売台数9万5991台)には及ばなかったものの、根強い人気を誇る車種です。
ちなみに、軽自動車の新車販売台数トップ10を見ると、5位に「ミラ」、8位「ムーヴ」がランクイン。ライバルでもあるスズキの「アルト」は4位に入っています。

ご存じのとおり、日本の軽自動車界はダイハツ、スズキ、ホンダの3社が牽引してきた歴史があります。
今回、ダイハツを完全子会社化したトヨタは、コンパクトカーからミニバン、高級車までフルラインナップで揃える国内唯一のメーカーとなりますが、その存在は、まさに自動車の総合デパート。販売台数は世界で1000万台を超えています。
また「プリウス」や「アクア」に代表されるハイブリットカーの先駆者であり、燃料電池車など環境技術でもトヨタは先行。自動車産業やステークホルダーのみならず、世界から注視されるトヨタの新たなチャレンジは、経済、自然環境保全といった様々な面から、持続可能な社会の実現を裏づけるものといえます。

しかし、そんなトヨタにも弱点があります。それは、「軽自動車を生産していない」こと。
つまり、ここに今回のダイハツ完全子会社化の理由があるといえます。
 

アジアにおける自動車メーカーのシェア争い

 
一方、ダイハツの事情を俯瞰すると、主力の軽自動車を海外で展開しているのは、インドネシアとマレーシアのみ。過去にヨーロッパの市場から撤退した経緯もあります。
国内に目を向けると軽自動車税の引き上げもあり、販売数は減少。他社が海外に活路を見いだす中、国内販売が約7割という厳しい現状が見えてきます。
生き残るためにトヨタと手を組んだのは、ダイハツにとってまさに必然の理と言えかもしれません。

もはや自動車産業のシェア争いは、国内のみならず世界に目が向けられていることは周知のとおり。では、トヨタ側のメリットは何かと言えば、まさに、苦手分野である小型車作りのノウハウだったのです。
 

インド市場で「5%」のシェア獲得にとどまるトヨタ

 
いま、世界的な大手自動車メーカーが、グローバルにシェア争いを行うなかで、鍵となるのが「新興国」です。

そもそも先進国のアウトバーンのような高速道路が発達した国で、需要が高いのは中型以上の自動車。一方、新興国で求められるのは低燃費・低価格の小型車。
要は、道路事情や経済事情によって中型車では“大きすぎる”というデメリットがあるのです。

中国、ロシアの自動車市場が減速するなか、活気あるインドに目を向ければ、1982年にいち早くインドに進出したスズキの圧倒的シェアが見えてきます。その驚くべきシェア獲得率は、なんとインド市場のシェア約50%!
これはまさしく、軽自動車のノウハウと、インドの風土を手中にしたスズキの理念と戦略の勝利。今日のインドでは、スズキのエンブレムをつけた車が広大な国土を駆けめぐっているのです。
一方、中型車以上を主力で展開するインドでのトヨタのシェアはどれほどなのでしょう。
実は、世界的な自動車メーカートヨタも、インドでは驚くことに「5%」のシェアにとどまっているのです。トヨタにとって「新興国」が鍵となる理由は、ここに顕著に表れています。

北米で成功をおさめるトヨタも、グローバル展開を強固なものにしていくため、今後は新興国対策が欠かせません。イコール小型車で勝負していく環境を作ることは、トヨタのグローバル前略にとって不可欠なものと言えるのです。
 

OEM供給にみる各自動車メーカーの関係

 
ちなみに自動車には「OEM車」というものがあります。OEMとは、提携先メーカーから商品を供給してもらい、外観、中身はほぼそのままで、エンブレムと車名を変えて販売すること。
軽自動車の場合、ダイハツがトヨタとスバルに、スズキがマツダと日産にOEM供給を行っています。軽のOEM車は数多くあるのですが、たとえばスズキ「アルト」はマツダでは「キャロル」として販売されています。

また、6月にフルモデルチェンジしたトヨタの小型車「パッソ」は、ダイハツが企画・設計から調達・生産まで一貫して担当して開発したOEM車。ダイハツでは「ブーン」として販売されています。
なかでも、どのメーカーともOEM提携も技術提携もしていない、唯我独尊を貫くホンダ。自動車メーカーの相関図を俯瞰すると、様々な事情が見えてきて非常に興味深いですね。
 

今後の自動車業界はどう展開していく?

 
今後、各自動車メーカーは、海外戦略を含めてどのように展開していくのでしょうか。
スズキとVWの包括提携後、様々な事情によって解消に動いたことはあくまで一例であり、同様に海外の自動車メーカーも激しく動いています。
ちなみに日産と三菱は、軽自動車生産のために「NMKV」という合弁会社を作りましたが、燃費偽装問題が発覚以降、対象4車種の製造・販売停止となっています。

── 軽・小型自動車のシェアから透けて見える、波乱含みの自動車メーカーの今と未来。
日本の自動車メーカーも業界再編があるのでは、と長らくささやかれてきましたが、今回のダイハツの完全子会社化が、その流れをどのように加速させるのか。数年後には、自動車メーカーが描く市場地図は、予想もつかないような様相になっているかもしれません。
 
 

≪記事作成ライター:中村深雪≫
ライター。千葉県出身。4月より金沢在住。映画、舞台、飲食、住まいについての広告・取材記事や、著名人インタビュー、街歩きコラム等を手がける。関東から北陸に来て、日本の魅力を再発見。現在は幅広いジャンルで執筆中。


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