アメリカ「P2Pレンディング」最大手のLendingClub(レンディングクラブ)が、12月11日にニューヨーク証券取引所に上場を果たし、時価総額1兆円規模となったことが話題になった。
今後、急拡大すると言われているP2Pレンディング業界における最大手企業の上場に市場の期待感が高まり、公開価格比約56%高の初値をつけている。
レンディングクラブが手掛ける「P2Pレンディング」の仕組みや、今回の時価総額の背景について、日本クラウド証券代表取締役社長 大前和徳氏に解説してもらった。
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個人から個人へクラウドでお金を貸す仕組み「P2Pレンディング」
そもそも、レンディングクラブが手掛ける「P2P(ピア・ツー・ピア)レンディング」とはどのようなシステムか。
「P2Pレンディングは、個人からお金を集めて個人へお金を貸す仕組みです。融資型クラウドファンディングとも言われるもので、アメリカの有名なクラウドファンディングサービス『キックスターター』のローン版と言えます。レンディングクラブの融資総額は2014年12月現在で6000億円規模にも及んでいます。」
では、融資の仕組みは?
「借り手側は融資の申込みをすると、クレジットカードの支払履歴や年収などに基づきAグレード、Bグレード、Cグレードといったように格付け評価され、その格付けに応じて借り入れ金利が変わります。お金を貸す側は、人物が特定できない形で、グレードを参考にリスクとリターンを考慮しながらお金を貸し出す相手を決定して、$25毎に分割されたノートに投資します。」
どういった人が主にレンディングクラブでお金を借りるのか。
「一番多いのは、クレジットカードのリボ払いにしていた人が、レンディングクラブで借り換えて分割払いに切り替える例です。金利を安く抑えることができることから、人気を集めています」
融資というと心配になるのが貸し倒れリスクだが、レンディングクラブは心配ないのだろうか。
「貸し倒れリスクは当然ありますが、$25毎のノートに分散投資することによってリスクも分散されます。例えば、年率13%の利回りがあり、4%の貸し倒れと1%の手数料が費用となり、ネットでは年率8%で運用するというイメージです。」
日本からレンディングクラブを利用した融資は可能か。また、日本でも同様の仕組みは導入できるのか。
「マネーロンダリングの問題もあり、レンディングクラブの利用は、アメリカ国内に限られます。法律上の違いから、そのまま導入することはできませんが、国内にも、似たようなサービスが複数ありますので、そちらを利用すると良いでしょう。」
「P2Pレンディング」のメリット・デメリット
では、「P2Pレンディング」のデメリットはどんなものがあるか。
貸し手側にとっては、「FXや株などと比較して、P2Pレンディングは年率7~8%の利回りですので、爆発的に儲かるものではありません。また先ほどお伝えした通り、一定の割合で貸倒れも発生するのでその点はよく考慮して投資する必要があります。」
一方、借り手側から見ると、「自分の信用力に応じて、柔軟にクラウドからお金を集めてクレジットカードの金利よりも低く借り換えられるという意味では大きなメリットがありますが、せっかくリボ払いの金額を減らしても、またカードの空き枠を使いすぎるとまた金利負担が増えてしまうので、気をつけなければいけません。」と回答。
話題を呼んだ時価総額1兆円
レンディングクラブが時価総額1兆円となったことをどう見るか。
「2008年のリーマンショックで金融機関が多額の損失を出したことをきっかけに、世界中の銀行で融資審査が厳しくなった。その影響で、十分に返済余力があっても融資を受けられない個人や中小企業が世界的に増加しました。そのような状況下で銀行とは異なるスタンスで融資額を増やしてきたのがP2Pレンディング事業者。世界の銀行貸付残高は数千兆円あり、その一部を今後代替する存在と言われています。今後10年で市場が数百兆円規模になると予想する専門家もおり、その期待感がレンディングクラブの時価総額に現れているのだと思われます。また、モルガン・スタンレー元会長ジョン・マック氏やクリントン政権時代の財務長官ラリー・サマーズ氏、カリスマITアナリスト、メアリー・ミーカー女史といったビッグネームが社外役員に名を連ねている点も注目です。これは日本で言えば、元大蔵大臣と野村証券の元社長が取締役になるようなもの。そんなドリームチームが支えている企業ですから、一兆円という時価総額に違和感はありません」
日本のクラウドファンディング会社NO.1を目指して
レンディングクラブの上場を受けて、最後に一言を。
「レンディングクラブの上場を市場が好意的に見ています。日本で同様の融資型のクラウドファンディングサービスを提供している会社が数社あり、弊社もその内の1社です。サービス開始してからこの1年間で20億円近い資金を集めることができ、さらにそのスピードは加速しています。日本においても確実に融資型クラウドファンディングの波がひろがりつつあります。」
日本でも近い将来、新しい形の金融サービス、クラウドファンディングがもっと身近になるであろう。
日本クラウド証券代表取締役社長 大前和徳
ライター 梅原ゆい
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