上場準備は従業員には朗報!?IPOと労務管理の関係


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上場というと、時価総額や資産、利益などが話題となるが、IPOを目指す段階になると、労務管理を見直す必要性に迫られるケースが多いという。ベンチャー企業では企業の成長を重視し、労務管理の面が疎かになっていることが多く、中には、ブラック企業といわれるような長時間のサービス残業を課す企業もみられる。

そこで、なぜ上場準備において労務管理体制の整備を重視するのか、どのようなことが問題となりやすいのか、カイセツする。

上場準備でなぜ労務管理を見直す?

そもそも、上場準備に入った企業はなぜ労務管理を見直すのだろうか。

日本取引所グループでは上場審査概要の中で、上場審査の内容として、東証などの一部・二部の市場では『コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が適切に整備され、機能していること』という項目を含んでいる。マザーズではやや緩やかな表現となるが、『コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が、企業の規模や成熟度等に応じて整備され、適切に機能していること』としている。

これらに含まれるコンプライアンスの中でも、労働関連法規の遵守は、近年特に重視される傾向にある。取引所による上場審査の前に、主幹事証券会社による引き受け審査の段階で労務管理の問題が発覚すると、経営状況がよくても、上場の遅れや上場のストップに繋がりかねない。そのため、上場準備の一環として労務管理の見直しが図られるのである。

労務管理で問題になりやすいこととは

では、どういった点が労働関連法規の遵守として問題になってくるのか。

まず就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する場合、労働基準監督署に届け出義務があり、規定を変更した際にも都度届け出る必要がある。会社の実態に見合った就業規則を整備し、届け出を行なわなければならない。

就業規則等の人事関連の規定が整備されていても、運用で問題になることが多いのは、残業代の未払い問題とアルバイトやパートの労働者の社会保険の未加入問題である。

サービス残業が問題になるのはもちろんであるが、みなし労働時間を定める裁量労働制を導入している場合も法に則したものとなっているか問われることになる。専門型裁量労働制では適用される職種が19業務に限定され、労使協定を締結して労働基準監督署に届ける義務がある。企画業務型裁量労働制では対象は6つの業務で、労使委員会の決議で5分の4以上の賛成を得て、労働基準監督署に届ける義務があり、要件はより厳しい。

正社員や契約社員に限らず、アルバイトやパートタイマーも労働時間や労働日数等が要件を満たしていれば、社会保険への加入が義務づけられている。

昨今、偽装請負が問題となることがあるが、労働者と請負契約をしているにも関わらず、直接指揮命令を行うケースは、偽装請負とみなされる。

特に残業代の未払いが発覚した場合には、経営状況へも影響するため、主幹事証券会社との事前準備や審査の段階で将来的なリスクと判断され、上場への行程がストップする可能性が懸念される。そのため、上場準備においては労務管理が重視されるのである。

従業員側からみると、勤務先の企業が上場準備に入ったら、ストックオプションいう金銭的な面で期待できるだけではない。労務管理などの法令順守に、企業側がこれまで以上に前向きに取り組むことで、働きやすい環境にもなることもメリットといえよう。


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