地上波でも中継されるほど注目度が高い、フランス競馬の祭典「凱旋門賞」。
毎年のように日本のサラブレッドが遠征しますが、今年は日本ダービー馬マカヒキが挑戦し、大きな話題を集めました。
凱旋門賞といえば、それと同じぐらい注目を集めたのが「馬券」。
これまで発売されることのなかった、「海外の競馬レースの馬券」が初めて発売されたのです。
法改正を経てようやく実現にこぎ着けた、海外レースの馬券発売。その経緯を検証しました。
「海外馬券」発売への、遠く長い道のり
ギャンブルへの規制が厳しい日本
競馬の施行と馬券発売は、JRA(日本中央競馬会)や地方自治体などの、公共性の高い団体に限定されてきました。
その一方で、1990年代から、日本で実績を挙げたサラブレッドの「海外遠征」が当たり前に。
たとえば、ディープインパクトやオルフェーヴルの凱旋門賞は、国民的な関心を集めました。ヴィクトワールピサやジャスタウェイの、ドバイでの活躍に胸を躍らせた競馬ファンも多いことでしょう。
多くの名馬たちが、国境を越えて活躍する時代が到来するとともに、日本の関係者やファンの間で、海外レースの馬券発売を望む声が大きくなっていったのです。
JRA側にも、有力馬が海外に遠征するのは「国内レースの空洞化」につながる、という危機感がありました。
そして2015年、ついに「競馬法」の改正が実現。
日本のサラブレッドが出走する海外レースの馬券を、発売できるようになったのです。
いよいよ発売された「海外馬券」、その売り上げは?
2016年10月2日、凱旋門賞当日の、日本時間午前10時。
記念すべき、初の「海外レース馬券の発売」が実施されました。
フランスでレースが実施されるのは、日本時間の午後11時(23時)。その直前まで、およそ11時間にわたり馬券が発売されたのです。
その売上額は、およそ41億円。
同じ月に開催された「天皇賞(秋)」の売り上げが約190億円ですから、「小さな金額」と言えないこともない数字です。
しかし、海外レースの発売は「インターネット限定」で、しかも「所定の会員制度への入会」が必要。それでこれだけの数字を叩き出したのですから、上々のスタートといっていいのではないでしょうか。
その後も、JRAは次々と海外レースの馬券発売を実施。
11月1日の「メルボルンカップ」(日本からはカレンミロティックが出走)では、約7億円の売上、11月5日(日本時間6日)の「ブリーダーズカップフィリー&メアターフ」では、約8億円の売上を計上しました。
どちらも、「平日の午後」「日曜の早朝」という条件を考えれば、大成功といえる数字です。
海外馬券の発売には、どんな効果が見込める?
JRAの売り上げは、まずはファンへの払戻し、そして国庫への納入金に使われ、残りはJRAじたいの運営に充てられます。
「海外レースの売り上げ」が定着すれば、遠征費用の補助など、馬の強化のための新たな財源が手に入ることになります。
馬券検討イベントやパブリックビューイングの開催など、さらなる集客の可能性も高まるでしょう。
次に海外レースの馬券が発売されるのは、おそらく12月の「香港国際競走」(例年、多くの日本馬が遠征)。
レースに関する情報(出馬表、馬場状態、オッズなど)は、JRAのウェブサイトで随時発表されます。
また、外国語がある程度わかれば、現地から発信される情報をインターネットで入手することができます。
日本の馬と関係者の健闘を祈りつつ、馬券検討も楽しんでみてはいかがでしょうか。
参考:「優駿」2016年9月号(中央競馬ピーアール・センター)
《記事作成ライター:奥田ユキコ》
生まれも育ちも東京のライター。教育や語学、キャリア、進学、サイエンス、生活の雑学、ライフスタイルなどをテーマに、雑誌や広報誌、ウェブなどの記事を手がけています。「マネセツ」では、主にスポーツと「お金」にクローズアップした記事を書いていきたいと思います。
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