年金制度〈超〉入門 その7【終】 ── 社会保険の制度改革の影響は?


マネセツ117(古賀)年金07(終)/メイン

「将来、本当に年金がもらえるの?」という不安に少しでも備えるため、あるいは、複雑な年金制度を理解するため、これまで6回にわけて年金制度のアウトラインを紹介してきました。

年金の話題は今回でいったん収束させますが、締めくくりとして、今年の秋に行われる、年金制度も大きく影響を受ける社会保険制度改革を見てみましょう。
 

「130万円の壁」が、「106万円の壁」へ

 
2016年10月から健康保険や年金などの社会保険の制度が大きく変わります。
これは社会保険がカバーする対象を拡大し、セーフティーネットを強化するとともに、女性の就業を促進することが目的です。この改革では、短時間労働者への厚生年金・健康保険の適用が拡大されます。
現在厚生年金・健康保険の適用条件は、
【週所定労働時間30時間以上】
……となっています。
これ以下であれば、配偶者控除も受けることができますし、厚生年金に加入する必要はありません。
これ以上になると、保険料を支払わなければなりません。
そのため労働時間30時間は、一つの分岐点です。年収130万円に相当するため、「130万円の壁」と言われています。
しかし、労働時間を少なく調整すれば年金保険料などを払わなくてもいい仕組み、つまりは働かないほうが得する仕組みは、女性の就業に障害になる、という考え方から改正が行われるのです。

10月の改正では、
【週所定労働時間20時間以上】
【月額賃金8.8万円以上(年収106万円相当以上)】
……この条件に当てはまると、厚生年金・健康保険が適用されることになります(つまりこれらの保険料を払わなければならなくなる。ただし学生、従業員500人以下の企業は適用除外)。そして、本改正によって、これまでの「130万円の壁」が、「106万円の壁」と低くなることで、約25万人が新たに厚生年金に加入することが見込まれています。
 

「3号制度」は廃止される?

 
これは、現在の手取りだけではなく、年金制度にも大きく影響します。
全国民に受給される国民年金(基礎年金)の受給者には、職業別の区分があることはすでに紹介しました。ここで、もう一度確認しましょう。

① 第1号被保険者:自営業者等とその配偶者・学生・短時間労働者
② 第2号被保険者:民間サラリーマン・公務員
③ 第3号被保険者:専業主婦(第2号被保険者の配偶者)等

平成23年度の国民年金(基礎年金)の加入者の内訳は、おおよそグラフのようになっています。
●ブルー(約1,904万人) ➡ 第1号被保険者
●オレンジ(約441万人) ➡ 第2号被保険者(共済組合・公務員など)
●グレー(約3,451万人) ➡ 第2号被保険者(民間企業)
●イエロー(約978万人) ➡ 第3号被保険者

マネセツ117(古賀)年金07(終)/図表①

このうち、③に該当する「第3号被保険者」は基礎年金の保険料を払っていません。
つまり、民間サラリーマン・公務員の配偶者(具体的には専業主婦または主夫)であれば、保険料を払わなくとも年金が受け取れるのです。これは「3号制度」と呼ばれ、でこの制度ができたのは1986年のこと。それまでは専業主婦には年金権がなかったのです。
この新たな制度によって、20歳から60歳まで第3号被保険者であった場合、平成28年度で年間780,100円を受給することができます(国民年金と同規模)。

ところが、①に該当する「第1号被保険者」である自営業者等の配偶者は、自分の基礎年金保険料を払っていますから、「不公平である」という指摘が多くあります。
また、第3号被保険者の年金の財源は、厚生年金制度から拠出されていますから、例えば女性の単身者(独身)に該当する「第2号被保険者」にしてみれば、「自分は同じ女性であるのに、単に独身というだけで、専業主婦のために保険料を払っている!」ということになってしまい、ここにも不公平が存在します。
加えて、「3号制度」の仕組みは非常に複雑で、配偶者が退職したり再就職したりするたびに、種別変更を行わなければならない煩雑さも問題視されています。
 

専業主婦=「3号制度」は、もはや時代遅れ!?

 
10月の改革で、「106万円の壁」となることで、さらに労働時間を調整する(減らす)人が多くなるかもしれません。
たたでさえ人口が減少して、労働力が不足する傾向が強いのですから、これではデメリットが大きくなってしまいます。そこで、「3号制度」を廃止すべきだ、という議論が起こっているのです。

つまりこれは、結婚している女性にももっと働いてもらって、保険料(厚生年金・健康保険)を払うことを促すための制度改革。
そもそもこの「3号制度」は「サラリーマンの夫と専業主婦」という日本従来の「家族モデル」を基盤にしたものですから、時代が変わり「結婚後も働く女性が増えてきた」、あるいは「結婚しない女性が増えてきた」という今日、時代遅れの観は否めません。
「130万円」から「106万円」へ“壁”が低くなった一事象は、「女性の活躍」を謳う政権の一施策とも取れますが、今後さらにどのように舵が切られていくのか……。日本に蔓延した「将来への不安感」を払拭するためにも、「年金制度の次の一手」にぜひ注目したいところです。
 
 

≪記事作成ライター:帰路游可比古[きろ・ゆかひこ]≫
福岡県生まれ。フリーランス編集者・ライター。専門は文字文化だが、現代美術や音楽にも関心が強い。30年ぶりにピアノの稽古を始めた。生きているうちにバッハの「シンフォニア」を弾けるようになりたい。


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