若い人にこそ理解してほしい介護保険制度。 他人事だと思っていたら大変なことになりかねません!


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毎年11月11日は「いい月(ひ)、いい日(ひ)」で『介護の日』。厚生労働省はその前後2週間(11月4日~17日)を介護の啓発活動の重点期間と定めています。

介護保険は40歳から加入のため、若い世代にはピンとこないかもしれませんが、実は年金、医療と並んでわが国の将来をも揺るがす問題を抱えています。
団塊の世代が75歳を超える2025年、国民の3割は65歳以上の高齢者になり、その2割が認知症と予想されています。もし介護保険が破たんしてサービスがなくなったらどうなるでしょう? 老人の16人に1人が徘徊している街を想像できますか? 
「いい月」にちなみ、もはや他人事ではない介護保険について考えてみましょう。

 

介護保険制度のキホン

 

➀ 介護保険制度とは
介護保険制度とは、国民が介護保険料を払うことで、介護が必要になったときに1割もしくは2割の自己負担で介護サービスが受けられるようにする社会保険方式の制度です。
高齢で寝たきりや認知症になったら介護が必要になります。長年、その役割を担ってきたのは家族でしたが、核家族化が進み介護しきれなくなったため、社会全体で支えあうしくみとして2000年にスタートしたのが介護保険です。

② 保険料と保険給付
40歳以上の国民は介護保険に加入し、保険料を支払うことが義務づけられています。
65歳以上の高齢者(第1号被保険者)が介護の必要な状態になり、要介護認定(軽度順に要支援1~2、要介護1~5)を受けると介護サービスにかかった費用の8割~9割が保険給付として支給されます。40歳~64歳の若年者(第2号被保険者)は定められた特定疾病によって介護が必要になった場合に介護保険サービスが利用できます。
一方、介護保険の財源は、50%を保険料でまかない、残りは国(25%)、市区町村(12.5%)、都道府県(12.5%)が拠出する負担金です。

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介護保険制度の現状と将来

 

➀ 利用者の増加
制度創設から16年を経過し、65歳以上の被保険者数は創設時の約1.5倍、3000万人を超えました。介護サービスの利用者も約3.5倍に膨れ上がり、2013には511万人を達成。社会的になくてはならない制度として定着しているといえるでしょう。
また、要介護(要支援)の認定者数も2000年の218万人から約2.79倍の608万人となりました。特徴は要支援1から要介護1までの軽度の認定者の増え方が大きい(3.43倍)ということです。

② 後期高齢者(75歳以上)の急速な増加
今後、高齢者の数は増え続け、65歳以上の高齢者は、2025年に3657万人に、ピークを迎える2042年には3878万人になると予想されています。
しかも、介護保険の利用が増える後期高齢者(75歳以上)の人口の割合は急速に増加し、2010年には11.1%だった割合が、2025年には18.1%に、2055年には26.1%となり、なんと国民の4人に1人以上が75歳以上の高齢者になると予想されています。

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③ 認知症高齢者の増加
また、介護保険の利用者となる“認知症高齢者”の割合も増えていくと予想されています。
九州大学の二宮教授の研究によれば、2012年に462万人(65歳以上人口の15%)だった“認知症高齢者”は2015年には約700万人となり、65歳以上人口の約20%に上る、とのこと。
これは65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になる計算です。

④ 介護費用の増加と保険料の引き上げ
2012年度にかかった介護保険の総費用は8.8兆円でした。初年度は3.6兆円だったものが、わずか12年で約2.5倍に増加(地方交付税によってまかなわれている事務コストや人件費などは含まず)。2014年度の予算では総費用は10兆円の大台に達しました。
費用が膨らむとともに、65歳以上が支払う保険料も3年ごとに引き上げられています。第1期は全国平均2911円でしたが、2012年から2014年の第5期には4972円と当初の1.7倍になり、現在進行中の第6期では月額5514円と5千円を突破。しかも、2025年の推計では8165円になると推計され、年金で暮らすお年寄りが払う額とは思えない高い保険料となっています。

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●介護保険の財政的危機は立て直せるか

 

2025年には団塊世代のすべてが75歳を超え、介護費用の予測は21兆円です。介護保険料の値上げ、公的資金の負担増では限界になり、このままでは財政的な危機を迎えるのは明らかです。

政府も手をこまねいているわけではなく、制度を改正して費用の削減に努めてきました。2005年の改正では、施設給付を見直して食費・居住費を保険給付の対象外とし、2011年には、在宅介護の支えとなる地域包括ケアを推進しています。
さらに、2014年には、全国一律だった予防給付(訪問介護・通所介護)を市町村が取り組む地域支援事業に移行し、一定以上の所得がある利用者の自己負担を2割へと引き上げました。
しかし、これらの施策だけではまかなえないことが予想されており、介護保険制度の破たんが危ぶまれています。

将来に向けて

保険財政を立て直すためには、介護費用を抑制するか、保険料収入を増やすしかありません。しかし、費用を抑えれば介護サービスの水準が低下することになり、保険料を引き上げればお年寄りの生活に深刻な影響を与えかねないのです。
考えられるのは、現在40歳以上となっている第2号被保険者の対象年齢を20歳まで引き下げ、被保険者の数を増やすという手段です。保険料収入が増え、介護保険制度の財政を立て直すには最も有効な方法だと言えるでしょう。

── 若年層にとって介護は遠い存在で、自分が年老いてサービスを受ける姿を想像するのは難しいかもしれません。しかし、年金と同様、誰でもいつかは介護保険サービスを受ける年代になります。いま、財政が破たんすれば、将来自らを支えてくれる制度がなくなってしまいます。

 介護保険制度の対象年齢を引き下げる案には、現役世代が高齢者を支える賦課方式の性格が強まり、世代間格差の拡大になるのではないか、という反論もあります。しかし、現在の若者が高齢者になったときに介護保険制度が存続していれば、将来の現役世代が支えてくれるわけです。
日本の未来のためには制度の存続が不可欠だと言わざるを得ません。他人事とは思わずに、まずは介護保険に意識を向けることから始めてみてはいかがでしょうか。

≪記事作成ライター:山本義彦≫
東京在住。航空会社を定年退職後、専門学校に通って国家資格を取得。現在は介護福祉士として勤務する日々。オペラをこよなく愛し、航空会社在職中より始めた音楽評論の執筆も継続している。


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