今年1月30日から、東京都心部(23区、三鷹市、武蔵野市)のタクシー初乗り運賃が改定されました。
これまでは「初乗り730円/2km」でしたが、今回の改定で「初乗り410円/約1km」となり、都市部のタクシー初乗り運賃としては全国最安値となります。
タクシーの利用低迷が続くなか、業界は新たな需要拡大への期待を寄せ、利用者からも「安くなるのは大歓迎」との声が聞かれますが、果たしてタクシー離れに歯止めはかかるのでしょうか? 運賃改定にともなう東京のタクシー事情、その動向を探ってみました。
初乗り運賃は値下げになるも、中距離以上は値上げに
今回スタートした新運賃は、初乗りの運賃・距離とともに、初乗り後の加算運賃・距離・時間なども改訂されています。
新・旧の運賃システムを比較すると、渋滞などの道路事情にもよりますが、約2km弱以下の距離であればこれまでより安く、約2km弱~6.5kmはほぼ変わらず、6.5km以上では割高になる計算となります。
昨年、国土交通省が行った初乗り410円の実証試験では、アンケートに答えた利用者(約1万人)の6割が「利用回数が増える」と回答。一方で「中距離以上が値上げになるのは困る」という意見も多く、新運賃に対する利用者からの反応は微妙なようです。
「ちょい乗り」需要の開拓を狙うタクシー業界
新運賃が導入された背景には、利用者が減っているタクシー業界の厳しい現実があります。国土交通省によると、全国のタクシー利用者はこの10年で約3割減。電車・地下鉄・バスなどの交通網が整った東京都心部では、それ以上に減少しているとみられます。
こうした事態を受け、東京でスタートした新運賃は、近くても気軽に利用できる運賃設定にすることで、短距離の「ちょい乗り」需要を開拓しようという戦略です。子育てママさんの買い物の足に、高齢者の通院の足に、ビジネスの移動の足に……等、身近な生活の足として、タクシーの存在感を高めようというわけです。
また、国際水準に合わせた割安運賃で、2020年の東京オリンピック・パラリンピックや、近年増加する外国人観光客の利用を促したいという狙いもあります。
ちなみに、ニューヨークのタクシー初乗り運賃は「約420円/約320m」、同じくロンドンでは「約420円/約260m」(いずれもチップを含めて試算)。タクシー利用率が高い両都市と比べても、東京の新運賃「初乗り410円/約1km」は良心的で、訪日外国人にも優しい「おもてなしプライス」といえるでしょう。
ちょっとそこまでの移動手段として一般化すれば……
ただ、短距離利用が手頃になっても、中・長距離は値上げとなることから、実質的な利用者増・売上増となるかどうかは様子見といったところ。
現場のドライバーの間では、「これまで乗らなかった人の利用が増えれば、売り上げも増える」「利用者が増えても、短距離ばかりでは売り上げが減る」など、期待と不安の声が交錯しているようです。
いずれにせよ、都市生活の新しい移動手段として、ちょい乗りスタイルが社会的に定着するかどうかが今後のカギとなるでしょう。
近年、全国的に初乗りの距離は短縮傾向にありますが、運賃は据え置き、実質的には値上げとなるケースが多いようです。実際に名古屋や福岡などの7都市では、業界から実質的な値上げが申請され、運賃改定に向けた審査が進められています。そうした中で、距離を短縮して大幅値下げに踏み切った東京の初乗り運賃。
あまり歩きたくない筆者としては、気軽にちょい乗りできるのはうれしいかぎりですが、さて皆さんはいかがでしょう。
ちょっとそこまで乗っちゃいますか? それとも歩きますか?
※参考:朝日新聞
≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫
約20年にわたり、企業広告・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌などのライティングを手がけています。金融・教育・行政・ビジネス関連の堅い記事から、グルメ・カルチャー・ファッション関連の柔らかい記事まで、オールマイティな対応力が自慢です! 座右の銘は「ありがとうの心を大切に」。
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