景気上昇を実感できない日本、日銀も苦悩


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日本の経済環境は一向に改善する気配がないようで、先進国が金融緩和からの出口戦略を模索する中、一人取り残されているようです。
そこで今回は、日本の経済状況と日銀の金融政策を振り返ってみましょう。

第1四半期のGDP(国内総生産)は、0.3%前期比、1.0%前期比年率となっています。下記のチャート(出所:内閣府)は、前期比ベースでの推移について2014年から示しています。大きな落ち込みはないものの、目立った伸びも見られない状況と言えます。
特にここ2年間は0.3%~0.4%の伸びであり、これが結果的に日銀の目標であるインフレ率2%達成が困難な状況にあることを如実に物語っているようです。
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このグラフをもとに、端的に纏めてあるIMF(国際通貨基金)の日本の解説部分を読みました。外部からの冷静な見解によると、GDP予想は、今年1.3%前年比成長を予想しています。一番の儲け口は外部要因です。つまり輸出体質が依然として根付いているということです。これまでは、この体質を改善しないといけないと散々言われてきましたが、依然として改革がなされていないようです。直近の貿易統計を見ても、6月貿易収支5,185億円黒字と、黒字体質基調に戻っています。一時期原油高もあり、輸入が極端に増えていき、赤字体質の貿易収支にありました。
しかし、ここの所元通りの黒字体質に戻ってきています。参考までに、経常収支について言及すると、今年上半期経常収支10兆5,101億円黒字と、国内企業が海外で投資して稼ぐ収支がリーマンショック後最高収益となっています。このことを考えると、輸出と共に、海外投資でも収益を稼ぐ構造になっていると言えます。その意味でも、国内で稼ぐ体質を見つけないといけないと言えます。

そのことを、IMF報告書では辛口で語っています。国内個人消費、投資は緩やかであり、インフレ率は頑固なほど低くなっています。失業率は25年ぶりの低水準にあるにも関わらず、賃金水準は上昇しない状況であると指摘しています。男女格差は依然として現存しているようです。そしてIT企業などハイテク分野を除いた外国人労働者との賃金格差もあるようです。この辺りの構造改革の必要であるのでしょう。
賃金上昇→個人消費刺激→価格上昇の好景気の循環に入るのには、まだ時間がかかるようです。政府としても公的債務がGDPの240%にのぼり、また消費税引き上げが2019年秋にずれ込む状況から、大胆な政策が打てないジレンマに陥っている状況と言えます。この辺りのことをIMFは鋭く指摘しています。そして今後の人口減少と、外国人労働者を受け入れるべきかIMFの議論は続きます。

物価つまりインフレ状況はどのように推移しているかについて見ましょう。下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は、2013年からの日本のインフレ状況を示しています。特に黒線の日銀(BOJ)調査のコアコア(生鮮食料品、エネルギーを除く)指数に注目してきたいですね。昨年年初以来下落を続けています。
そして4月には、マイナスの数字を示している。6月時点ではゼロ近辺にあるようです。グラフを見ると、一向に物価が上昇へとは向かわない現状があると言えます。
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日銀は物価が目標の2%に近づかない現状から、7月下旬に開催した日銀金融政策決定会合で、物価目標の達成時期を「2019年度ごろ」と再び先送りしました。黒田日銀総裁は、2013年4月就任時に、デフレ経済から脱却できない日本経済に対して、異次元金融緩和政策を開始するとして、「2%の物価目標を2年程度で達成する」という目標を掲げました。
2015年半ばで達成する見通しが約4年ずれていると言えます。昨年9月イールド・カーブ・コントロールと、聞きなれない金融政策に打って出ました。10年国債の金利をゼロ近辺に固定し、市場に潤沢に流動性を供給するとして、強力にデフレ脱却を図りました。7月上旬には10年国債が0.10%を上回ると、国債の指し値オペを実施し、強力に金利上昇を防ぐ意図を市場に示しました。
このことで、海外市場関係者は、日本の金利は当面上昇しないと判断し、為替市場では日米金利差が拡大すると読み、円安が進みました。日本銀行はこれから先、かなりの期間、金融緩和政策の方針は変更する予定はないと言えます。これが先進主要国中央銀行と大きく異なる金融政策方針と言えます。基本的には為替では今後も中期的に円安進行するというのが筆者の見立てです。

国内政治にも若干のほころびが生じてきているように思います。安倍首相は、森友問題、加計問題から、国民の信頼を失いつつあるように思います。そして今月上旬、内閣改造に踏み切りましたところ思わぬ展開になっているようです。安倍首相とは反対サイドに位置と思われていた野田元郵政大臣を総務大臣に起用する人事を発表しました。野田氏、岸田前外務大臣、石破元地方創生大臣などが、次期自民党総裁選挙出馬候補として推測されます。
そして自民党支持層で安倍内閣には賛成できない層の受け皿として、小池東京都知事の流れを受け継ぐ日本ファースト党なる新党が誕生してきています。若狭衆議院議員が党首で、どこまで反自民党の受け皿になるかは不透明です。安倍自民党が今後も不祥事を引き起こせば、日本ファーストが勢いを得てくるのかもしれないですね。そうなると、経済対策であるアベノミクスが危うくなります。

経済中心に対策を打たないといけない所で、政治に翻弄されては、アベノミクスの行く末に不安を持ちます。経済対策は打てるのか、そして日銀との連携は上手く行くのか。日銀は金融政策で支えるものの、財務省中心の財政政策には一抹の不安を個人的には覚えます。安倍首相の経済政策を受け継ぐのではと予想される岸田前外務大臣は、アベノミクスは引き継ぐのでしょう。キシダノミクスとでも命名するのでしょうか。
その他の候補では、新味のある政策を打ち出してくるのではないかと思います。特に郵政事業には反対していた野田総務大臣は新鮮さをアピールするのではないかと思います。こんな政治不信から、日経平均が海外の主要株式指数と比べても、大きく上昇しない理由になっているのではないかと思います。

外部環境を見ても、北朝鮮問題が急速に問題化する様子であり、地政学リスクを意識する金融市場です。国内、国外と暗雲が立ち込める状況が醸成されるのではないかと心配をしています。ミドルリスク、ミドルリターンのクラウドファンド商品は、その保険として役割を果たします。しっかりと自身のポートフォリオに組み込みましょう。

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«記事作成ライター:水谷文雄»
国際金融市場に精通するInvestment Banker。
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替および金利・債券市場部門で活躍、
外銀を知り尽くす国際金融のプロフェショナル。新興の外国銀行(中国信託商業銀行 )の
東京支店開設準備に参画しディーリング・ルームの開設を手掛ける。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、
スペインと日本との文化・経済交流を夢見るロマンティスト。


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