金融社会が激変するフィンテックの進化


前回10月のフィンテックの考察では、金融とITとの関連で、IT技術が次第に金融の世界に食い込んでいるとの説明をしました。筆者は各種セミナーに参加して、フィンテックがどの程度金融業界に食い込んできているのか、また金融界の担当者はどの程度、フィンテックの食い込みに危機感を持っているのか、実情を聞いてきました。
情報会社ブルームバーグ主催の「金融業界におけるイノベーションと競争力向上」とのセミナーは興味深いものでした。

A金融グループ役員からは、デジタライゼーションがグローバルに変化してきており、その分野への投資不足を指摘されました。特に中国で起きている変化を紹介されました。
現在中国では街角から現金が消えてきています。つまりあらゆる決済が、ネット上で出来る社会になってきているというのです。スーパーでの決済、タクシー乗車での決済、レストランでの決済、ネットでの物品購入の決済と、現金からオンラインでの決済へとシフトしています。
このような社会がいずれ日本にも訪れるのではと、その役員の方は痛感されていました。それに対して金融機関のインフラを早急に整備しないとなりません。これまで培ってきたストックでは稼げなくなってきています。現在の事務部門と、デジタル部門、システム部門を融合する努力をしないといけないと強調されました。
その一つが人工知能を持ったロボットの活用と言うことです。RPA(Robot Process Automation)という聞きなれない言葉が飛び交いました。事務部門の簡略化、そしてそれにロボットが活用され、現金決済からネット決済の膨大な処理を任せることになります。

次にB金融グループ役員の話に聞き入りました。こちらの役員も現在の状況に危機意識を募っているようです。従来型の事務部門、顧客と対面した現金の受け渡しは今後は効率化していく方針のようです。そしてこちらもデジタル・イノベーションという言葉を持ち出されました。

その方は現在、IT関連の企業と合弁の企業を立ち上げられています。基本コンセプトは、
1.オープンイノベーション
2.プラットフォーム
3.ビジネスオリエンティッド
4.グローバル・フォマット
5.ガバナンス・マネジメント
と言うことでした。が、この言葉だけでは良く理解できませんね。
そこでより具体化した用語を持ち出してきて、そのインテグレーションを進める、つまり統合、融合するということ。その用語は、1.クラウド、2.ビッグ・データ、3.インターネット、4.ブロック・チェイン、5.アルゴリズム であるという話でした。

この用語は、フィンテックで良く使われる用語であり、筆者には最近馴染みがあります。これを効率よく組み合わせて、新しい時代の金融業界に姿に対応して行くというのです。人工知能が備わったロボットで、多くの膨大な顧客データを活用し、インターネット、クラウドファイナンスを駆使し、的確に顧客にベストなポートフォリオ管理を進めると筆者は解釈しました。
特段変わったことをするわけではなく、標準化されたツールを顧客に提供する、そしてそれは素人がするフィンテックと言うことです。難しいことをすると銀行に預金している顧客特に高齢層からは嫌われるようです。誰でもできる、と言うよりは「入りやすいフィンテック」と言うことのように筆者は解釈しました。

二つの金融グループの役員さんは共に、「親しみやすく、入口が簡易な、フィンテックの時代にあったシステムにしないといけない」と言われていました。日銀のフィンテックセンター長の方は、中国は金利が先進国よりも高く、イールドカーブが立っているために、理財商品が豊富であることが、フィンテックが進んでいると説明されました。
金融機関(銀行と証券の垣根を取り払った)が日常の決済業務をし、同時に人工知能を有したロボットが、残高の多い顧客に投資商品を進める。若しくはその商品の安全性を自動的に分類し、リスクの少ない商品であれば自動的にその商品に投資し、一定の利子を稼ぐ。ミドルリスク・ミドルリターンな商品に対しては、顧客に自動的に了承してもらい、その商品に投資する。
と言った形態が考えられます。その意味で、今後クラウド商品が金融界に大きく認知され、食い込むことが期待されると思いました。

前回のレポートでは、世界的に金余りの中の投資戦略について論述しました。日経新聞には、世界の運用資産は2025年には1京6000兆円強と、現在の世界の国民総生産の2倍に達する見通しと言います。先進諸国ばかりでなく、中国、そして中東などの新興国の富裕層からの資金が今後豊富に投資に向かうといいます。
自動的に金融機関で、顧客に適した利子を有した金融商品に自動的に振り替えて、資金を運用して頂ければ、それに越したことはありません。まさにフィンテック時代の面目躍如です。お金に働いていただいて暮らす時代を予感させます。

最後に茂木経済再生担当、人づくり担当相から基調講演を聞きましたので、その要点を紹介しておきます。
茂木大臣は人づくり革命を強調されていました。現在10歳の子供の平均寿命は107歳になっているとの指摘に、そんな社会になるのかなと思いました。このことは社会全体でシステムを考える必要がありそうです。

1.再設計が必要な100年社会になり、開かれた教育(無償化)が必要である。
2.社会教育、チャレンジ教育、ITスキルを高める。
3.高等教育の革命。社会ニーズに合わせた教育の必要性。現在は、先生が教えることのできることを教えている。どんどん進化する社会、特に金融についてはフィンテック時代に合わせた、新しい感性を持った人材育成が必要である。
4.生産者年齢よりも引退後の人生を送る年月が長くなり、全世代型の人材の仕組みを作り上げる必要性。

最後にまとめたいと思います。茂木大臣の講演では、長寿社会の到来を実感させます。そして豊かな社会が期待される中、個人の資産も膨れ上がります。働いている年月と、その後引退後の年月が拮抗することになります。その中で、長寿社会で個人の資産も投資して増やしていくことが必然となるのではと思います。

フィンテックが社会に浸透すると、決済は便利になり、またロボットが自動的に余剰資金を利回りを稼げる金融商品に振り分けてくれる時代が来るのかもしれません。その中で、ミドルリスク、ミドルリターンな商品が存在感を示す時代が来るのではと思います。リスクを個人のポートフォリオにあったものに瞬時に分類し、そして投資する時代を予感させます。そんな時代になり、豊かに暮らす筆者でありたいと思い描きます。

«記事作成ライター:水谷文雄»
国際金融市場に精通するInvestment Banker。
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替および金利・債券市場部門で活躍、
外銀を知り尽くす国際金融のプロフェショナル。新興の外国銀行(中国信託商業銀行 )の
東京支店開設準備に参画しディーリング・ルームの開設を手掛ける。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、
スペインと日本との文化・経済交流を夢見るロマンティスト。


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