2014年には2235枚もの偽札が!話題の偽札事件と、日本の紙幣偽造防止技術


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日本が誇る紙幣の偽造防止技術を一挙公開


 

今年に入って、ネットニュースなどで話題になっているのが偽札事件だ。
1月21日には、中国広東省で公安当局が日本円にして約37億円の人民元の偽札を押収したと報じられ、日本の池袋でも偽の1万円札を使用したベトナム国籍の容疑者が逮捕。

またtwitterでも偽札が出まわっていると話題になっている。
いずれも穏やかな話ではないが、お金の歴史はその誕生のころから“偽もの”との戦いの歴史でもあった。そこで、実態がないネット上の仮想通貨が脚光を浴びる今、あえて紙幣の偽造防止の技術について説明しよう。

 

2014年には、なんと国内で2235枚もの偽札が!

 

偽札が増えると紙幣に対する信用不安が高まり、価値は下がる。一方、モノやサービスの価値(価格)は上がり、ハイパーインフレが起こる危険性がある。
偽の通貨を造った場合、刑法148条によって「無期又は3年以上の懲役に処せられる」ことになる。また偽札とわかっていながら使用したり、他人に渡した場合も罰せられることになる。
警察庁の資料から「偽造通貨の発見枚数」を見てみると、近年の偽造通貨の発見状況は次表の通りとなっている。

 
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日本の紙幣は偽造されにくいイメージが強いが、2014年には2235枚もの偽札が発見(押収したとして都道府県警察から警察庁に報告のあった枚数)され、驚くべき枚数の偽札が世に出回っていることになる。世の中に発見されていない偽造通貨はいったいどれくらいあるのだろうか?

 

通常印刷物に、無許可で“すかし”を入れるのは法律で禁止

 

現在、紙幣に採用されている偽造防止技術は、人の感覚によってわかるものと、道具を使用してわかるものがある。

まず、誰もが知っているであろう「すかし技術」。
紙幣の中央部分には、光にすかすと肖像が見えるようになっている。さらに、人物の画の横にも「すき入れバーパターン」と呼ばれるすかしが入っていて、光にすかすと縦の棒が見える。
すかしは紙の厚さを変えることによって表現しており、白く見える「白すかし」、そして黒く見える「黒すかし」の二つを組み合わせている。特に「黒すかし」は、「すき入紙(すきいれがみ)製造取締法」によって「政府、独立行政法人国立印刷局又は政府の許可を受けた者以外の者は、これを製造してはならない」と、許可なく黒すかしを入れた紙を印刷することは禁止されている。

 

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すかしの技は江戸時代から。お札の偽造防止で最もポピュラーな方法のひとつ

 

 

“手触り”で偽造を防止する

 

また、お札の肖像や額面の数字などの図柄が凹版印刷によって印刷されている「深凹版印刷」は、インクを高く盛り上げて印刷する方法だ。
触覚(手触り)でわかる技術のひとつである「深凹版印刷」は、まず凹んだ部分にインクを入れたうえで、強い圧力をかけて紙に印刷するため、インク部分が盛り上がる。そしてこの独自の印刷技術によって、紙幣の独特の手触りが生まれる。さらに、日本の紙幣偽造防止技術は非常に高いレベルにあり、視覚障害者が指で触ることで紙幣の種類を識別する識別マークも、ただ識別するだけでなく偽造防止にも役立てられている。

 

“傾ける”と偽札がどうかがわかる最新技術

 

「深凹版印刷」のほかにも、
●見る角度によって3つの模様が変化して見える「ホログラム」。
●傾けるとうっすらと数字やNIPPONの文字が浮かび上がる「潜像模様」。
●左右の余白が光沢のあるピンク色に見える「パールインキ」がある。

さらに、千円札では「千円」の文字と、「1000」という数字が潜像模様としてパールインキで浮かび上がる「潜像パール模様」が採用されているほか、二千円札では「2000」という数字が青緑から紫色に変化する技術「光学的変化インキ」も使われている。

 

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二千円札には「源氏物語」と「首里城」が描かれており、肖像画はない


 

 

肉眼では見えない判別技術も

 

紙幣の模様をじっくり目を凝らして見てみると、波線が点線に見える部分がある。この「マイクロ文字」は、ルーペなどで見てみるとわかるのだが、「NIPPONGINKO」というアルファベットが記されている。
また、「特殊発光インキ」を用いているため、紫外線を当てると印章の個所やお札の模様の一部がうっすらと光って見える。

 

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模様にまぎれて印刷されたマイクロ文字。お札には肉眼では判別が難しい小さなカタカナで「ニ」「ホ」「ン」と書かれている


 

 

紙幣に肖像画を入れる理由

 
これまで説明した偽造防止の技術には特許もあり、紙幣を守ることで日本の経済を守っていることになる。しかし、特殊技術だけでなく、紙幣デザインそのものも偽造がされにくい工夫がなされている。

1万円札には福沢諭吉、というように紙幣には肖像画が描かれている。これには「見慣れた顔は変化に気が付きやすい」という視覚作用を利用して偽札を防止しようとする狙いがある。もし仮に、福沢諭吉の顔が日頃見慣れているものと異なっているような違和感を感じたら、明確な違いはわからなくても、私たちは「おかしいぞ」と感じることができる。この違和感が偽札発見につながるというわけだ。

なお、紙幣に描かれる肖像画のサイズは昔に比べて大きくなっている。肖像画のサイズを大きくすることで、原版を彫刻する際に複雑な表現が可能になり、偽造防止に役立つというメリットがあるからだ。

 

地味な色合いも、実は偽造防止のため

 

現在、紙幣の印刷にはホログラムも1色と数えて、20~22色が用いられている。これほど多くの色が用いているにもかかわらず、全体的な色合いは地味な感じに抑えられている。実はこれにもきちんとした理由がある。というのも、カラフルな色では最近のカラーコピーなどで本物に近い色合いを出せてしまうから。つまり、色の再現が難しい色が用いられていることになる。

ちなみに偽造防止技術の中でもすかしの歴史は古く、江戸時代にそれぞれの藩で出したという藩札の一部には、すでにすかしが入っていたようだ。
もしあなたが偽札を受け取ってしまったら、すかす、さわる、傾ける……の3つのチェックポイントで正札と比較を。「偽札かな?」と思いつつ、そのまま放置していると「届け出義務」に違反することになってしまうので、気づいたらすぐに最寄りの警察署へ!

≪記事作成ライター:林 明≫
翻訳通訳会社などでの勤務を経て、現在は専門誌の出版社で編集記者として取材、執筆に従事。海外留学時に、日々の暮らしの中で物価が急激に上昇していくのを目の当たりにし、「生活とお金」に興味を持つ。


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