いま、日本ワインがアツい! 日本版ワイン法施行で変わる「国産ワイン」


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日本版ワイン法ともいうべき国税庁告示「果実酒等の製法品質表示基準」が、きたる2018年10月30日に施行されます。

2016年度の国内市場における国産ワインの比率は31.0%であり、日本ワインのなかには国際的な賞を受ける高品質なものも出てきました。国際的な認知度の高まりとともに輸出も増え、「消費者が適切に商品を選べるよう、表示を分かりやすくすること」を目的として作られた国の新基準です。「国内で収穫されたブドウのみで醸造されたものだけを日本ワインと表示する」という厳格な表示基準を満たすべく、ワイン製造業者は銘柄名の変更などの対応に追われています。

 

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国産ワインラベル厳格化の波紋

 

山形県上山市のタケダワイナリーは1979年の発売以来、1300万本を売り上げた看板商品の赤ワイン「蔵王スター」銘柄を、2017年産を最後に「タケダワイナリー・ルージュ」に変更しました。これは醸造所のある蔵王から少し離れた天童市産のブドウを主に使っているため。同様に、小樽以外のブドウも使っていることから、北海道小樽市の北海道ワインでも「おたるナイヤガラ」を、「おたる醸造ナイヤガラ」に変更しました。

一方、表示を社名にすることで、変更を最小限に抑えるワイナリーもあります。山形県西村山郡朝日町の「朝日町ワイン」は2017年産から「(有)朝日町ワイン」になりました。最大生産地の山梨県では、一つの地域に多数のワイナリーがあるため地域名をラベルに使う例は少なく、影響はあまりなさそうです。その他、輸入ブドウを原料に使いながら「国産」として表示されているワインもあり、新基準に沿ってラベルを見直さなければならない業者がさらに出てくることは間違いなさそうです。

 

新表示基準と「日本ワイン」の定義

 

これまで、わが国においてはワインの定義が存在せず、ラベルの表示も、もっぱら業界の自主基準に委ねられてきました。この自主基準では、輸入原料を使用したワインでも「国産ワイン」に含まれることから消費者の誤解を生みやすいなど、諸外国の表示ルールと比較すると時代遅れの感が否めません。こうした背景から国際水準にあわせた、日本版ワイン法ともいうべき新基準が求められてきたのです。

新基準は2015年10月30日に、「製法品質表示基準」を定めた国税庁告示第18号と「地理的表示に関する表示基準」を定めた国税庁告示第19号として国税長官より告示され、2018年10月30日に施行されることになりました。
「国内製造ワイン」のうち、国産で収穫されたブドウのみで醸造したものに限って「日本ワイン」として表示を義務付け、この定義に合致するものだけが、厳しい要件のもと、産地、品種名、年号を表ラベルに表示できることになったのです。

 

国内のワイナリーは283場

 

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2016年、ワインの生産、または出荷の実績がある製造場は国内に283場あります。これを生産者の数でみると全国で231企業、都道府県別では、山梨、北海道、長野、山形、新潟の上位5道県で全体の約6割を占めています。生産規模別では82.3%が100キロリットル未満の小規模業者であり、1000キロリットル以上生産する大手企業7者で全生産量の83.6%を占める構造に。国内製造ワインの生産量は85794キロリットル、そのうち19.4%が日本ワインです。

ここで注目したいのは、大手企業が生産量の7.6%しか日本ワインを製造していない点に対し、小規模業者では95.1%とほぼすべてが日本ワインである点です。日本ワインの67.4%は中規模業者を含む中小の業者が製造しているため、前年比125.9%(2016年)と躍進する日本ワインの輸出を支えているのも、こうした中小のワイナリーであることを忘れてはいけないでしょう。

 

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ワイン製造業者の経営

 

2016年のわが国におけるワインの売上高は約283億円です。営業利益は16億5000万円、営業利益率は6.3%となっています。とはいえ、利益を上げているのは大規模な生産業者が多く、約30%が営業赤字、9%が営業利益額50万円未満と、経営状況は決して楽ではありません。免許を受けて3年以内の新規参入業者は期限付き免許者となり、21者で売上高は2100万円、営業利益は△100万円と、黒字化の道はまだ険しそうです(国税庁課税部酒税課資料より)。

地道に地元産のブドウを使って丁寧なワイン作りを続けている小規模なワイナリーは、今回の新基準で格付けされる「日本ワイン」をメインに醸造しています。厳しい要件は初めからクリアしているといえるこれら小規模業者にとって、新基準はむしろ追い風になるかもしれません。営業力や知名度では大手に負けるとはいえ、「日本ワイン」総生産量の3分の2を占める中小ワイナリーが「日本版ワイン法」施行をきっかけに、今後の躍進が期待されます。

 

世界に認知される「日本ワイン」

 

日本ワインの輸出量に目を向けると、統計を開始した2015年には45キロリットルだったのが、2016年には25.9%増加して56キロリットルになりました。とはいえ、過去最高を記録した酒類全体の12万4710キロリットルからみればわずか0.04%に過ぎません。36.2%を占める清酒が全体を牽引するのに比べるまでもなく、日本ワインの輸出はまだ黎明期にあります。しかし、高い品質は世界のワイン市場で認められつつあるのです。

2017年、世界最大のワインコンクールとして知られる「デキャンター・ワールドワイン・アワード2017」で、「勝沼・グレイスワイン」の「キュヴェ三澤 明野甲州 2016」が金賞を受賞しました。甲州種の栽培から一貫して手がけてきたグレイスワインは、これで4年連続の金賞受賞となります。2017年にはサッポロビールの「グランポレール北海道バッカス辛口2016」もロンドンで開催されたIWSCコンテストで金賞を受賞しました。世界に認知される「日本ワイン」の輸出量は今後、飛躍的に増えることでしょう。

── 国際コンクールの受賞ワインだけではなく、「日本ワイン」には可能性のあるワインが多数あります。日本固有のブドウとして英国でも認知された「甲州」をはじめ、山梨県果樹試験場が生み出した「甲斐ノワール」など、わが国だけで栽培されるブドウにも注目したいところです。小規模なワイナリーの頑張りと、「日本版ワイン法」の施行でわが国のワイン醸造は変わりつつあります。まさにいま「日本ワイン」がアツい、と言いきってよいでしょう。

≪記事作成ライター:山本義彦≫
東京在住。航空会社を定年退職後、介護福祉士の資格を取得。現在は社会福祉法人にて障がい者支援に携わる。30年に及ぶクラシック音楽の評論活動に加え、近年は社会問題に関する執筆も行う。


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