米国不動産投資考察-③


クラウドファンディング,ソーシャルレンディング,マネセツ

米国不動産投資考察の第三弾レポートです。今回は米国不動産の特徴を考察したいと思います。一般的住宅、商業不動産と産業用施設、そしてヘルスケア施設について考察します。

米国の住宅事情

一般的住宅については、米国と日本の住宅には大きな違いがあります。
まずは住宅の構造、そして住宅保有に対する考え方です。
日本では木造家屋であれば、50年も経過すれば劣化が著しく、建て替えという結論にほぼ100%至ります。建物自体のそのときの価値はゼロということになり、その土地の価値のみが残るのです。そしてその後は、その土地の上に新たな住宅を建て替えることになります。
しかし、米国では、カリフォルニア州を除いて地震が少ないこと、全体的に乾燥した気候風土であることから、住宅は日本よりも長く使う傾向があるようです。
 
筆者の知人はバージニア州ワシントンDCのポトマック川の対岸に位置するアレキサンドリア市に住宅を購入し、現在住んでいます。ワシントン大統領、そして南軍を指揮したリー将軍などが拠点を構えていた歴史上有名な土地柄です。
下記の写真は当地の住宅を写したものです。
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これらに写っている住宅は100年以上の歴史があり、中には300年近く歴史がある家もあります。歴史的価値がある住宅には、市からの紋章がついていて、それが住宅の価値をさらに高めているのです。
それぞれの住宅はうまく現代の設備を組み入れたリフォームが行われており、現代でも快適な生活を送れるようにしています。筆者の友人も築年数90年以上という歴史ある中古住宅を購入し、快適に住んでいます。
その住宅の価値も新築以上に高いと考えられているようで、実際、東海岸の多くの地域では、このようにリフォームされた中古住宅に高い価格をつける傾向にあるようです。
このことからも、日本人と米国人の考え方の違いからみて、米国では中古住宅に住もうとする人が多いと言えるのです。

ライフスタイルにおける相違点

米国では毎月、中古住宅販売件数と新築住宅販売件数の統計が発表されます。
先月発表された数字では、6月中古住宅販売件数538万件に対して、6月新築住宅販売件数63万件となっています。
この数字で分かる通り、中古住宅販売件数が新築住宅販売件数の約8倍です。それほど、中古販売件数の取引が盛んに行われ、人気を博しているということが分かります。
つまり、米国人は中古住宅をうまくリフォームして、その価値を高める努力をしていると言えるでしょう。
これらのことから、米国人は日本人のように中古住宅購入にためらったり、新築にこだわったりすることはないという傾向が読み取れます。米国には大きな中古住宅マーケットがあり、住宅を売却する際には、これらを利用してより高い値段で売買しているようです。
ここには中古住宅を購入して、そしてその住宅を高く売却しようとする米国人の気風が根付いているように思います。一般的に、こうした気風は日本人にはないのではないでしょうか。
 
米国人のライフスタイルにも、住宅購入が関わっています。米国人は日本人ほどその土地に定着するという気風は持ち合わせていません。中古住宅市場が発展していることもあってか、米国では仕事の関係などで住宅をどんどん買い替える傾向があるように思います。そして最終的には、定年後、フロリダ、アリゾナといった温暖な土地で、高齢者用の住宅に住む傾向もみられます。中古住宅市場が発達と米国人のライフスタイルとの関連が、米国住宅市場を支えていると言えるでしょう。

歴史的経済の変遷を振り返ると、心理的な面でも日本と米国の不動産に対する考え方に大きな違いがあると感じます。
米国は第二次世界大戦後のダウ平均株価を見ても、右肩上がりと株価指数となっています。また、不動産価格もその動きに似た動きになっており、その価値は下がることなく、投資対象として優良な商品として認識されているようです。
しかし、日本では、1980年代のバブルに沸き踊ったその後、バブル崩壊を経験しています。その結果、「不動産は大きく資産価値を上げることはない」という神話が根付いてしまったようです。その神話に変化が出てきたのは、バブル崩壊の後遺症から立ち直りつつあった21世紀に入ってからではないかと推察されます。

商業不動産と産業用施設

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前段でも説明した通り、米国経済は第二次世界大戦後、曲がりなりにも右肩上がりの成長を続けました。その結果、米国人の消費は収縮することなく需要が継続して沸き上がり、スーパーマーケットなどの商業施設やオフィスビルなどの需要も衰えることなく、建設されることになりました。
このことを受け、その資金を調達する手段も金融市場で工夫されることになります。これはいわゆる「証券化」という金融手法で、投資家から資金調達し、施設建設費用に充てるという手段です。これによって、投資家に返還する利回り、つまりキャップレートという考え方が定着することになったのです。このような金融手法が編み出されたことが、ある面で、商業用施設と産業用施設を建設する需要を呼び起こしたと言えるでしょう。
このような歴史をたどることによって、米国では、アセットマネジメントという不動産の価値自体を引き上げる分野と、プロパティマネジメントという施設のメンテナンスを維持する分野が、商業用と産業用不動産の建設で発達することになります。その流れは、SPC(特別目的会社)を創設して本体から切り離して、独立した法人として当該不動産を管理する運営方向が編み出されることにつながり、現在に至ったと言えます。

ヘルスケア施設

米国不動産市場は、先ほど触れた証券化手法が編み出されたことにより、商業用、産業用施設中心の証券化を経て、ヘルスケア施設への証券化が進んできています。
近年では、病院、介護施設、老人ホームなど、様々なヘルスケア施設に証券化が導入されています。極端な例では、刑務所でも証券化が導入されているそうです。
証券化が進むと、投資家は利回り、つまりキャップレートを、商業用不動産と同様に考えることになります。病院、介護施設、老人ホームは、高齢化社会になり、需要が旺盛です。その結果、病院の稼働率は高く、これら施設の空室率はこの先、かなり低い水準を維持することが予想されます。このことからも、ヘルスケア施設部門は投資利回りとしては安定的に推移するのではないかと思われます。
 

まとめ

米国不動産のイメージを記述しましたが、日本とはかなり異なる印象を読者はお持ちになったのではないのでしょうか。
不動産全体を投資対象、利回りという観点で考えれば、米国経済の安定性をベースにすると、米国不動産施設を投資の一つの選択肢として組み込むことは適切ではないかと思います。
このことから、国内投資、そして海外投資の比率を一定水準に保つことは継続的安定的な運用利回りを目指すことに有効ではないかと思う次第です。

 

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«記事作成ライター:水谷文雄»
国際金融市場に精通するInvestment Banker。
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替および金利・債券市場部門で活躍、
外銀を知り尽くす国際金融のプロフェショナル。新興の外国銀行(中国信託商業銀行 )の
東京支店開設準備に参画しディーリング・ルームの開設を手掛ける。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、
スペインと日本との文化・経済交流を夢見るロマンティスト。


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