急増する「合葬墓」「集合墓」……。様変わりする“現代のお墓事情” 


クラウドファンディング,ソーシャルレンディング,マネセツ

「〇〇家の墓」と墓誌が掘られた家墓に手を合わせる──。それが日本の伝統的なお墓参りだが、いま、そのスタイルが急速に崩れつつあるようだ。

お墓を引き継ぐ方がいなくなったことで「家墓」と「檀家制度」が旧来の様式となり、ひとつのお墓に多くの人が共同で埋葬される「合葬墓」「集合墓」や「樹木葬」「海洋散骨」など散骨方法も変化しているほか、棚型やロッカー型の「納骨堂」も増えてきている。
少子高齢化に拍車がかかり、墓守をする人がいなくなったり、また身寄りのない単身世帯の増加など、家族形態が大きく変化するに伴って、お墓の形も変わってきているようだが、今回は誰にとっても他人事ではない、現代のお墓事情をルポしてみよう。

大反響を呼んだ、築地本願寺の「合同墓」開設

クラウドファンディング,ソーシャルレンディング,マネセツ

京都西本願寺の直轄寺で、関東を代表する名門の東京築地本願寺が2017年秋に開設した「合同墓」は、大きな反響を呼んだ。入会を案内する説明会には中高年の男女が多数押し寄せ、話を聞くには1カ月以上も待たされる事態となった。
なにしろ400年以上も歴史を持つ老舗のお寺が、もっとも現代的とも思える合同墓をつくり、そこにトータル5万柱を埋葬しようする一大事業のスタートだ。話題になっても当然だろう。

新しく建築された明るい天窓の礼拝堂には阿弥陀如来像が安置され、同寺の僧侶が毎日読経している。お墓参りに訪れた参拝者は、個々のお墓ではなく、その阿弥陀如来に手を合わせる。そして地下には、250平方メートルにおよぶ巨大な納骨堂が備わっており、整然と遺骨が収納されている。これからもどんどん遺骨が増えていくはずだ。礼拝堂の回廊には、契約を果たした人の名前が刻まれているため、そこで故人名を確認することができる。

契約は「合同区画」と「個別区画」に分かれている。初期費用は、最初から「合同区画」を選べば30万円、6年間「個別区画」なら50万円、32年間「個別区画」だと100万円となる。いずれも最終的には「合同区画」にまとめられることになる。
この築地本願寺の新事業はメディアなどでも取り上げられたため、ほぼ成功の運びとなりそうだ。しかし、成功の理由は築地本願寺のブランド力だけではない。背景に、お墓に対する新しい考え方が浸透してきている証ともいえる。従来の墓石スタイルは、もう現代にはマッチしないのかもしれない。

墓石から永代供養墓へ変化

最近よく聞くお墓の形態に、「永代供養墓」というのがある。これは、従来の墓石による家族単位の供養ではなく、霊園の管理者が家族などに代わって半永久的に供養をしてくれるお墓のこと。中でも代表的なのが、築地本願寺の例にあるような「合同墓」。複数の契約者が合同で埋葬されるお墓で、それを霊園が管理してくれるというものだ。

従来のお墓と異なる点は、まず独自のお墓を必要としないこと。
お骨は霊園が用意した納骨堂などに収められる。その結果、初期の費用が大幅に抑えられる。従来型の一般墓で墓石を購入すれば200万円以上ほどかかるのが相場だが、合同墓ならおおよそ30~40万円前後。安ければ10万円くらいですむ場合もある。

この合同墓の特徴のひとつは、家族でない人と一緒のお墓に入るということだ。見知らぬ人と隣り合わせとなることに抵抗をもつ人もいるだろうが、一方で、親しかった友達など血のつながりはなくとも、大事な人と同じお墓に入れるというよさもある。

もうひとつ大切な特徴のひとつが、お墓の継承を考える必要がないという点だ。一般のお墓だと、たとえば子どもや親類縁者がお墓を管理するのが普通で、それが途絶えたりすると、墓は荒れ地となり、最悪の場合、無縁墓となる可能性もある。
仮に子どもがいたとしても、それが女性でお嫁にいってしまったケースなどでは、夫婦のお墓を守ってくれる人がいなくなる不安もある。そうした人たちには、この合同墓は非常に有効な埋葬の形といえる。

合同墓のメリット

クラウドファンディング,ソーシャルレンディング,マネセツ

こうした特徴を持つ「合同墓」。そのメリットをまとめてみると、次のような点があげられる。
●圧倒的に安く、お墓ができる
上の表にも示した通り、初期費用は一般墓の墓石と比べると約3分の1程度。しかも多くの霊園で管理費は不要というケースが多い。一般墓なら、毎年管理費をお寺や霊園に収めるのが普通だ。
合同墓に申し込みにくる人は、自分が生きている間にお墓を決めてしまおうという生前申し込みが圧倒的に多い。子どもに迷惑をかけたくない、あるいはお墓を作ってくれる人の見込みが立たない、といった人たちは、比較的手軽に格安にお墓を用意することができる合同墓を利用しようという人が多いのだ。

●宗教宗派を問わない場合が多い
日本の多くのお墓は、寺院の檀家となり、そこの管轄する墓地に埋葬されるケースが多い。しかし、合同墓の場合、こうした宗教、宗派にとらわれることは少ない。日本人は仏教の形式で埋葬することが多いが、キリスト教やイスラム教、神道のスタイルで埋葬することもできる。

記事冒頭に記した築地本願寺の場合は、生前に信仰してきた宗派は問わないが、「築地本願寺倶楽部」に入会してもらい、以後の法要や読経などは浄土真宗本願寺派の儀礼様式で行うことになっており、そのことを事前に了承しておかなければならない。
ただし、こうした築地本願寺流の合同墓は、むしろ例外で、埋葬後も引き続き生前の信仰を続けられることのほうが多い。

合同墓のデメリット

一方で、見逃してはならない合同墓のデメリットも報告しておこう。
●遺骨を取り出せないのが普通
いったん納骨した遺骨は、合同墓ではもう取り出せないことが普通だ。遺骨の安置は、最初のうちは骨壺のまま置かれたり、あるいは簡易な袋などに収められて他人と区別される場合もあるが、それも一定期間までで、最終的には他人のお骨と混ざり合って、埋葬されることが多い。
それは非常に大事な要素で、合同墓に決めるときには、その取り出せないということをしっかり認識して申し込む必要がある。もし、今後独自のお墓に改葬する可能性がある場合は、合同墓は最初から候補にのせないほうがいい。

●家族としての一体感に欠ける
リーズナブルで手軽な合同墓だが、失うものもある。それは、日本人がこれまで文化として築き上げてきた家族ごとの墓石にお詣りするという形を事実上捨てることになることだ。これからは、赤の他人と一緒のお墓に手を合わせることになるため、遺族によって個人への思い入れが削がれる、と思う人も出てくるだろう。そういう心配は無用と思える人はそれでいいので、そのあたりは個人の感性や価値観に寄ってくる。ご自分で判断されればいいだろう。ただ、そうした可能性があるということを申し添えておく。

── 以上のような合同墓のほかにも、樹木葬や海洋散骨など、埋葬の仕方はどんどん新しくなっている。ただ共通しているのは、大方の埋葬の仕方は、以前と比べて簡略化されている点だ。葬式もそうだが、もうお墓や墓石の大きさを競うような時代は終わっている。生活様式に合わせたお墓の新しい形は、これからもどんどん増えていくことだろう。

≪記事作成ライター:小松一彦≫
東京在住。長年出版社で雑誌、書籍の編集・原稿執筆を手掛け、昨春退職。現在はフリーとして、さまざまなジャンルの出版プロでユースを手掛けている。


クラウドバンク

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です