個人情報をお金のように扱い、売買する「情報銀行」ってなんだ?


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何か新しいものを開発しようとするとき、あるいは、より効率的にものを売りたいときなどには、人々がどのような消費行動に出ているのかの分析が欠かせない。

消費行動を知るためには、「人々が何を買ったのか」「どこに行ったのか」「どのようなものが好きなのか」などのビッグデータが役に立つ。

そのビッグデータは、私たち一人ひとりの個人情報の積み重ね。つまり現代社会では、多くの個人情報を握っているものこそビジネス上で優位に立てるような仕組みになっていて、企業にとってどんなにお金を出しても手に入れたいものの一つが、個人情報なのだ。

その個人情報をまさにお金のように扱い、売買する「情報銀行」ビジネスが本格化しそうだ。“Time is money”ならぬ“Data is money”の現代社会だからこそ成立するビジネスとは、いったいどのようなものなのか、調査してみた。

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個人情報を信託することで利益を生む情報銀行

銀行はお金を預かり、預ったお金を他者に貸すことで利益を得て、預金者に利息をつける。「情報銀行」の四文字は、これまであまり目にする機会のなかった言葉だが、お金を個人情報に置き換えることで、そのビジネスの形態が見えてくる。
つまり「情報銀行」とは、個人から預かった個人情報を企業などに提供し、その対価として利益を個人に還元するビジネスを指す。

総務省「平成30年版 情報通信白書」では、以下のように定義されている。
〈情報銀行(情報利用信用銀行):個人とのデータ活用に関する契約等に基づき、PDS等のシステムを活用して個人のデータを管理するとともに、個人の指示又は予め指定した条件に基づき個人に代わり妥当性を判断の上、データを第三者(他の事業者)に提供する事業〉

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総務省及び経済産業省「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」より

情報銀行は、購買履歴、健康情報、位置情報などの個人情報を信託され、その情報を安全に管理し、企業や事業者などに情報提供、一元管理する組織(事業者)のこと。個人情報を預けた利用者には何らかの利益が還元される仕組みになっているため、個人が現金を銀行に預託するのと同じように、その預金に利息が還元される「銀行」に例えられることが多い。

このように、情報を預託・運用する制度、あるいは事業者を情報銀行と呼ぶが、データ主導社会の現代における「情報銀行」は、物販の販売はもとより観光ビジネス、金融ビジネス、人材ビジネスといったシーンから、医療・介護、交通、通信等、広範囲での利活用が期待されている。翻れば、私たちの暮らし全般にかかわることになり、その影響力から、強大な価値を生む存在になるといわれているのだ。

情報銀行が動き出した背景1/PDS

どうしてこのような情報銀行が注目を集めるようになってきているのだろうか。
その理由は2つ考えられる。

理由1)個人情報を適切に管理するPDS
まず、前項の総務省「平成30年版 情報通信白書」にあった「PDS」の意味を考えると見えてくる。
PDSは、同じ「平成30年版 情報通信白書」で、次のように定義されている。
〈PDS(Personal Data Store):他社保有データの集約を含め、個人が自らの意思で自らのデータを蓄積・管理するための仕組み(システム)であって、第三者への提供に係る制御機能(移管を含む)を有するもの〉

PDSとは、個人が自分の個人情報を管理したり、運用したりするための「ストア(お店・倉庫)」のこと。すなわち、個人情報管理を適切に行うシステムを持っている商店になる。
すでにネット上などにあふれる膨大な個人情報を、個人で適切に管理・運用することなどは不可能だ。そこで、安心して個人情報の管理・販売を信託できる仕組みとして、情報銀行が注目を集めるようになっているわけだ。

情報銀行が動き出した背景2/「GAFA」への対抗策

理由2)「GAFA(ガーファ)」への対抗策
情報銀行が注目されるもう一つの理由としては、いわゆる「GAFA」の存在が大きい。
「GAFA(ガーファ)」とは、グーグル(Google)、アマゾン(Amazon)、フェイスブック(Facebook)、アップル(Apple)に代表されるアメリカのIT業界の四騎士の頭文字をまとめた略語で、そのほかにも「GAFA」にMicrosoftを加えた「GAFMA(ガフマ)」や、Facebook、Amazon、Netflix、Google の頭文字を集めた「FANG(ファング)」等の略語も、最近さまざまなシーンで目にするにようになった。
これらの成長企業群は会員顧客の検索実績や購買履歴などを通じて、利用者が知らない間に膨大な個人情報を収集・集積し、パーソナライズ・レコメンドの提供に成功しており、情報を活用することで売上拡大を図ってきた。

しかし、ビッグデータを利用して巨額の利益を得ているビジネスのあり方を日本企業に転換してみると、その現状は、大きく後れをとっている……といわざるをえないのが現実だろう。

そこで、世界を席巻する成長企業群のビジネスモデルに対抗すべく、当然のことだが個人情報保護やセキュリティ等を配慮に入れながら、膨大な情報を業者に信託するシステムを扱う新たなビジネスモデル「情報銀行」が登場することになったわけだ。日本独特の新たなシステムとして、あるいは消費拡大の救世主として、情報銀行は昨今大きな注目を集めているのだ。

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大手銀行や流通、電機メーカーなどが続々と参入

IT産業にかかわる日本最大級のIT団体の連合体「一般社団法人 日本IT団体連盟」は2019年6月、総務省の作った指針を下に、情報銀行の第1弾事業者として三井住友信託銀行株式会社と、イオングループのフェリカポケットマーケティング株式会社の2社を認定。安心・安全な情報銀行として、一般ユーザが自身の個人情報を信頼して託せる事業者であることをアピールすることが可能となる。

フェリカポケットマーケティングは、地域振興のための情報銀行を想定。購買履歴などの個人情報を商店や中小企業などに提供し、新商品や新しいサービスなどの開発に役立てる。個人情報を信託した利用者には、クーポンなどを還元する予定としており、今後実証実験に入るという。三井住友信託銀行は、健康情報などを生かした事業化の検討を進めている。

認可を受けなくても独自に参入することも可能で、三菱UFJ信託銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、ソフトバンク、富士通、日立などが、続々と事業化を計画している。

情報銀行から得られる2つのメリット

情報銀行のメリットには、どのようなことがあるだろうか。それは2つ考えられる。

メリット1)報酬が期待できる
利用者にとって、自分の個人情報を情報銀行に預ける(信託する)ことによって、現金やクーポン、ポイントなどの報酬が期待できることが、最大のメリットだ。三菱UFJ信託銀行の実証実験によれば、一件あたり500円〜1000円程度の見返りが期待できそうだ、とされている。

実際にどの程度の報酬がもらえるかは、このビジネスがきちんと軌道に乗るようになってみないとわからないが、自分の情報が一定の価値を持ち、それが自分に返ってくることは間違いない。

メリット2)自分に合ったサービスが得られる
情報銀行から情報が提供された企業などから、利用者の嗜好、好きな食べ物、過去に購入した物などさまざまな情報やサービスが送られるようになる。例えば購入履歴を提供された企業が、「この人は定期的スニーカーに購入している。靴に大きな興味をもっている人だ」と判断すれば、その利用者に新発売のスニーカー情報が送られる、といったようなことが想定される。

これはいまでもWEB広告などでよく使われてきた手法だが、情報銀行がきちんと機能すれば、その精度は上がり、より確実にパーソナライズされたサービスが受けられるようになる。

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情報銀行が抱える課題とは?

一方、最大のデメリット、つまり今後の課題としては次の一点が考えられる。

課題1)情報流出のリスクが高い
多くの個人情報が情報銀行に集中することにより、情報流出のリスクが高まることが最大のデメリットだ。

政府の指針では、情報提供する利用者は、自分のデータを閲覧することや第三者への提供を停止することが自由にでき、また、流出などの被害にあった場合は損害賠償を請求できるなど、利用者保護の要件が定められている。

けれども、情報流出のリスクがまったく心配いらないということにはならない。そこが情報銀行ビジネスの最大の課題となる。

── ここまで説明したように、ちまたにあふれる個人情報をどのように管理し、活用するかは情報化社会の大きな問題の一つだ。
日本独自の情報銀行が、今後どのように運営されていくのかは、われわれ自身の情報管理の考えにも大きく影響を与えていくはずだ。その動向に注目したい。

≪記事作成ライター:三浦靖史≫
フリーライター・編集者。プロゴルフツアー、高校野球などのスポーツをはじめ、医療・健康、歴史、観光、時事問題など、幅広いジャンルで取材・執筆活動を展開。好物はジャズ、ウクレレ、落語、自転車。


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