FRBが追加利下げを発表 今後の見通しは


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FRB(米連邦準備理事会)は9月18日開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)で7月31日の利下げに続き、今年2度目の利下げに踏み切りました。

下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は過去10年の政策金利(フェッド・ファンド・レート FF Rate)の推移を示しています。
おなじみのグラフですが、2016年から始まった利上げのサイクルに今年終止符を打ち、7月から利下げのサイクルに変化しました。

米中貿易摩擦の影響が長く続く予測

FRBは誘導目標を設定しており、今回0.25%の利下げに踏み切り、その誘導目標は1.75%~2.00%としました。上限金利の2.00%が市場で言うFF金利です。
今回の利下げに際しては、FOMC内部、そしてトランプ大統領など外部から、相当な論議と圧力を受けていました。
筆者は米景気に明確な後退要因は出ていないと思っています。GDP(国内総生産)も低くなる兆しがなく、失業率も低い状態が続いています。
しかし、米中貿易摩擦の影響が今後の米景気に与える影響が強まっているのではとの観測がありました。
内外の要因を総合して今回の利下げに踏み切ったようですが、その後遺症は大きいのではと推測します。

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今回の声明文を読むと、利下げに踏み切ったにも関わらず、非常に短い声明文です。
世界景気の進展状態と落ち着いたインフレを鑑み、FF金利を引き下げることにしたと言い切っているのみで、明確な要因を明記していません。
そしてFOMCメンバーの中でも、その意見は分かれているようです。
2名のメンバーは据え置きを主張し、一名のメンバーは0.50%の利下げを主張しています。
そのために据え置き派、大幅利下げ派の双方の主張を声明文に盛り込むことは出来なかったようです。

パウエルFRB議長が記者会見の場で、その補足をしました。パウエル議長は、
「今回の利下げについて、景気見通しを支え、リスクへの保険となる。経済が弱まれば更なる利下げが必要になる可能性がある。今後の金融政策方針は経済の進展次第である。FOMCが十分だと考えた時点で利下げを停止する。」
と両者に満足のゆくコメントをしています。

2021年からは景気回復の見立て

それでは、今後の利下げをFOMCのメンバーはどのように見ているかをドットチャートで見ましょう。下記グラフ(出所:FRB)は17名のFOMCメンバーの今後のFFレートの予想を示しています。
まず注目しないといけないのは、緑丸部分の下方部分1.5%~1.75%の各年の予想をしている人数です。今年は7名、そして来年(2020年)は8名が予想しています。

2%以上を予想しているのは、今年5名、来年7名。据え置き派、利下げ派に明確に分かれています。
FOMC内部で意見を一致させるのが難しい状態は続くでしょう。米中貿易摩擦の影響、それがグローバル経済に与える影響について、その見方が分かれているためです。
しかし2021年以降は矢印の通り、景気が徐々に良好な状態に向かい、その結果据え置きから利上げと言うサイクルに入っていくというのがFOMCメンバーのコンセンサス(意見の合意)なのでしょう。

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金利の変化、筆者がみる予測材料は

それでは具体的にFF金利は、いつ、どのように変化してゆくのでしょうか?筆者はそのヒントを短期金利先物の価格の推移に見つけています。
シカゴ先物市場の短期金利先物(3ヵ月物)はFF金利にかなり近い水準で推移示しています。今回の利下げ決定後の金利水準を表で示してみました。
FF金利(誘導目標上限金利)は現在2.00%です。これを目安に考えましょう。
表の数字を追っていくと、今年は年内据え置き、来年0.50%利下げ、2021年は1.44%を分岐点に12月からは利上げサイクルに入ってくるのではと推測できます。
非常に興味深いデータなので、この数字の流れを経済のファンダメンタルズと見比べて、米国の経済の動向、そして金利動向を探るヒントにすることをお勧めします。

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FRBの動きをまとめると、米経済は悪くないと考えるメンバーが多いと言えます。
しかし、トランプ大統領の目を気にしてか、追加利下げをすることに渋々賛同したのではないかと推測します。
従って短めの内容のない声明文、ドットチャートで見解が分かれる結果となってしまっているのでしょう。
年内はFF金利据え置き、来年は利下げが有力、そして再来年後半からはやっと利上げのサイクル突入といった金利観を筆者は持つことになります。

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トランプ大統領のFRB批判は”やりすぎ”?

興味深いのは、FRBを取り巻く政治模様です。トランプ大統領は連日ツイッターを駆使して、FRB批判を続けています。
トランプ大統領のパウエル議長への批判は度を越しているように、筆者は思います。海外の中央銀行、とりわけECB(欧州中央銀行)を取り上げて、
「マイナス金利で、企業は金利を支払うことなく企業活動している。為替もユーロ安となり、米国輸出企業は被害を受けている。中国も同様である。それに対して、FRBは無策である。迅速に大幅に利下げをすべき。」
とのキャンペーンを繰り返しています。

元来FRBは金融政策に対して、独立の機関です。大統領など三権からは影響を受けてはならないことになっています。
しかし、米経済は、現在米中通商交渉と言うカードがトランプ大統領の舵の元、意のままに動く状況のようにあります。
米中通商交渉が巧くゆかないと判断すると、その影響から察して、FRB批判を繰り返して、圧力をかけてゆくことになります。
FRBの過去の歴史上でも、稀なケースであると言えます。

米経済が過度に景気後退に行かないとFRBが判断しても、一人の権力を持った政治家が「大幅利下げ」をしなさいとの圧力をかけてゆく。
筆者は、パウエル議長、そしてFRBが厳としてそのような圧力に屈せず、独立した金融政策の判断を実行していく必要があるのではと思います。そうでないと、将来に禍根を残すことになります。

まとめ

FRBは「米国経済に大きく景気後退する要因は米中貿易リスク以外にない」と判断しているようです。
しかしそれはトランプ大統領の舵さばきによるところが大きく、FRBとしても、中立の立場で、景気判断し、金融政策を淡々と実行していく以外にないと思います。

仮に米中通商交渉が暗礁に乗り上げたとしても、その影響を淡々と精査し、金融政策に活かしてほしいと思います。
現状では楽観論が支配していますが、突然リスク回避志向に金融市場が向かうかもしれません。
現状リスク商品のポートフォリオを増やすことは正論だとは思いますが、クラウド商品などミドルリスク・ミドルリターンなヘッジも常に考えなければいけないと筆者は感じます。
リスク管理を怠らないようにしましょう。

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«記事作成ライター:水谷文雄»
国際金融市場に精通するInvestment Banker。
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替および金利・債券市場部門で活躍、
外銀を知り尽くす国際金融のプロフェショナル。新興の外国銀行(中国信託商業銀行 )の
東京支店開設準備に参画しディーリング・ルームの開設を手掛ける。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、
スペインと日本との文化・経済交流を夢見るロマンティスト。


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