米不動産市況を考察!


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前回レポートでは、米中央銀行であるFRB(連邦準備理事会)の金融政策と今後の見通しについて考察しました。今回はそれを前提に、不動産市況は現在どのように推移しているのか、そして今後の見通しを考えてみたいと思います。

FFレートの遷移と不動産市況

前回のおさらいとしては、FRBは政策金利であるフェッド・ファンド・レート(FFレート)を2回連続、0.25%引き下げ、FFレートの誘導目標を1.75~2.00%としました。
市場の予想通りであり、短期金利先物の動きからは、年内FFレートは据え置きであり、来年には追加利下げが行われるのではとの観測が強いです。
中国との通商摩擦が最大の焦点であり、リスクとして意識されているものの、意外と米国経済は堅調なのではないでしょうか。

それを前提として不動産市況を考察しましょう。
下記グラフ(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は米国の代表的不動産価格指標であるS&Pケースシラー住宅価格指数です。全国の不動産価格指数を示しています。
20都市の数字もありましたが、グラフの形状が同様であり、数字もほぼ同様でしたから、全国の不動産価格の推移を示しました。2005年からの推移を示しています。
これを見ると、2008年に起きたリーマンショックにより、不動産価格は大きく下落し、0.00%以下、つまりマイナスで推移する時期もありましたが、2010年代後半は少なくともプラス圏で推移していると言えます。

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米中貿易摩擦のシナリオ

現在はやや右肩下がりのグラフで推移していますが、マイナス圏までには落ち込んでいません。
米中貿易摩擦が落とし所を模索する流れに行き着くと、米国金融市場が楽観的となり、そしてそれに投資する米国民は安堵することになり、不動産を含めた投資商品に投資する意欲が高まっていくのではと考えます。

唯一の懸念は、米中の通商問題、政治問題が非常にこじれた関係になることです。米国ファーストを標榜するトランプ大統領が頑なになってしまうことです。
来年に迫った大統領選挙では、再選を目指しており、米中貿易摩擦の影響を引きずったままですと再選に暗雲が立ち込みます。トランプ大統領としては、このような局面になることは絶対に避けたいと思います。
景気の巡航速度を保ち、低金利政策を維持すると考えると、米国株式市場も堅調に推移することになるのではと思います。
もし仮に景気後退の局面になれば、トランプ政権としても、FRBを味方に巻き込み、景気後退の局面脱出に最善の策を講ずることになるのではと思います。

暗のシナリオを描くと、米不動産価格はケースシラー指数で動向を予測すると、ゼロ近辺もしくはゼロ以下に落ち込んだとしても、短期間に終わるのではないかと思います。
明のシナリオでは、5%以上の不動産市況が過熱することなく、適度な上昇で推移することです。明暗シナリオ描きましたが、概ねゼロ近辺から5%近辺の範囲に収まるのではと、筆者は楽観的な不動産市況を描きます。

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米国の中古不動産市場は需要増

現在の不動産の売れ行き状態を見ましょう。米国では中古住宅販売件数が重要です。
日本と大きく異なり、中古住宅市場が厳然として新築物件よりも重要度が高いと言えます。米国民は、中古住宅に対して、新築と同様の購入意欲があります。それは昨年米国滞在中に深く感じました。
下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は、2000年代半ばから現在に至る中古住宅販売件数の推移をパーセンテージで示したものです。

こちらも2008年直後のリーマンショックの影響から大きく落ち込む時期もありましたが、その後はマイナス10%がサポートになっており、中古住宅市況は堅調に推移しています。
米国は人口構造では増加傾向にあり、潜在的な住宅需要は強いように思います。中古、新築市場共に、リーマンショックのような大きな経済危機がない限り、旺盛な住宅市況が続くのではと思います。
現在は2018年のマイナス10%と付けた後、ゼロ近辺まで回復しており、今後も堅調に推移するのではと思います。

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アメリカの住宅市況はいまなお堅調

それでは、住宅市況を占う住宅着工件数、建設許可件数の推移を見ましょう。
下記2つのグラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は、上グラフが住宅着工件数、下グラフが住宅建設許可件数を示しています。
両者ともに2008年のリーマンショックの後遺症からは回復して、概ね2011年以降は堅調に推移しています。こちらもリーマンショックのような大きな経済危機がない限り、堅調に推移するのではと思います。
現在両者の数字共に、120~130万件で推移しています。この数字が数ヶ月もしくは1年後近くに新築住宅販売件数の数字に影響を与え、そして数年後或いは10数年後には中古住宅販売件数の数字に加わることとなります。

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住宅ローン金利を下げ、購買増加の兆し

最後に住宅ローン金利を検証しましょう。FRBは7月末に10年半ぶりに利下げに踏み切りました。
私見ですが、経済は良いものの、米中貿易摩擦、トランプ大統領からの圧力から、利下げに踏み切らざるを得ない状況に追い込まれたものと見ています。
その結果、住宅ローン金利も低くなる傾向が見られます。下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は世界主要国の住宅ローン金利を示しています。極端に長い期間で推移を示しています。

かなり見づらいグラフですが、紺色の米国の住宅ローン金利のグラフをご覧ください。2009年以降を見ると、概ね4~5%のレンジで推移しています。
この時期にはFRBには2016年まではゼロ金利政策、そしてその後は利上げセッション、そして今年7月には利下げに踏み切る経緯がありました。
FF金利は高い時期には2.50%で、住宅購入意欲が削がれる時期もありました。しかし利下げに踏み切ったことで、住宅ローン金利も下がることが予想されます。
従って、今後消費者の住宅購入意欲は増すのではないかと思います。現在は30年住宅ローン金利:3.90%(一年前比較:-0.85%)、15年住宅ローン金利:3.40%(-0.75%)、5年住宅ローン金利4.40%(-0.20%)となっており、今後更に低下すると予想されます。

まとめ

米国不動産の価格、住宅着工件数、建設許可件数、そして住宅ローン金利を見てきましたが、米国不動産の底堅さを感じたリポートになってしまいました。
米中貿易摩擦が懸念要因ですが、その要因を除けば、底堅い住宅市況が続いていると言えます。
クラウド商品でも、米国不動産投資ファンドがありますが、底堅い米不動産市況が後押しするのではと思い、お勧めのミドルリスク・ミドルリターンな投資商品であると思います。皆さんのポートフォリオに組み込みをおすすめします。

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«記事作成ライター:水谷文雄»
国際金融市場に精通するInvestment Banker。
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替および金利・債券市場部門で活躍、
外銀を知り尽くす国際金融のプロフェショナル。新興の外国銀行(中国信託商業銀行 )の
東京支店開設準備に参画しディーリング・ルームの開設を手掛ける。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、
スペインと日本との文化・経済交流を夢見るロマンティスト。


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