Brexitと英国経済、そして英国投資は?


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Brexit(英国の欧州連合EU)からの離脱の期限が2020年1月31日に迫ってきました。ジョンソン首相は12月12日総選挙を実施して民意を問い、Brexitを正当化したいようです。

Brexitに備える各国・企業

最新の世論調査では、ジョンソン首相率いる保守党が14%ポイント程野党労働党をリードしているようです。また保守党が下院議会の過半数を獲得するとの世論調査もあります。
小選挙区制の英総選挙では、選挙前日まで予想が難しいとの経験則もあるようです。Brexitで問題となっているのは、アイルランドと北アイルランドを隔てる国境問題をどのように取り扱うかです。

この国境を特別扱いにして、英国は欧州連合から離脱する方針であるのが、ジョンソン首相率いる保守党です。即ち、合意がある離脱ということです。
英国が欧州連合からの縛りから解き放たれて、世界各国と個別の貿易条約を結ぶということです。何かトランプ大統領の経済運営と似通ったところがあります。
英国が欧州連合から離脱すると、英国に拠点を持つ海外メーカー、金融機関は、これまでの通りの欧州を一つの経済圏とみなした運営が出来なくなります。
そのために、トヨタなどの日本企業にも英国から工場を大陸に移転する動きがあります。また三菱UFJ銀行は、ロンドンからフランクフルトなどにスタッフを移動する動きもあるようです。
英国がBrexitに踏み切ると、景気後退につながるリスクがあるのではと分析するエコノミストが多いと言えます。

幾度かの”延長”により市場はBrexit慣れしている?

それでは現状の英経済、そして中央銀行であるイングランド銀行はどのような金融政策をとっているのでしょうか。
英国GDP(国内総生産)第3四半期:0.3%前期比、1.0%前年比となっています。同時期に発表されているユーロ圏GDP第3四半期:0.2%前期比、1.2%前年比と比較すると、それほど大きくは落ち込んでいません。
むしろ、Brexit後の悲観的な英経済予想と比較すると、予想外に良いのではと思ってしまいます。

下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は2005年から直近までの英GDPの前期比ベースの推移を示しています。確かに今年の第2四半期の数字は久しぶりのマイナス成長となっています。
しかし、総じて悲観論とは遠く、意外と頑張っている英経済ではと筆者は思っています。
ここ数年続いたBrexit悲観論で、メーカー、金融機関などはその対策を行い、その影響を抑える努力を実施してきました。Brexit慣れしてきた英経済ではないかと思います。
このまま1月末にBrexitに突入し、関税などの手続きに支障が出てきても、ある程度その影響に耐えられる体制をとってきた英金融機関、メーカー、そして海外金融機関とメーカーではないのではと思います。

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BOEはインフレ目標の達成に邁進

イングランド銀行(BOE)の金融政策を見てみましょう。BOEの現在の政策金利(Bank Rate)0.75%です。Brexitの悲観論が渦巻く中、今年は一度も政策金利を変更することはなかったようです。
そして金融市場に資金供給する目的の資産購入プログラムの購入額4,350億ポンド維持をする方針を決定しました。
中央銀行の一番の目標はインフレ目標の維持です。BOEのインフレ目標は2.0%で、英国の現在のインフレ目標は1.5%と、インフレ目標は達成していない現状です。
これを達成するためには、金利を低位に維持し、それと同時に資金供給を続けることです。この金融政策を続けることで、金融機関及び民間企業に資金繰り及びディフォルトリスクの軽減に有効です。
それは、Brexitリスクに潜在的に苦しむ英国企業を陰から支える役割を果たしています。このことは、最近の英国経済の現状にはポジティブに反応しているように思います。
BOEは声明文の中で、Brexitの動向を注視し、英国経済の回復とインフレ率維持のための金融強化策を強めると明記しています。

英国経済の中身を見ると、経済は対立するユーロ圏経済に似通った数字を示しているようです。
下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は英製造業のPMIのトレンドを2008年から直近までを示しています。
直近11月:48.3であり、景気判断の分岐点である50を下回っています。消費者の消費動向は弱く、そして雇用環境を見ると11月失業率3.4%と今年前半の3.0%前後の数字から比べると悪化傾向が見られます。
経済状況を見ると、前段の筆者の楽観論からは一転して悲観的な材料が多く、GDPの数字と実体経済の乖離があります。

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リーマンショックほどの落ち込みはしない?

それでは今後はどのように見たらよいのかの論点に移りましょう。あくまでも保守党総選挙勝利、そして合意ありのBrexitになった場合の条件付きです。

やはり、経済の落ち込みの兆候が見られると考えるのが素直ではと思います。貿易に関しては、通関手続きの煩雑さから、貿易取引量が落ち込むことが予想されます。
金融関連では、Brexitに備える動きが去年あたりから進んでおり、そんなに落ち込むことはないのではと思います。つまり、貿易収支では影響が出てくるものの、資本収支では影響は軽微と予想します。
最初に載せたGDPのグラフを見ると、2008年、2009年当時のリーマンショックの影響から大きく落ち込み、2%前後の落ち込み(前期比ベース)が見られました。
そこまでの影響はないにしても、1%前後の落ち込みも予想されるのではと思います。しかし、リーマンショック後の経験からすると、その後急速な回復もあるのではと推測し、楽観できないでもないと言えます。

不透明な英経済ではあるものの、為替市場ではポンドが徐々に切り上げる展開となっています。
下記グラフはポンド/円の今年3月からのレートの推移を示しています。緑線でトレンドラインを示しています。
これを見る限り、8月以来ポンド高のトレンドが続いています。130円を下回る水準から140円を超える水準にまで切り上げています。
為替は投資家の投資心理や思惑を色濃く反映します。
これを見ると、今年前半のBrexitに対する英国経済の悲観論が覆っていましたが、年後半に関しては、Brexit慣れ、そして合意なきBrexitから合意ありのBrexitにコンセンサスが変化してきていることが大きく関連していると思います。
そして英経済のBrexitによる落ち込みも短期間で終了するのでは、との考えが投資家には浸透してきているのではないかと思います。

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まとめ

強気の英経済と弱気の英経済と両面が見え隠れしています。しかし、投資家の中では弱気の英経済と言う見方は徐々に薄れつつあるのではないかと思います。
Brexit当初は、英経済の落ち込みが見られるものの、その後の回復は意外と早いのではと、筆者は思い描いています。その期間が数ヶ月か、それとも数年なのかは論議となるのではと思います。
筆者は、恐らく1年以内に経済は持ち直すのではと思います。もしも悪い傾向が続くと、BOEは何らかの金融緩和政策を打ち出すはずです。
そのための保険政策を現在とっていると思います。
英株式投資、英債券投資には、まずは様子見、そして英経済の回復が早いと読めば、積極投資も良いのではと、現在は思い描いています。

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«記事作成ライター:水谷文雄»
国際金融市場に精通するInvestment Banker。
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替および金利・債券市場部門で活躍、
外銀を知り尽くす国際金融のプロフェショナル。新興の外国銀行(中国信託商業銀行 )の
東京支店開設準備に参画しディーリング・ルームの開設を手掛ける。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、
スペインと日本との文化・経済交流を夢見るロマンティスト。


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